前世の少女は語る――ダンジョン攻略にハマったのは③
『じゃ、なんかして遊ぶか。ゲーム機もってきたんだ! レースゲームとか、パーティーゲームとかもあるけど……ここはほら、乙女ゲーとか!』
『お、新作だ。買おうかどうか迷ってたんだよなぁ』
真麻さんが出してきたゲームに、伊織さんが反応していた。二人はゲームの趣味が合うみたい。
『うん、楽しそう……』
どれも明るく楽しそうなゲーム。せっかく来てくれた二人には悪いけど、私はこっちが良かった。全員やったらちゃんと話そう。だから、その時までは――。
『むむ!』
真麻さんのスマホが鳴った。電話がかかってきていた。ごめん、と彼女は着信をとった。
『――はあ!? なにそれ、緊急事態ぞ! ごめん結衣ちゃん、客室借りるわ!』
『え、え?』
私の反応が追いつかないまま、何かの緊急事態だった真麻さんは風のように去っていった。
『……あっりえねぇ。手出さないって言ったけど、普通二人にするかよ』
伊織さんは頭をガシガシしていた。うん、会ったばかりの二人を二人きりって。
『まあ、しゃーなし。で、結衣ちゃん? このままお茶でも飲む? 対戦でもする? それとも――』
『……』
この人に見透かされているのかな。私は正直――手をこまねいていたから。乙女ゲームにも詳しい人っぽいし。
『ノートパソコン、持ってきます。アドバイスをお願いしたくて――』
真麻さんはまだトーク中だった。私はテレビ前のローテーブルの上、そこにパソコンを置いた。座った私より若干離れた位置、ぎりぎり画面を覗ける位置に伊織さんはいた。
『……真麻さんには、いずれ話そうとは思ってるんです。私、どうあがいてもバッドエンディングしかいけなくて』
『あーなるほどねぇ……』
伊織さんはセーブデータを見て推察したのだろう。ヒューゴさんとオスカー君のキャラアイコンつきの画面、でも攻略達成ならずと。伊織さんは手慣れた動作でゲームを確認していた。
『フラグとか、そこまで複雑じゃないんだけどな』
『で、ですよね……私、初心者なもので』
『なるほどなるほど。ま、単純に考えれば? これ、好感度不足じゃない?』
『好感度、ですか』
なるほど。私は画面を注視した。そう、ハートの器の液体は溜まっていても全然満タンじゃなかった。
『あー……プレゼントとかで上げられるから。店売りとか……ダンジョンとか』
『あー、ダンジョン。私、ちらっと行くくらいだったから。ちょっと宝箱持ち帰ってくらいで。中々不慣れですぐ倒れたりしちゃって』
『あー……慣れない内はね。最初は仕方ないっしょ。あとさ、宝箱もそれぞれに対応しているから。たとえば、この陽キャ君? 緑色の宝箱のやつだと喜ぶから』
『あー、オスカー君! それじゃ、たとえば――』
私の素人過ぎる質問にも、伊織さんは嫌な顔をすることはなかった。
不思議な感じ。大学生は私からすると十分に大人で、どう会話をしたらいいかもわからなかったのに。ゲームの共通の話題というのもあるけれど。伊織さん自体が気遣いの人で、話しやすいのもあるんだと思った。
『――伊織さん、ありがとうございました。攻略に励めそうです!』
『そう。それなら良かった』
結構喋ったかな。伊織さんもお疲れなのか、テンションも下がりめ。ありがとうございました、すみません!
『……うん、良かったよ』
伊織さんは片肘をついて、ゲーム画面を見つめていた。
『真麻は絶対に言わないだろうから。このゲームはさ――結衣ちゃんの為に作られたんだとさ』
『え……?』
突然知らされたこと。私は驚きを隠せなかった。
『自分の出来る範囲で結衣ちゃんを元気にさせたいって。だから明るいゲームを作りたい、だとさ。主人公の子もさ、なんか結衣ちゃんぽくね?』
『それはあまりにも恐れ多いだけど……なんだけど』
共感できるところはあったから。それでもやっぱり身に余るけど。
『いや、やっぱ違うわ。ごめん結衣ちゃん。あんたをモデルってよりは、真麻の悪役令嬢好きが極まってだな』
『いや……伊織さーん?』
揶揄うような伊織さんに、私は突っ込みたくなった。つい、笑ってしまった。
『攻略対象はなんか……まあ、なんだろな。真麻の考えることだし』
『……?』
伊織さんはごにょごにょ言っていた。ちょっと聞き取れなかった。
『ま、ここだけの話な』
『はい』
そうですね。私の為にって、それが嬉しくて。でも今は言えないから。
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