魔力ぶっぱもお任せあれ※
木造の研究所、木の板の床が軋みますわ。幸いなのは、明るいとは決していえないものの照明があること。魔物が徘徊していないのもですわね。罠を回避もしないとなりませんから。
「――さて」
イヴが前方に手をかざしました。彼はスキルを発動したようです。煌々と光るのは宝箱たちでした。そして――危険を記すかのようにドクロマークが浮かび上がっているのは。
「宝箱の位置をわかりやすく。罠の方は可視化してみた。あのドクロマークに触れないようにしてね」
イヴの説明に私たちは頷きました。
「本当はもっとわかりやすく出来たら良かったけど、温存もしておきたくて――」
「十分十分! ありがとなー、イヴ君!」
オスカー殿がイヴの背中をバシバシ頼むと、彼は駆けだしていきました。
「っと、お先! ゆっくり来てなー?」
オスカー殿は見事な身のこなしで、罠を回避しつつも宝箱を回収していきました。
「あ、オスカー! ……まったく、せっかちですね」
ヒューゴ殿は何かを渡そうとしたようですが、彼、かなり先行していますものね。
「……まあ、仕方ありません。お二人には渡しておきます。治療薬です。万が一ということで」
「ありがとうございます。心強いですわ」
私とイヴはお礼を言って受け取りました。
「では、私も。採取に専念させていただきますね。お互い用心して参りましょう」
ヒューゴ殿は御自身のペースで進められるようです。
「僕がお守りしますから!」
「ええ、私もでしてよ」
私はイヴと共に踏み入れていくことにしました。
あらかた宝箱はオスカー殿の方で回収してくださっているようです。
「お。大丈夫そうー?」
「ええ、つつがなく」
気の向くまま先に行くと思われたオスカー殿でしたが、実際はそうではなく。時折立ち止まってくれていました。こちらの様子も気にしながら、距離を保たれていたようです。そうですわね、そういう御方でした……。
「ねえねえ、イヴ君? 宝箱にもドクロマークあったけど、これってヤバイやつ?」
オスカー殿はある宝箱を指さしています。彼は警戒して触らなかったようですわ。
「……そっか。ごめん、説明足らずだった。多分、偽者。空箱だったらまだいいけど、罠とか仕込まれてるかも」
「まじか、あっぶな! イヴ君サマサマじゃん!」
「そ、そう……?」
気にしているイヴも、オスカー殿の明るさで払拭されているようです。陽のオーラ、さすがですこと……!
「あら」
私は天井から吊るされている宝箱を発見しました。そちらは光り輝く茶色の宝箱。なんとしても手に入れたいところですが。その下にあるのは、ドクロマークが浮かびあがる隠された罠。
天井から落とさなくてはならない。でも下には罠が控えている。なんともまあ……なんともまあですこと!
「くっ……」
試しにナイフを投げつけても、はじき返されました。なんてこと!
「そういえば、アリアンヌ様?」
イヴが何かを思い当たったようです。しかも私に関することで。
「魔法使えるよね? って、書に書いてある」
「ぐっ」
なんでも共有をなさること……!
「ええ……私は魔法も使えていましてよ。ときに物理無効の敵もいますから。それに備えて習得しましたわ」
「わあ、戦闘狂」
「オスカー殿……オスカー殿?」
あなた、はっきりと言いまして? イヴも頷いていますわ……イヴ? ヒューゴ殿は……黙々と採取しておいででした。
惜しくはダンジョン内でしか使えないことでしょうか。いえ、使えなくはないのですが。色々とありまして……。
「……ですが、なんとしても手に入れたいものですわ。皆様、下がってくださるかしら」
私は詠唱をし、振りかざした。放たれたのは光の弾――つなぎ目を貫いた。
「はっ!」
私は落下していく宝箱目掛けて飛んでいく。宝箱を手にし、罠の上空を飛び越えていった。私が地面に着地すると同時に――ドゴォと光の弾は壁に激突していた。
「……」
「……」
イヴもオスカー殿も絶句していました。
「……ほほほ、わたくし加減を知りませんのよ」
私は誤魔化すかのように、高笑いをしました。いえ、そうではありませんわね。
「その……威力のコントロールが上手くいきませんのよ。魔力の消耗も激しいですし、普段は使わないようにしていますの」
私は自重しています、と微笑みました。イヴやオスカー殿は……まだ引いてますわね。
「……ふふ、続けて参りますわよ。まだまだ宝箱もありますわね!」
私は両手を叩きました。こちらで仕切り直させていただきましてよ。




