スライムの洗礼。
私たちは奥へと進んでいました。罠を回避しつつ、宝箱も回収しつつ。そうして進んでいたのですが――。
――突如鳴るのは、警鐘。けたたましく鳴り響いております。
『各所にて侵入警戒レベル最大。外部への流出に備え――』
「な、なんですの!?」
こんなこと、ゲームプレイ時にはありませんでしたわよ!? 危険を察知した私たちは、ダンジョンから脱出を試みようとします。イヴが帰還スキルを使えましたわ――。
『――全ての研究所を爆破します』
そのアナウンスを皮切りに――研究所は倒壊した。
「ん……」
私は意識を取り戻しました。私の頭には枕が、そして相変わらず暗い場所、目が慣れたのが幸いですわ。私は無事なようです……でも、皆様が!
「助けにいかなければ……!」
「あ、目覚めた?」
床に手をついて体を起こした私に、そう声をかけたのはオスカー殿でした。彼は私の隣に腰かけていました。あ……枕かと思ったら、こちらタオルでしたわ。
「こちら、ありがとうございます。お返ししますわ」
「ん」
私からのをオスカー殿は受け取りました。ひとまず彼は無事でしたわ。イヴもヒューゴ殿もご無事かしら……。
「……そうでしたわ」
ヒューゴ殿からの治療薬。オスカー殿にも渡しておきませんと。彼に手渡しを――。
「こちら、ヒューゴ殿からいただいたものです。あなたもお持ちになって」
私はそれはやめておき、瓦礫の上に置いておきました。あとはオスカー殿で取っていただきましょう。
「アリアンヌ様?」
不可解でしょうね。ですが、万が一ということもありますから。時は巻き戻ってしまった。あなたのトラウマが復活してしまっていると。その可能性の方が高そうです。
「あなた、頬に擦り傷もありましてよ。ご使用なさったら」
「まじか……まあ、ざっとで」
破傷風も怖いですからね、オスカー殿もそう思われたようです。彼は治療薬を患部に浸していました。液体タイプでしたのね。
「どうやら落下したみたい。でも大丈夫だって、あの二人も無事無事。目指しているって」
「ええ……」
オスカー殿は努めて明るく仰ってます。ええ、気落ちしている場合ではありませんわね。
「ええ、かしこまりました。私たちも合流するように努めましょう」
私は立ち眩みを起こさないように、ゆっくりと立ち上がりました。
こちら……より漂い瘴気が漂っているようですわね。地下であればあるほど、といったところでしょうか。といっても、こちらへの影響がそこまでなのは何故なのでしょうか?。
「ん? ああ、ある程度は防げるけどね。ほら」
オスカー殿自身から放出される白き光。さすがは王の盾と謳われた一族ですわね。
「助かりますわ……お待たせしました。参りましょう」
「……うん。安静にって言いたいんだけど。あの二人がね」
「……そうですわね」
こちらはオスカー殿の加護があるものの、あの二人はそうではない。本当に急ぎませんと。
私たちはある研究室に辿り着きました。この部屋を抜けない限り先には進めないようです。
「なんてこと……」
「えぐいな……」
この部屋にずらりと並んでいるのは人間のような存在――ホルマリン漬けの彼ら。プレートで表示されているのは生年と没年。そう、生きてないようですわね……。
「うがぁ……」
「!」
ゲル状の物体が這いよってきた。これはいわゆる――スライムなのでしょう。彼らは自発的に分裂していきます。数が、数が増えていってますわ……! 通り抜けようとしている私たちを妨害しようもしています。
「……仕留めるしかありませんわね」
私は短剣を取り出した。内部が見える液体状なので、コアは確認できる。私たちが通れる最低限を仕留めればいい……最低限で。
「そうだねっ!」
スライムたちが分裂し続ける中、オスカー殿が発現させたのは槍。彼はすぐさま数体分まとめてコアを貫いていきます。
「せいっ!」
私もスライムの攻撃を回避しながら、コアを狙っていく――突破できる道がみえてきましたわ!
「アリアンヌ様、こっち!」
「ええ!」
オスカー殿が差し出してくれた手を、私は取る。このまま私たちは駆け抜けていった――。




