表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/438

大衆の目の前で露見したこと。

 私達を奮い立たせる歓声。何より共にオスカー殿もいるのですから。

 私達は戦い、戦い続けて――鐘が鳴った。


「ああ……」


 一日の終わりを告げる鐘の音。


「……えっと? よくわかんないけど、これでいいの? そういうこと?」


 オスカー殿は事情を把握されないまま、こちらに来たのでしょう。


「ええ、そうですわ……生き延びたのです」


 いまだに実感はわきませんが、私たちは乗り切った――解放されるのですね。


「そっかぁ、やった!」

「ええ、本当に……ですが」



 まだ喜ぶには早いようです。私達の目線の先には、そう殿下です。


「……約束はしたけどなぁ。うーん、罪人を野放しにってのはな」


 殿下はこの期に及んででした。まだ何かを企んでいようというのです。


「うーん、そうだなぁ……そうだ!」


 殿下は腕を組んで思案していましたが、何かを思いついたようです。


「逃がさなければいいんだ! 『あの塔』での暮らしは気に入ったかぁ? ――ずっとあそこにいていいんだぞ?」

「なっ、話が違うではありませんか! あなたは解放すると」

「言ったかな? 言ったかもな? ……でもな、わかってくれないか。大罪人相手にあまりある恩情だと。なあ――すぐに処刑してもよかったのだぞ?」

「それはあまりにも……」


 民の前で誓ったことを、覆そうというのですの。それはあんまりではなくて。


「――そのへんにしていただけませんか。潔くありませんよ」


 ガガッと音が鳴った。それから聞こえる声は、ヒューゴ殿によるものでした。迎賓席の真向いの客席の方から、彼は拡声器を使って語りかけていました。

 後ろにいるのはイヴ。彼もどうにかして脱出してくれたのでしょうか。


「発言をお許しください。アリアンヌ様による犯行と思われていますが、彼女は本当に無実でした。あらゆる証言と証拠も揃えています。加えて――指示した者、黒幕の名についても」


 ヒューゴ殿、イヴも……私の潔白を信じて調べてくれていたのでしょうか。あなた方もまた、戦ってくださったのですね。私はどれほど感謝したらいいのか。


「……黒幕?」


 殿下の射抜くのような瞳。


「はい、黒幕です」


 ヒューゴ殿は慄くことはなかったようで、続けています。


「黒幕は――バリエ商会の競合店によるものでした。そちらの……ご息女によるもの。ブリジット嬢のことが気に入らなかったからだそうです。実行犯、及び手口につきましても、然るべき機関に提出済みです」


 ヒューゴ殿は言い切った。ここまでされて、殿下はどう動くのか。


「……おいおい、ヒューゴ殿? 俺が言ったこと忘れたのかぁ? いいのか――伯爵家のことは」


 殿下は家のことを盾に、ヒューゴ殿を屈服させようとしていますわ。なんてことを……。


「……はあ」


 ヒューゴ殿……溜息つかれました? 拡声器に入ってましてよ? 


「私がここまでやったのも、あなたの発言も原因ですが? 家のことなど、どうでもよくなる程に」

「は、俺の……?」

「殿下が信じるくらいなら口だけでも、と。元々彼女を助けるつもりではありましたが、私を相当苛立たせましたからね。もう徹底的に洗ってやろうと」


 後方のイヴも頷いていますわ。彼らに渦巻くのは怒りでした。相当苛立つ発言だったのでしょう。


「よって殿下。今回はこのくらいにしますが、もっと調べてやろうかと。たとえば、被害者であるブリジット嬢に関することでしょうか。多くの貢ぎ物をされていると――」

「わわっ、ヒューゴ殿!? 待て、待つんだ!」


 これは時間の問題ですわね。彼らの手によって、殿下のことは暴かれていくことでしょう。

 今気づいたのですが、記者の方も数名いらっしゃいます。王族のスキャンダルを押さえる気のようです。今回のことは格好のネタでありますでしょう。


「ふざけんじゃねえぞ、アホ王子ー! 約束は守れや―!」

「俺らの血税使ってねえだろうな!?」 


 記者だけではありません。一番の目撃者はこちらの多くの民。これだけの声、あなたは無視出来ますの? 


「――殿下。民の声は届きまして?私はもうあなたのお傍にいることは叶いませんから。最後に鬼からのお小言でも――どうか、民の声に寄り添われますことを」


 私は深々と頭を下げました。この罵声の中、私の声は届いたのかしら。


「……かっこいいわ、アリアンヌ様は」


 そう呟くオスカー殿と、そして。


「……はは、ははははは!」


 笑い声を上げていた殿下。彼は笑いながらも軍人たちに連れていかれる。彼らの判断なのでしょう、今、殿下がこの場に留まる理由も利もないのだと。


「――これで良かったんだ」

「……殿下?」


 どうしてなのでしょう。これだけ声が飛び交う中、私にはその声が届いていました。何が良かったのか――私はもう知ることは出来ないのでしょうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ