プレゼントの出どころ。
この日は殿下との逢瀬でした。国立公演を巡りましたの。季節を感じられて、美しい花々にも魅入られて。湖ではボートにも乗りましたわね。殿下の漕ぎっぷりは見事なものでした。とても穏やかで有意義な時間でしたわ。
「そういえば」
すっかり殿下はコロシアムには誘わなくなりましたわね。それで良いのでしょう。殿下には記憶にはないでしょうが、私はしっかりと覚えておりますもの……。
王城で夕食にも招かれ、食後は応接間にて歓談していました。楽しかった一日も振り返っていますわ。笑いにも溢れていましたわね。
「……」
私はこっそりと見ました。扉の近くで控えているのはシルヴァン殿をです。優美な笑みをたえている彼は――あの『彼』と同一人物なのでしょうか。今でも信じ難い気持ちはあります。
「――そうか、それは大変だな。よし、俺の方で対処しておく。アリアンヌ、すまない」
またしてもでした。来室した配下の方に、火急の用件だと。それで部屋を立ち去るのは殿下。私とシルヴァン殿が二人きりになりました。
「シルヴァン殿。此度も持って参りましたわ」
前に孤児院に訪れた際、お渡ししなかった分でしてよ。私は立ち上がって彼の元へ。
「……ああ」
シルヴァン殿は私が手にしたものを見て、神妙な面持ちです。
「今回は二個ほどですが、ご了承くださいませ。また改めてお持ちしますわ」
前のダンジョンで手に入ったのは、茶色がそれくらいでした。レアもなく、通常のものとなります。シルヴァン殿、考え込んでいますわ。数が少ないのが気になるのかしら。
「……それさ」
二人きりというのもあり、シルヴァン殿は態度を崩されています。彼は物申したいのでしょうか、私は何を言われてるのかと構えます。
「――ダンジョンで手に入れてたんだろ」
「……」
あまりにも予想だにしておらず、私は口をあんぐりと開けてしまいました。
「……わっかりやす」
私のこの反応もあってか、シルヴァン殿は確信を得ているようです。いけませんわ……ダンジョン通いの令嬢と知られるわけには!
「いいえ? 公爵家の財力をもってして手にいれましてよ? ダンジョンには通っていなくてよ?」
「わかりやす過ぎ」
シラを切る私に対し、シルヴァンは同様の言葉を再び。ここはまだとぼけるべきでしょうか。
「下手な嘘もそのへんにしときな――調べがついてんだよ」
「調べ、ですって」
「そういうこと」
シルヴァン殿はかなり自信があるようです。ここは彼の出方をみてみましょう。
「別にダンジョンジャンキーだろうと、こっちはどうだっていい。重要なのは――宝箱だ。アリアンヌ様なら開けられるんじゃないかって、そう思ってる」
「……どうしてですの」
「まずは『画集』。あれはおいそれと手に入るものじゃない。あれは――発禁本だ。市場においそれと出回るものでもない」
「発禁本ですって……? あんなにも温かみがあるのに……?」
シルヴァン殿が確定するに至った経緯を話してくださってますが、私は私で驚きすぎてしまいました。
「……」
彼はそれ以上は口を噤みました。私の方もおいそれと追究は出来ません。そしてまずくもあります。
「……画集をお売りになったと。大丈夫でしたの?」
そのような代物を売ったとすると、立場が危うくなるのはシルヴァン殿であると。私は心配で仕方ありませんでしたが。
「……あー、そっか」
そういえば、といった感じでした。その、軽い反応ではありませんこと?
「一大事なのではなくて?」
「あー、問題ない。そこは、うん、うまくやってる」
「……そうですの?」
「そうそう」
ご本人が問題ないということでしたら……でしょうか。
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