一緒に行けばいい!
「ってことで。あの宝箱、売ってもろくな金にならない。そう思っていたところにだ。まさかの中身を開けられるご本人ときたものだ」
「そうきましたのね……」
シルヴァン殿、悪そうな笑顔ですわね。私を利用する気満々でしてよ。
「……ええ、かしこまりましたわ。ご持参くだされば」
「よっしゃ、ありがとうございます!」
シルヴァン殿、ここぞとばかりの笑顔ですわね。相当浮かれていましてよ。
「シルヴァン殿、あなたもダンジョンに通われるのですね」
「そういうこと。ガキの頃からな」
「まあ」
シルヴァン殿がお見せになったのは、黒く禍々しいライセンス。彼もそちらのルートで手にしてましたのね。
「あと、十六になってから取得した方」
「まあ!」
なんと輝かしいこと、正規の冒険者ライセンスではありませんの! ああー……吸い寄せられましてよ。ふらふらと……ふらふらと!
「いいだろー、いいだろー」
「ああー、羨ましいですわぁ……」
シルヴァン殿は冒険者ライセンスを右へ左へと振ります。つられるように動くのは私です。本当に羨ましくて……はっ!
「お戯れを……私は私で満足しておりましてよっ」
つられる私も私ですが、調子を乱されてはかまいません。シルヴァン殿はもっといじりたかったと……シルヴァン殿?
「――で、開けさせてもらうわ。お、すっげ。センスいいし、お貴族様受け良さそ」
シルヴァン殿は開封していきます。宝石付きのネクタイピンも。
「お、これこれ。有名な人が作ったってやつ! 貴婦人が意中の相手に贈りたいって、需要があんだよなぁ」
希少価値のある香水もですわね。以前に渡したものと被ってしまいましたが、あなた……そのようなことを考えていたとは。
「お喜びいただけて何よりですわ」
私は微妙な笑顔ながらも、そう割り切ることにしました。
「……でもさぁ、これで打ち止めなんだよなぁ?」
シルヴァン殿は渋い顔をしています。あなた、本当に取り繕わなくなりましたわね。
「ええ、ご了承くださいませ。そうですわね……来週も取りにいこうかしら。その時にご期待くださいまし」
もっと量が必要というのならば、行く必要がありそうですわね。イヴには休暇を与えようかしら……私も現地でパーティを組むのも良さそうですわね。今回は頑張ってみましょうか。
「……っと、失礼しましたわ」
つい計画を立ててしまっておりました。シルヴァン殿を放ってしまってましたわ。
「……」
「シルヴァン殿?」
ところが、私より思索にふけっていたのは彼の方でした。長考してましてよ。
「……ん、そうだな」
ようやく口を開いたのはシルヴァン殿。彼の顔は一気に華やぎました。
「一緒に行くか、ダンジョン!」
「え」
「その場で開封してもらうんだよ。俺達、そう簡単には会えないんだし」
彼は名案だと言わんばかり。私はというと……困惑しています。急な申し出でしたもの。ですが、ここは気を取り直しましょう。彼の仰る通り、機会は限られていますものね。
「……そうですわね。共に参りましょうか」
「そうこなくちゃ!」
シルヴァン殿は指を鳴らしました。あら、お上手ですこと。
「シルヴァン殿? イヴには休んでもらおうと考えてますの。現地でパーティを組もうかと」
「は? なんで?」
「毎回付き合わせているからでしてよ。イヴにも休んでもらいませんと」
ガラの悪い問いに、私もお答えしました。といっても、シルヴァン殿はまだご納得がいってないようです。彼は続けます。
「誘っとけって。あの従者、置いていこうものなら追いかけて来るぞ?どこまでも」
「いえ、イヴは忠実ではありますが……そんな、執念深いようなことは」
「いんや? 絶対執念深いって。――よし、わかった。こっちから一筆したためておくか」
「わかりましたわ。私の方で声を掛けておきますわ!」
私は食い気味に答えました。今ならわかりましてよ……どのような内容を書かれるものか! ああ、彼はニヤニヤしてますこと……!
本当になんて方……って、シルヴァン殿?
「……」
彼はまたしても考え込んでいますわ。彼の名は呼ばずとも、私は首を傾げました。




