運命の日、幽閉塔にて。
私は幽閉塔に囚われていました。もう三日ほど経ったのでしょうか。窓越しの景色での判断となります。外は明るい空、どこまでも晴れ渡っています。
運命の日、五月末日――本日となりました。
「……」
与えられる最低限の食事。私の衣服も制服のままです。あとは洗面台と鉄格子の窓、一面の石壁。それくらいでしょうか。ここは――大罪人が死を待つ場所なのだから。
未だに刑を執行しないのが不思議なくらい。私は膝を抱え込んだ。
「お父様、お母様、イヴ――」
私は彼らの名を一人ひとり、呼び続けてました。こうして正気を保ってもいたのです。
「……オスカー殿」
彼の名を呼んだ。オスカー殿、彼は。
「……巻き込んでしまいましたわ」
私のあらぬ罪であれど、彼は男爵家に閉じ込められることになった。執拗に家族も責めてくることでしょう。彼に逢いたい。再会して謝りたい……願わくば。
「……」
私は首を振った。そのような機会は訪れないでしょう。さあ、落ち込むのもここまで。今の私に出来ることは――。
「……いつ来てもいいように、ですわ」
ええ、挫けてなどいられません。この牢は特殊な術が施されており、私の攻撃をもってしても破壊はできませんでした。ならば、ここから連れ出される時こそが好機であると。私は体力を温存しているのです。
「家に迷惑をかけるとしても――」
私が逃走したとしても、疑惑はそのままだから。逃走したことで迷惑をかけることになってしまっても。
ごめんなさい、皆様。それでも私は――。
「……死にたくない。死ぬわけにはいかないから」
もしまたバッドエンディングを迎えたとしても。またやり直しは出来るのかもしれない。でもそれは確実でもないし――何よりもう、殺されたくなんてないから。好き勝手にされたくないから。
私は今か今かと待機していました。いましたのに――。
「ひ、卑怯なっ……」
牢に充満するのは催眠ガスのようなもの。まともにくらった私は意識を手放してしまいました。




