このお迎えからは逃れられない。
本当はもっと早く動いた方がいいのではないか。それこそこの場から離れた方がいいのではないか。そう考えている内に、朝の支度を終えてしまいました。
「ふう……」
学園へ向かうにはまだ早い時間です。私は呼吸を整え、部屋のソファに腰掛けました。今からでも対策を講じようとした時。
ノックされました。私の部屋にやってきたのはイヴ。
「失礼します。アリアンヌ様、お迎えが……」
「……!」
オスカー殿でしょうか。朝に訪れると仰ってましたものね。堂々とした訪問ではありますが、私も向かわないわけにもいきませんから。扉を開けて部屋を出ることにしました。
「ええ、参りますわ……イヴ?」
イヴの顔色が悪いです。イヴ? オスカー殿相手にここまでなること、ありまして?
「……すみません、言ってなかった。やって来られたのは――シルヴァン様です」
「……シルヴァン殿?」
シルヴァン殿、殿下の側近の方? 相手がオスカー殿でなかったのもですが、予想外過ぎる方でした。殿下とご一緒ではないの? それでしたらまず、殿下が来訪したとイヴも言いますものね。
いずれにせよ、失礼があってはいけません。私達は玄関に向かうことにしました。
一度応接間に通そうとしたものの、断られたのでしょうか。シルヴァン殿は玄関を開けた先で待っていらっしゃいました。
「アリアンヌ様、おはようございます。突然の訪問、お許しくださいませ」
朝から優雅な笑顔に所作。彼は恭しく頭を下げてきました。
「殿下の命により、お迎えに上がりました」
「……!」
本当に綺麗に笑む方。でも今は、それが底知れないものと思えてなりませんでした。
殿下ではなくシルヴァン殿単体。彼の得体の知れなさ。不吉な前兆。
「……」
私は今になって実感したのです。これは尋常ではないことだと。このまま連れていかたらと。
「――念の為、失礼させていただきます」
「!」
一瞬だった。私は彼に背後をとられ、拘束されていた。警戒していたというのに。
「アリアンヌ様!」
イヴを始め、いきり立つ従者たち。後からやってきた父もそう。臨戦態勢だった。
「……っ」
笑顔を絶やさず、彼は容易に私を拘束している。くっ……どうなってますの? 力負けというよりはなんらかの手を使われているといったような。
「手荒な真似をして申し訳ございません。我が主より皆様方へ賜っております――ボヌール家の皆様におかれまして待機せよ、と」
抵抗する私を顔色一つ変えずに捕らえつつ。従者殿は言いのたまった。きっと――きっと、ボヌール邸は軍人たちによって包囲されている。我が家は下手には動けない。
「アリアンヌ様もご理解いただけたらと」
「……かしこまりました」
私は力を抜いた。私が動くことによって、危害も及びかねない。私が大人しくしている間は何もされないのだと。
私は馬車に乗せられました。目の前に座っておられる従者殿は、笑みを絶やすことはない。
「どういったお話なのかしら……」
私は一人ごちる。従者殿は笑顔のまま。そうですわね、お答えすることもないでしょう。そう思っていましたが。
「……申し訳ございません」
「!」
私は目を見開きました。優雅に微笑んだまま、なのに彼は何かを詫びようとしているのです。何を謝ろうというのでしょうか。私は彼を窺うも。
「……」
彼はどこまでも感情を読ませることはないようですわ。そうして学園へと連れていかれ――。
お読みいただきまして、ありがとうございました!
明日も投稿予定です。
気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等をしていただけますと
大変励みになります!よろしくお願い致します。




