両親は推したい。
「本当にありがとうございます。遠慮するべきなんでしょうけど、いただけるものなら、いただきたいのが現状でして」
オスカー殿は照れ笑いをしています。ますます感激しているのはお父様。
「オスカー殿……オスカー殿! うう、民の為ならか……なんという青年よ。私は君のような青年に娘と添い遂げてほしかった……!」
「いいんですか!」
私が仰天するよりも先に――オスカー殿は食いついてました。お父様も面食らってましてよ。
「……すみません。俺もそうなったらって思ってます。俺はアリアンヌ様のことが好きです」
オスカー殿ははにかんでいました。素の顔になっているのですが……というか、両親の前でしてよ!? 私は慌てふためいていると、オスカー殿は可笑しそうに笑っていました。オスカー殿?
「っと、俺じゃなくて私だ。失礼しました、私はそう願っています」
「なんと! 私にとってもそうだ、望ましいことよ!」
「ええ、喜ばしいわぁ」
父も母も乗り気でした。このまま話を進めていこうとしています。
「アリアンヌ様が大好きです、ですが」
あの時途切れた言葉の続きのようです。
「……私はまだまだですので。もっと相応しい男になれたらと考えています」
何より、と私の方を見ます。
「アリアンヌ様のお気持ちもまだ、私に向いてませんから。長期戦になるなって。生意気言ってすみません」
「……」
私の気持ちまで考えてくれるのですね、あなたは……。
「あいわかった! アリアンヌ次第ということだな!」
「お父様……?」
父は晴れた顔をしています。
「そうですね!」
「オスカー殿!?」
オスカー殿も晴れ晴れとしていました。いえ、私次第ということは……!
「――ほら、あなた? お話は一旦、ここまでにしましょう? お腹も空いているではありませんか、朝食にしましょうね。今から作りますから、お待ちになってくださいね?」
母は父と、それからオスカー殿にも話しかけていました。
「いいんですか! では、ごちそうになります!」
「ええ、たくさん召し上がってね? それと、アリアンヌ?」
オスカー殿に笑いかけたあと、母はこちらまでやってきました。私の近くでささやきます。
「身支度してらっしゃい? いつでも入れるようにしてますからね?」
「……は、はい。かしこまりました」
母はにこりと笑い、私の背を軽く叩きました。私は挨拶をして、退室させていただきました。
ああ、お母様のお気遣いに感謝です……! 今になって気づきましたわ。私、拘束された間お風呂にも入っておらず……水で洗うぐらいでしたもの。それからも大暴れでしたものね。ああ、オスカー殿とも密着していたではありませんか……ああ!
廊下に出るとメイド達が待機していました。
「奥様より徹底的に磨き上げてほしいと。そう承っております」
「ええ、お願いしますわね……?」
既に話が進んでいたのでしょうか。私はあれよこれよと浴場まで連れていかれて、彼女達にそれこそ徹底的に洗われました。
それだけではありません。次は衣装部屋へ。
「こちら、奥様が愛用されていたワンピースです。勝負服とも仰っていました」
「勝負服ですって……?」
メイドが持っているのはクラシカルなデザインのワンピース。ええ、昔の写真で拝見したことありますわ。若かりし頃の両親が仲睦まじく写っていて、母も確かに着ていたような。勝負服……?
それからの私は化粧も施され、髪も編んでもらいました。私は鏡台を見て驚きます。彼女たちは本気を出したと言っていました。なるほど、ここまでの仕上がりですものね……!
「お待たせいたしました。アリアンヌが戻りました」
応接間では父母とオスカー殿が談笑していました。あら、オスカー殿? 彼もお風呂を借りたのでしょうか。さっぱりしてらっしゃること。服装もシンプルなものを着こなしておられますわ。何でも似合いますのね。
「おかえりなさい……って、うわぁ……」
振り向かれたオスカー殿から視線が感じます。なんでしょう、かなり見られているようですわ。
「ふふ、オスカーちゃんったら。どう? すごく可愛いでしょう?」
「はい、すごく可愛いです!」
母の言葉にオスカー殿は即答していますわ……父も何度も頷いています。
「では、オスカー君。お待ちかねの朝食だ。遠慮なく食べてくれ」
「はい、いただきます!」
私達は朝食をとることにしました。ええと……オスカーちゃんにオスカー君? 私が不在の間にさらに打ち解けているようですわね。喜ばしいことではありますわ。
「……」
私は彼らの次に、漂っている二匹の蝶を見ました。ずっと飛んだままでしてよ。




