表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/438

前世の少女は語る――ダンジョン攻略にハマったのは③



『じゃ、なんかして遊ぶか。ゲーム機もってきたんだ! レースゲームとか、パーティーゲームとかもあるけど……ここはほら、乙女ゲーとか!』 

『お、新作だ。買おうかどうか迷ってたんだよなぁ』


 真麻さんが出してきたゲームに、伊織さんが反応していた。二人はゲームの趣味が合うみたい。


『うん、楽しそう……』


 どれも明るく楽しそうなゲーム。せっかく来てくれた二人には悪いけど、私はこっちが良かった。全員やったらちゃんと話そう。だから、その時までは――。


『むむ!』 


 真麻さんのスマホが鳴った。電話がかかってきていた。ごめん、と彼女は着信をとった。


『――はあ!? なにそれ、緊急事態ぞ! ごめん結衣ちゃん、客室借りるわ!』 

『え、え?』 


 私の反応が追いつかないまま、何かの緊急事態だった真麻さんは風のように去っていった。


『……あっりえねぇ。手出さないって言ったけど、普通二人にするかよ』


 伊織さんは頭をガシガシしていた。うん、会ったばかりの二人を二人きりって。


『まあ、しゃーなし。で、結衣ちゃん? このままお茶でも飲む? 対戦でもする? それとも――』

『……』


 この人に見透かされているのかな。私は正直――手をこまねいていたから。乙女ゲームにも詳しい人っぽいし。


『ノートパソコン、持ってきます。アドバイスをお願いしたくて――』



 真麻さんはまだトーク中だった。私はテレビ前のローテーブルの上、そこにパソコンを置いた。座った私より若干離れた位置、ぎりぎり画面を覗ける位置に伊織さんはいた。


『……真麻さんには、いずれ話そうとは思ってるんです。私、どうあがいてもバッドエンディングしかいけなくて』

『あーなるほどねぇ……』


 伊織さんはセーブデータを見て推察したのだろう。ヒューゴさんとオスカー君のキャラアイコンつきの画面、でも攻略達成ならずと。伊織さんは手慣れた動作でゲームを確認していた。


『フラグとか、そこまで複雑じゃないんだけどな』

『で、ですよね……私、初心者なもので』

『なるほどなるほど。ま、単純に考えれば? これ、好感度不足じゃない?』 

『好感度、ですか』


 なるほど。私は画面を注視した。そう、ハートの器の液体は溜まっていても全然満タンじゃなかった。


『あー……プレゼントとかで上げられるから。店売りとか……ダンジョンとか』

『あー、ダンジョン。私、ちらっと行くくらいだったから。ちょっと宝箱持ち帰ってくらいで。中々不慣れですぐ倒れたりしちゃって』

『あー……慣れない内はね。最初は仕方ないっしょ。あとさ、宝箱もそれぞれに対応しているから。たとえば、この陽キャ君? 緑色の宝箱のやつだと喜ぶから』

『あー、オスカー君! それじゃ、たとえば――』


 私の素人過ぎる質問にも、伊織さんは嫌な顔をすることはなかった。

 不思議な感じ。大学生は私からすると十分に大人で、どう会話をしたらいいかもわからなかったのに。ゲームの共通の話題というのもあるけれど。伊織さん自体が気遣いの人で、話しやすいのもあるんだと思った。


『――伊織さん、ありがとうございました。攻略に励めそうです!』 

『そう。それなら良かった』


 結構喋ったかな。伊織さんもお疲れなのか、テンションも下がりめ。ありがとうございました、すみません! 


『……うん、良かったよ』


 伊織さんは片肘をついて、ゲーム画面を見つめていた。


『真麻は絶対に言わないだろうから。このゲームはさ――結衣ちゃんの為に作られたんだとさ』

『え……?』

 

 突然知らされたこと。私は驚きを隠せなかった。


『自分の出来る範囲で結衣ちゃんを元気にさせたいって。だから明るいゲームを作りたい、だとさ。主人公の子もさ、なんか結衣ちゃんぽくね?』 

『それはあまりにも恐れ多いだけど……なんだけど』


 共感できるところはあったから。それでもやっぱり身に余るけど。


『いや、やっぱ違うわ。ごめん結衣ちゃん。あんたをモデルってよりは、真麻の悪役令嬢好きが極まってだな』

『いや……伊織さーん?』 


 揶揄うような伊織さんに、私は突っ込みたくなった。つい、笑ってしまった。


『攻略対象はなんか……まあ、なんだろな。真麻の考えることだし』

『……?』 


 伊織さんはごにょごにょ言っていた。ちょっと聞き取れなかった。


『ま、ここだけの話な』

『はい』


 そうですね。私の為にって、それが嬉しくて。でも今は言えないから。




お読みいただきまして、ありがとうございました!

明日も続きを投稿予定です。

気に入っていただけましたら、高評価・ブックマークをしていただけますと

大変励みになります!よろしくお願い致します。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ