オスカー殿が仲間に加わりました! ――ダンジョン攻略開始。
では早速、ダンジョンに向かいましてよ! 伊織さんもアドバイスしてくださったもの! アイテムは裏切りませんことよ!
私は乗馬時の服装を応用した冒険者スタイル、イヴは外面上の執事服で冒険服に赴きましてよ! ダンジョンが私たちを待っていましてよ、おほほほほほほ!
私たちがやってきたのは、首都にある冒険者ギルドの前。今日も賑わってますわね。逞しい冒険者たちで溢れていてよ。それに……注目も浴びてますこと?
「お嬢様、そろそろ仮面をつけましょう」
「そうでしたわね」
イヴがこっそりと忠言してくれました。彼が言う仮面、それは着用すると他者に認識されにくくなるアイテムですの。それでも近しい関係ならばわかるという代物ですわ。チートでしてよ、チートアイテム!
さあ、着用しましょう。その直前でした、後ろから声をかけられたのは――。
「……アリアンヌ様、ですよね?」
「オスカー殿……!」
まさにオスカー殿でした。彼もダンジョンに赴くとは伺ってました。このタイミングで早速お会いできるとは……!
「えっと、お忍びかなにかでしょうか? 従者の方もご一緒みたいですけど。話しかけない方が良かったかもしれませんね」
ああ、かしこまった態度のオスカー殿ですわね。本当に……本当に巻き戻りましたのね。イヴも会釈をしました。そうですわね、この場から少し離れましょうか。
ギルドの裏手まで私たちはやってきました。困惑しているオスカー殿に説明しなくては。
「あなたを信頼してお話します。どうぞご内密に願いますわ。私、宝箱集めとダンジョン通いが趣味ですの。彼はイヴ、協力くれてますの」
「イヴ・ポルトと申します」
私が事情と紹介を済ますと、彼は深々と頭を下げました。
「いやいや、そんな畏まらなくても! あと、口外したりもしないんで! そこんとこ安心してください」
オスカー殿は手をぶんぶん振ってます。そして、力強く頷いてもくださいました。
「ひとまず理解しました。といっても、公爵家令嬢だしなぁ……そうだ!」
オスカー殿は、閃いたと顔を輝かせています。彼は私たちとの距離を詰めてきました。
「良かったらご一緒しませんか? 俺、ちゃんとお守りしますから!」
任せて、とオスカー殿は自信に満ち溢れています。なんと有難きご提案なのでしょう。
「まあ、よろしいのですの? でしたら、願ったり叶ったりですわ」
周回要素あってでしょうか。オスカー殿がすんなりと協力してくださるようです。やりましたわね!
「……うん。なんかさ、どうしてもそうしたくなったんだ。なんでかわからないけど」
「オスカー殿……」
オスカー殿は覚えてないのでしょう。ですが、心のどこかで感じ取ったのでしょうか。彼は慈しむような眼差しをしていました。
「……アリアンヌ様、そろそろ」
「……ええ、そうですわね」
イヴがそれとなく話しかけてきました。しんみりしてしまいましたわ。このまま浸りそうでした。
「そうそうオスカー殿にイヴ。堅苦しくすることはありませんわよ。私たちはいわば同士ですもの。くだけてくださいまし」
「え……いいんですか。そっか、うん、そうさせてもらおうかな」
私からの提案にイヴはもとよりオスカー殿も納得してくれました。良かったですわ。あとは……。
「オスカー殿、失礼しますわ」
「えっ」
私はにじりにじりと近づいていく。不穏を察して後ずさりをするのはオスカー殿。彼は壁際に追い詰められてしまいました。このくらいでよろしいでしょうか。
「ちょ、アリアンヌ様……な、なんで壁ドン!?」
私は両手を壁につきました。こちらからオスカー殿に触れるわけには、ですから。ええ、このくらいの距離で参りましょうか。
「さて、私はアリアンヌ・ボヌールです」
「うん、存じてるけど……アリアンヌ様?」
ええ、私はまだ――仮面を着用する前ですから。ヒューゴ殿は謎に大丈夫でしたが、オスカー殿はそうとは限りませんわ。認識されなくては今後に影響がありますもの。
「私はアリアンヌ・ボヌールですわ。私はアリアンヌ。私はアリアンヌ。私は――」
「わ、わかった、わかったから! ……近いしっ」
まあ、念押しが成功したのかしら。思ったよりもかかりませんでしたわ。あとはイヴですわね。
「僕もやるの!?」
察知したイヴが身構えています。そんなに嫌がらなくても。
「ええ、そうですわよ。なんでしたら、私も一緒にやりますから」
「……ううん、いい。よく考えたらさ、アリアンヌ様さえわからなければなんだし」
イヴは鞄から眼鏡を取り出し着用しました。変装効果が弱いけど、との説明を添えて。
さあ、オスカー殿も加わりましたわ!




