昼下がりの労い会①
雨季の中でも曇りの日でした。今日この日、私達は昼食会を開くことになりました。場所はいつものサロンの場所、温室近くですわ。
集まりの目的は労い会といったところでしょうか。気分転換も兼ねてお疲れ様といった感じです。私たちは適当に席に着いていました。隣に座られたのはオスカー殿でした。
「はい、たくさん作っておいたから。召し上がってね?」
イヴはバスケットにたくさんの料理を詰めてきました。ああー、香りからして美味しさ確定ですわー。イヴのため口を知らないのはオスカー殿くらいでしょうが、触れないでいてくださるのかしら。
「って、イヴ君さー。主相手に大丈夫?」
いえ、ばっちり触れていました。心配してくださるといったところですか。心配、ですわよね? そのように不満そうな顔をしておいでですが。
「オスカー。当人同士は納得の上です。それを言うならイヴ殿は先輩にあたりますよ? 貴方こそ」
「うあー、やぶへび。すみませーん」
「なんです、全く。私は家の者に作らせました。味の保証はできるかと」
ヒューゴ殿がご持参されたのは、主に香草を用いた料理。作ったのは家の方でも、草はあなたが摘んでものなのでしょう? 体に優しそうでいて、食欲もそそりますわー。
「なんかみんなレベル高いなー。俺、こんなんだけどいい?」
オスカー殿は風呂敷を広げていました。いいですわね、風呂敷! あなたご存知でしたのね! 中から出てきたのは、香ばしそうなパンたち。いずれも美味しそうです……ええ、クオリティの高いこと。
「俺、パン作りだけは上手いからさ。つか、まともに作れるのはそれくらいっていうか。とにかくさ、焼いてみたんだ。あとこれ」
「!」
「!」
「!」
私もヒューゴ殿もイヴだって、食いつかずにはいられませんでした。
オスカー殿の手の中にあるパン、ああ、光輝いているようですわぁ! それもそのはず、激レアパンですもの。僅かしか作られない、購買の至高の総菜パン!
「購買のお姉さんがさ、売ってくれたんだ。ラッキー」
いえ、幸運もおありでしょうが、それはあなただからこそでは。
「四つ持ってく? っていってくれたけど、ほら、他の人らも食べたいだろうし。四等分しようよ」
ああ、パンも含めてオスカー殿も眩いですわ! 彼はナイフで切り分けていき、ヒューゴ殿とイヴに渡していきます。ああ、私の分も……私の分は?
「きょとんとしてる……可愛いんだから」
「オスカー殿? 私、期待しておりましてよ?」
オスカー殿は笑いをこらえられないようです。こちらはたまったものではありませんわ。
「ごめんごめん、はい」
「ありがとうございます、オスカー殿……オスカー殿?」
私は手渡ししてもらうつもりで、両手を揃えておりました。ですが、一向に渡されません。
「……どうしよっかな。あーん、とか?」
「!?」
私の口に差し出されようとしているパン。私は、私は! オスカー殿に食べさせられようとしているのでしょうか……!?
「……こっちが恥ずかしくなってきた。はい、こっち」
「……もう。いただきますわね」
オスカー殿は赤面しながら、私の両手の上にパンを置いてきました。私はいただこうとしました。
「あら? お二人とも食べてませんの?」
ヒューゴ殿もイヴもパンに手はつけてないようでした。彼らは私たちの方を見ていたような。
「……オスカー。我々もおります。お忘れなく」
「え、忘れてないよ? パンだって分けたじゃん」
苦い顔をしているヒューゴ殿に対し、オスカー殿はさらっと返していました。
「うわぁ……天然なのか、計算なのか」
「えー? イヴ君までどうしたのー?」
イヴはイヴで引いています。オスカー殿は何のことやらといった様子でした。
「おかしな二人。でさ、アリアンヌ様も用意してくれたんでしょ? 早く早く」
「ええ、私ですわね」
私もバスケットに入れて参りました。隣のオスカー殿が覗き込んできます。
「パウンドケーキに、フィナンシェ! わあ、美味しそう!」
ええ、オスカー殿の仰る通り。私は焼き菓子を中心にデザートを持って参りました。わりとオスカー殿と内容が被ってしまいましたわね。
「わあ、お揃いだ。気が合うね?」
「ええ、お揃いですわね? 気も合う……」
お揃いと言ってくださいますのね。気が合うと、そこまで口にするのは恥ずかしくも。
「気も合うよね?」
「合いますわね?」
オスカー殿の期待の満ちた目、私はそう答えました。やった、とオスカー殿が喜んでましたので良いのでしょう。ええ、きっと。




