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狙い過ぎなプレゼント。


 さて。手持ちはレアのものが二つ。


「……これは」


 包装紙で隠された中身。それでも何かを察したのでしょうか。シルヴァン殿は開封しようとした手を止めていました。


「今後改めてお渡ししますわね?」 


 好感度が足りてないのでしょうね。私は下げようとしました。


「……いや待って。いただきます、いただきますから!」 

「そ、そうですの……?」 


 食い気味にきましたわね……とにかく、シルヴァン殿がお嫌でないようでしたら。


「……これはまた」


 中身は色鉛筆セットでした。有名店で売られているような、上等のもの。こちらも高級品には違いないようですわね……ただ。


「……」


 シルヴァン殿、どうなさったのかしら。こちらも高いものに違いませんのに。彼はただ、色鉛筆セットを手にしたまま……。


「……失礼致しました。こちらも開けさせていただきますね」


 本日の分、最後の一個ですわ。そちらもレア宝箱になります。中身は――とある画家の画集でした。


「……」


 シルヴァン殿はついには何も言わなくなりました。その画集を強く掴んでいます。

 ああ……そうなのでしょうか。かつて私が食堂の一室で目にした絵画。そちらも掲載されていました。同じ画家の作品――きっと、シルヴァン殿のゆかりのある人物によるものだと。


「……シルヴァン殿?」 


 彼はずっと黙したままです。私はお声がけをしてみました。そうしたらいつもの笑顔が返ってくると思ったのですが――。


「――よく調べましたね」

「!」

 

 彼は笑顔ではありました……けれども、底知れないものが感じ取れて。


「興奮のあまり留意していませんでした。よほどでない限り、ここまで調べられないでしょう? なにか目的や企みでもおありでしょうか?」 


 決して強い言い方ではない。それでも私を責め立てているのは確か。もし、オスカー殿のようにトラウマを引き起こすようなものだとしたら……。


「いえ、目的も企みなどございません。ただ、あなたと関係を築けたらと思ってのことでした」

「……関係?」 


 ますます警戒を強めるのは、当然ともいえましょう。それでもお伝えしたかったのです。


「私たちは顔見知りに過ぎませんでしたから。あなたは殿下の腹心の部下だというのにです。あなたのことを知りたくもあり、交流も望んだのです」

「……」

「誓って不純な思いで調査したわけではありません。ですが、私の贈り物によって御不快になられたのなら……お詫び申し上げますわ」


 私はもっと彼のことを調べていれば良かったのです。そうしたら、何がよかったのかよくなかったのか――度を越していたのか。わかっていたでしょうに……。


「……」


 私のことを見ていた……観察していたようなシルヴァン殿。共に私たちは黙ったままでしたが。


「……不快とかじゃなくて」


 ぼそりと呟いたのはシルヴァン殿でした。すっかり笑顔が消え失せた彼ではありましたが。


「……こちらこそ、大変失礼致しました。企てなど縁遠そうな方であられますのに」


 シルヴァン殿は深々と頭を下げられました。


「いいえ、私の方こそですわ。無遠慮に渡し続けておりましたもの。控えますわね?」 

「……そ、それは!」

 

 シルヴァン殿は勢いよく顔を上げました。そこにあるのは困惑顔。


「……その、いただけるものは」


 と、続けられてます。あなたさえよいのでしたら……。


「かしこまりました。本日の手持ちはこれまでですが、また機会がありましたら」

「はい……ありがとうございます」


 私の一言に喜ぶかと思いきや、シルヴァン殿は複雑そうにしています。ひとまず、レアは控えめにいくことにしましょう。通常の方は普通に喜んでくださるようですし。


「――戻ったぞー!」 


 殿下が扉を御自分で開けられました。


「!」 

「!」 


 いささか不意打ち過ぎて、私たちはびくっとなってしまいました。


「……ん? なんだぁ?」 


 殿下は訝しんでおられます。妙な雰囲気の二人、そしてこの動揺っぷり。さらにはシルヴァン殿宛ての大量のプレゼント。


「ほほう? シルヴァンにもかー?」 


 殿下が顎に手をあてて、まじまじと見ています。


「……ええ、殿下。シルヴァン殿は将来的にあなた様を支える方ですし。これまで親交もほとんどありませんでしたから。お近づきの印にと……ただ、限度はありましたわね」


 私は必死に見えていたことでしょう。あなたの懐刀と怪しい関係と誤解されてはと。


「……そうかそうかぁ! 仲良くしてやってくれなぁ? シルヴァンはなぁ、一番信頼しているからなぁ!?」


 殿下はシルヴァン殿に寄りかかりました。頭もなでくり回しておられます。


「……光栄にございます、エミリアン様。生涯あなたに尽くして参ります」

「だろうだろう?」 


 恐縮するシルヴァン殿に、殿下は上機嫌になっていました。頭はずっと撫でまわしていましてよ。整えられた御髪も乱れてしまっています。


「……殿下。アリアンヌ様の前ですから」

「おお、すまんすまん」


 殿下から解放されたシルヴァン殿は、乱れた髪を整え直しています。


 その後は殿下を交えて……というよりは、殿下を中心に話も続けられました。


「……」


 一番信頼している。確かにそのようですわ。お二人は気安い関係ともみてとれます。殿下もそうですし、シルヴァン殿も殿下を敬愛している、心を開いているようにも見えますわ。

 そう、このように柔らかい笑顔。そうそう他の方には見せないものだと思えました――。




お読みいただきまして、ありがとうございました!

明日も続きを投稿予定です。

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