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前世の少女は語る――ダンジョン攻略にハマったのは⑤

 私は二人が帰ったあとも部屋でプレイを続けていた。


『ダンジョンも結構楽しいな』


 そう、慣れてきたら楽しいっていうのもそう。成長要素があるのも良かったのかも。私はアリアンヌ様を強くするのに夢中になりつつあった。


『もっとやりたいのに……』


 行動制限があるから、いくらアリアンヌ様が潜れても強制終了してしまう。ああ、もっと、もっと。渇望するかのようにダンジョンのアイコンを連打しまくっていると。


『あ、あれ……?』 


 本日の分、強制終了かと思ってたのに――なんか入れてしまった。普通に潜れてしまっている。


『これ、バグってやつ?』 


 バグがあったら報告してって、お願いされていたのに。グロエンディングなわけじゃない。普通に報告できるものだし、した方がいい。そうわかっているのに。


『ちょっとだけ、ちょっとだけだから』


 あ、本当にすごい。一日経過しないまま、無限に潜れている。試しにセーブとロードしてもそうだった。状態は継続されたままだった。日にち変われば、もしかして別のダンジョンもあったりして!? 


『もうちょっとだけ……』


 こうして私はダンジョン沼に引きずり込まれていったのだった。

 ああ、真麻さんも伊織さんもごめんなさい。私、楽しい、楽しんでいるから。このゲームを楽しんでいるの! ああー……楽しい楽しい。


 そういえば。伊織さんが質問に答えてくれるんだっけ。でも、大丈夫そう。伊織さん、私、ダンジョン攻略上手くなりましたよって。今度会った時にでも伝えておこうっと――。




『んー』


 深夜になったけど、ダンジョン攻略が楽し過ぎて眠れないっ。私は台所まで下りていって、水でも飲もうとしていた。


『ん……?』 


 居間に誰かいる。あの背の高さはユウ君だ。彼の手元で光っているのはスマホ? 


『……この男、目障りだな。なんのメッセージだっていうんだ』


 ユウ君は画面を睨みつけている。苛立たしげに炭酸ジュースを飲み干していた。


『……』


 久々の敬語じゃないユウ君っていうのもあるけど、なんだろう、遠い存在のように思えてならなかった。弟に向ける言葉じゃないけれど――怖いとも。


『……姉さん?』 

『!』 


 私が立ち去ろうとする前に、ユウ君の方が気づいていた。すぐ、だった。彼から手元の明かりは消えていた。画面を閉じてロック状態にしたのかな。


『気分転換に水飲みに来たんだ』

『そうなんですか……俺も水にしておこっかな』


 こんな時間にに炭酸ジュースもないかって、ユウ君は笑う。


『俺は勉強の合間にです。姉さんもゲームは程々にね?』 

『はーい……』


 ユウ君は偉いな。そうだね、私も程々にしないとね……。


『ふふ、おやすみなさい……姉さん』

『うん、おやすみ』


 私たちは何てこともない挨拶を交わし、それぞれの部屋へと戻っていった。私も少しは自重しよう。もう少しだけ――。




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