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残るは二名。

 六月も中旬になった頃。私はイヴを自室に招いて話をしていました。経過の確認も兼ねてです。


 窓の外では夕立が降ってました。もう夕方ですのね。

 私とイヴは窓辺の席に座っており、机の上には攻略情報の本があります。好感度のページが開かれていますわ。


「……」


 イラストのオスカー殿は緑の薔薇をお持ちです。全開の笑顔も可愛らしいこと、ただ。

 器は倒れたままで、液体も流れたままです。ええと、そろそろ底をつきると思っておりましたが。いつ空になってもおかしくもないと。


『思いが重くなりすぎて、それで倒れたんじゃないの? で、尽きることもないから、流れっぱなしとか? ああ……やだやだ』


 イヴが嫌々言っていたのが印象に残っています。彼には悪いですけれども、仮説ですわね。そんな、思いが重くなりすぎて、とか。そんな、ねえ? 


「あとはお二人、ですのね……」


 そう、残り二名となりましたわ。このままの流れでいけば、きっと。お二人ともエンディングを迎えたら。私は……私はもう。


「……」


 と、私が思いに浸っている間も、イヴは無言のままでした。


「イヴ……?」

「……え、あ、お嬢様? どうかなさいましたか?」


 私が呼ぶと、イヴは気づいてはくれます。ですが、気はそぞろでした。二人きりなのに敬語にもなってましてよ。

 コロシアムの一件があってからか、イヴはずっとこの調子です。普段通りと思いきや、ふとした時に暗い表情になる。


 ……そうですわね。イヴもそうなるのも理由があります。ブリジット嬢への嫌がらせの事件、黒幕はライバル商会のお嬢様。ですが実行していたのは――イヴの父君たちだったのですから。大金を積まれたからだと。


 イヴは私の父たちにも頭を、いえ土下座もしていたそうです。今は別々に暮らしていても、実の父のやらかしですものね。もちろん、お父様はイヴを責めることはありませんでしたわ。


 そういえば。イヴは休みを頼み込んで外出してましたわね。ブリジット嬢への謝罪というお話だったような。


「ええ、そうですわね。あなたをお呼びしましたものね。ねえ、イヴ? 私に話せることでしたら、話してくださるかしら。あなたの心の重荷が少しでも軽くなればと、そう思っておりますの」


 イヴはずっと思い詰めていますから。私でよければと微笑みました。


「アリアンヌ様、僕は……」


 イヴは大変言いづらそうにしています。ええ、無理はさせませんわ。


「気の向いた時で構いませんわ。ほら、今はこうしてゆっくりしていましょうか」


 中々激しい音ではありますが、雨の音を聞くのも良いですわね。私は紅茶を口にしました。


「ああ、美味しいですこと。イヴの腕前は留まることを知りませんわね」


 美味しいものを口にすれば、気分も上がりますかしら。


「そうですわ、お茶菓子も出しましょうか」

「……アリアンヌ様」


 私が棚からとっておきの菓子を出そうとしたところでした。



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