イヴにも贈りたい。
「さて、本日はこれまで――」
続行は不可ですものね。帰ろう、そう思った時でした。また、ハンドベルの音がしたのです。確か――アミュレット売りでしたでしょうか。
「イヴ、お待ちになっててくださる?」
「アリアンヌ様っ!?」
帰りの準備をしているイヴに声をかけ、私は彼らの元に向かうことにしました。
「――ごきげんよう。おひとつ、くださるかしら」
近くでみるとますます愛らしいお二人ですこと。彼らは声を揃えて、金額を提示しました。け、結構しますのね。
「……種類たくさんありますのね。効能の違いとかありますの?」
プレイ時にはお見かけしませんでしたわ。私の問いに彼らは同時に首を振りました。シンクロ率がすごいですわ……!
「では、こちらで。お願いしますわね」
「まいどー」
「ありがとー」
買い物を終えた私を手を振って送りだしてくださいました。私も手を振り返します。白を基調としたアミュレットにしました。イヴらしいかと思いましたの。
「お買い物済んだの?」
っと、彼は結構近くまでやってきてました。
「ええ、お待たせしましたわ」
「ううん。良い買い物した方と思うよ。こういうの、いくらあってもいいだろうし」
いくらあっても? 私は疑問に思いつつあっても、イヴに渡すことにしました。彼も望ましいものと思っているのでしたら。
「そうですのね。こちら、あなたにです」
「え……」
イヴは思ってもみなかったと、そういった様子でした。ぽかんとしています。
「身を守ってくださるんですって。受け取ってもらえるかしら」
「……それは」
イヴは躊躇っているというか、葛藤しているというか。贈り物といった類いは遠慮しますものね。今回も遠慮されるのかしら。
「わかりましたわ。贈り物ですもの、あなたが喜ぶものが一番ですものね。今回は私の方でつけますから――」
「……しい、です」
「……イヴ?」
イヴの呟き。風の音でかき消されそうな程、小さなものでした。
「……本当は、欲しいです。でも、僕は充分過ぎるから――こうして一緒にいられるだけで」
「あなた……」
イヴは思い詰めていますのね。私は近寄って、彼の肩にそっと触れました。
「イヴ。あなたは欲張るくらいがちょうど良い。私はそう思っておりますの」
「欲張る……?」
イヴは大きな瞳で見つめてきます。私はそう、と頷きました。
「私がこれだけ振り回しているのに、あなたは尽くしてくれるではありませんか。あなたはよくやっているのです。あなたに何も見返りがないなんて……私の気が済まないのです」
「……」
イヴのことですから……見返りもいらない、と返されそうな気がして。そこまでの思いなら、私がとやかく言うことでもないと思っておりました。
「……やっぱり、いただいてもいい?」
「ええ、もちろん!」
「!」
私は喜びを前面に出してしまいました。イヴを驚かせてしまいましたわ。
「ありがとうございます……大切にします。ずっと」
両手で受け取ったイヴは、胸元で抱きしめるようにしていました。喜んでいただけたのなら良かったですわ。
「ふふ、この勢いでしてよ! イヴ、この後は食い倒れツアーに参りましてよ! 私のおごりでも、割り勘でもよろしくてよ!」
「わあ!」
イヴは無邪気な顔をしていますわ。ふふ、喜んでる、喜んでますこと!
「……ううん、そうじゃない。そうじゃないんだ、僕」
イヴは首をかぶり振っていました。あれぇ……あれだけ喜んでましたのに?
「う……僕だって本当は。でも、仕方ないんだ。アリアンヌ様!」
「はいっ!」
イヴは鬼気迫る表情でしたわ。私、つい勢い良く返事してしまいましたの。
「あなたの休養日もそうだし、今日がチャンスなんだ!」
「チャンス……?」
「そうだよ――シルヴァン様も定期的に休暇をとっていて、向かわれている場所がある。今日の昼頃だったら、うまく探れるんじゃないかなっと」
「……!」
殿下を交えてでなければ。もしくは学園が始まってからでなければ。シルヴァン殿とはそう交流は望めないと思っておりました。でも、今が好機だとしたら。
「食い倒れツアーはお祝いにとっておこう?」
「イヴ……ありがとうございます」
私の事情を優先してくれるのですね。私は感謝してもしきれませんわ……。




