昼下がりの労い会②
私達は持ち寄ってきた料理を楽しんでいました。会話にも花を咲かせています。
「あ、これも美味しいよ。うちで獲れたやつ、使ってくれた?」
「ええ、たくさん送っていただいたものですわ。かえって気を遣わせてしまったようで」
オスカー殿は積極的に私の料理を食べてくれています。こちらの果物もそうですわね。返礼にと男爵領から頂いたものですの。
「全然! みんなも公爵家のみなさまに是非って。うっま、まじうっま」
ええ、オスカー殿は私の料理ばかり――。
「……オスカー様さぁ、アリアンヌ様の料理ばっかじゃないか! こっちのも食べてよ!」
ですわね。イヴの指摘はもっともでした。
「あー、うん。イヴ君のもいただきます。うん、おいしい!」
「そうでしょう? イヴはプロ級の腕前でしてよ!」
あなたが口にしたテリーヌ、絶品でしょう? ふふ、あなたの表情でわかりましてよ。イヴも照れていますわね。立派に誇れる腕前でしてよ、イヴ!
「イヴ君! 今度料理教えてください!」
「……突然だね。時間ある時でよければ、だけど」
オスカー殿は急にイヴに頼み込んでいました。当のイヴも困惑しつつも、承諾しようとしていますわ。ふふ、微笑ましいこと。私の方でも時間の協力をしましょうか。
「わあ、ありがとう! アリアンヌ様の胃袋から掴みたいんだ」
「……。やっぱ無理かも。ごめんね、僕の時間は有限なんだ」
オスカー殿の発言を受けて、狼狽える私。イヴは急変していました。
「えー、引き受けておいてそれ? 協力してよー、イヴくーん?」
「僕忙しいから、本当に。それにもう義理立てする必要もないし」
「義理立てって……そっか、やっぱ協力してくれてたじゃん! ありがと、イヴ君! これからもお願いしますっ!」
「だから、もうする必要がないって――」
オスカー殿もイヴ殿もやいのやいの言い合っています。
「はあ……。アリアンヌ様、よろしいでしょうか」
賑やかな二人をよそに、真向いのヒューゴ殿がこっそりと話しかけてきました。
「もうですね、あなたにしっかりしていただかないと」
「まあ、手厳しいこと。仰る通りではありますわね」
前にも言われたことがありましたわね。まだまだ精進が足りないということでしょう。
「……はっきりと伝えておきましょう。オスカーは全力であなたを落としにかかってますから。もしあなたにその気がないのでしたら、態度で示していただきませんと」
「……全力、でございますか」
端的に言われてしまいました。私ももう、認めるしかないのでしょうか。
ああ、眩暈がしてまいりました。幻覚でしょうか、緑の蝶が二匹飛んでいるような。いえ……幻覚ですわね。
「教えてくれないならさ、舌で盗んでやるんだ」
「はあ……いいよ、教えるのはいいからさ。でも僕、アリアンヌ様最優先だから。空いてる時だけね」
「やった! ありがとイヴ君!」
あの二人も決着が着いたようです。イヴが根負けしたようですわね。さあ、食事を再開しましょう。マイペースなヒューゴ殿くらいでしてよ、食べていたのは。私もいただきましょう。
「アリアンヌ様、もぐもぐしてる……可愛いなぁ」
横から感じる視線。私を見つめるそれからは、愛しさが込められていると。
「ずっと見ていたいな」
気のせいとも、勘違いとも思わせてくれない。どうしても彼からの気持ちが伝わってきてしまうのです。
「はは……ヒューゴも面白いこというよね」
彼は私に顔を近づけて、こう囁いているのです。
「全力で落としにかかっているって。その通りだけど」
「……!」
オスカー殿は私から離れていきました。そして何事もなかったかのように、オスカー殿は振る舞われています。それでもたまに視線が合ってしまって。
ああ、攻略されるというのはこのような感覚なのでしょうか。緑の蝶もそう、まだ飛び回っているではありませんか。友愛エンディングを迎えたはずでしょうに。
『もうですね、あなたにしっかりしていただかないと』
ヒューゴ殿のお言葉がリフレインされるようにです。そうですわ、しっかりしませんと。
オスカー殿に振り回されないようにいたしませんと!
ええ、いつ終わりが来て。また新しい日々が始まるのかはわかりません。
せめてその時まで。束の間の休息ともいえるこの日々を過ごせますように――。
私は歪みを正す為に、攻略対象相手に日々を繰り返すことになる。
限られた日々だからこそ、精一杯生きましょう――。
お読みいただきまして、ありがとうございました!
気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等をしていただけますと
大変励みになります!
今回の話で一区切りとなります。新展開となる続きも投稿しています。よろしくお願い致します!




