前世の少女は語る――ダンジョン攻略にハマったのは④
『でも、あれか。もう次の奴を……って』
『そう、シルヴァンさんなんですけど……伊織さん?』
『……まじか』
伊織さんはなんだろ、複雑そうにしていた。しいていうなら、気まずさとか、恥ずかしさとか……照れ?
『私、頑張りますね。ダンジョン攻略とかももっとやってみます。なんとかエンディングを! なんとか……!』
伊織さんのアドバイスももらったし……何より従姉の思いに応えたくて。私は手をぐっと握った。
『……で、シルヴァンか』
伊織さんは机に突っ伏してしまった。しばらくそのままだったけど、彼は体を起こした。
『結衣ちゃんさ、これ、ある?』
『はい。普段使いしてますよ』
伊織さんが提示してきたのは、トークアプリだった。
『ID教えてくれる? ……あ、違うから。俺から連絡はしないから安心して。攻略詰まった時とかに聞いてくれれば』
『いいんですか? 伊織さん、お忙しいでしょうし』
『ま、暇じゃないわな。だからすぐ返せるかもわからないけど』
『そうですか。じゃ、迷惑にならない範囲で』
伊織さんは悪い人じゃない。むしろいい人だと思う。それでもID交換はいいのかな……考え過ぎかな。伊織さんも親切心だろうし、うん。
私たちはID交換をすることにした。これで伊織さんからのアドバイスを受けられると、私は安心していた。もちろん多忙だろうから、程々にしておこう。本当に困った時にしようと、そう思っていた。
私は一旦パソコンを部屋に戻しに行った。それから伊織さんとゲームをして遊ぶことにした。どのゲームも私は初心者だったけど、伊織さんは丁寧に教えてくれた。ああ、この人本当にいい人なんだなぁ……。
夕方頃になってやっと真麻さんは会話を終えて。もう帰る時間になってしまったから、真麻さんとは遊べずだったな……。
『結衣ちゃんや……今度も休みの日に遊びに行くからねぇ? ちゃんと進めておくんだよ?』
『うん、真麻さん!』
私は笑顔全開で答えた。それはもちろんだった。本当はありがとうって抱きつきたいけど、今は我慢しておく。ああ、言いたいのに。うずうずする。
『わっかりやす……』
『伊織さん?』
私の耳には聞こえていた。伊織さんはとぼけているけど。
『名前呼び。いいゾー、コレ!』
真麻さんは真麻さんでなんか興奮している、なんで? ……いや、待って? 名前呼び?
『伊織さん!?』
私の顔は赤くなってしまった。伊織さんは噴き出していた。
『くくっ……白鳥伊織です。よ、よろしく……』
『なっ……』
素直に信じていた私が相当面白かったようで……伊織さん?
日常生活を送りながら、私はゲームを進めていた。シルヴァンさんはまだ序盤の方、結構シナリオ分量もあるからね。本当にすごいな……。
今週末、予告通りに真麻さんと伊織さんはやってきた。うん、もうね、伊織さん呼びでね。
私がシルヴァンさんルートを進めているって言ったら、真麻さんは嬉しそうにしていた。うん、そうだね。今度こそ上手くいって、真麻さんを喜ばせるんだ! 伊織さんのせっかくの助言も生かしたい。
といっても、私から連絡はとってない。中々ハードルが高いのもあったけど、そこまで困ってもいなかったのもあった。序盤も序盤というのもあるんだと思う。他ルート同様のシルヴァンさんとしか。




