幸先の良いスタート……?
笑いが絶えない空間。本当に上手くやっていけそうですわ。これで心置きなく――。
「おっほん!」
「!」
大きな咳払いが聞こえてきました。び、びっくりしましたわ。私、心臓が飛び出そうになりましてよ。
「――皆さん、お静かに願えますか。じきに教師の方がみえられると思いますが」
和やかな雰囲気の中、ただ一人。底冷えするような眼差しを向ける存在。
「……ああ」
私は失念しておりました。そう、彼もまた、同じクラスであったのです。
「……失礼ながら、アリアンヌ様。諫めるお立場ではありませんか?」
「ぐっ……」
正論……ではありますわね。こう、軽蔑という軽蔑の目を向けられながらではありますが、非は認めませんと。
それにしても相も変わらず――眉間に皺が寄っていますこと。初対面であろうと、おかまいなしですわね。
「……ああ、名乗るだけはしておかないと。失礼致しました、アリアンヌ様。ヒューゴ・クラージェと申します。特にお構いなくで結構です。分不相応とも存じておりますので」
刺々しさを隠しもない彼は、伯爵家クラージェの御子息。おざなりも過ぎますわね……。このいかにも、関わりたくありませんといった態度。
肩くらいの細く柔らかそうな髪。切れ長の瞳、高く通った鼻筋、笑みを携えた薄目の唇。品の良さが表れた優美なお顔。背筋も正しく、所作の一つ一つも美しい。紳士たる彼は、丁寧な態度を崩さないことでしょう。
本来ならば。
何なのです。私に向けるこの態度は何だというのでしょうか。
「……」
いけませんわ、顔が引きつっておりました。常に持ち歩いているのは、扇子。殿下から贈り物であるそれは、極上品であるもの。それをこう。
「ほほほほほほ。申したでしょう? 私達はご学友。そこまで畏まらなくてもよくてよ。とはいえ、品格を持って行動するようにしますわ」
口元を扇子で隠しますの。目元は優雅な笑みを。口元は、盛大に引きつらせておりますの!
「どうぞ、お気を遣わないでください。ご学友などと恐れ多いですから」
まあ、ヒューゴ殿。辟易とした表情も隠されませんのね! ……ええ、本当に。
「おほほほほほほ!」
私はやけくそ気味に笑い通してやりましたわ。煩いと言われたばかり?知りませんわ、やけくそですもの。
「……」
あ、今度はヒューゴ殿が引きつっておりますわね。ちょっと気分が良いですわ。
「……。皆さんも、驚かせて申し訳ありませんでした。私は緊張でもしていたのでしょう。不慣れな点もありますが、仲良くしていただけますと幸いです」
彼ときたら、にこやかに笑ってくれるではありませんか――私以外に向けて。特に婦人達が華やいでおりますわ。
まあ、結果オーライ、なんとやらですわ。教室も落ち着きましたし、和やかな雰囲気も取り戻しました。私もまた、笑顔を保ったままです。扇子頼りに。もう支えですわね。
「……」
ヒューゴ殿、そしてオスカー殿。ええ、なんと申しましょうか。こう、言葉にするのことすら、度胸がいることではありますが。
――トラウマコンビと申しましょうか。
私はかつて。ヒューゴ、そしてオスカーと攻略を試みました。どのような恋模様になるかと、胸ときめかせたものです。結果、あのグロエンディングとあいなりましたが。ダンジョンジャンキーになってしまいましたが。
内容は控えさせていただきます。ぐろいとしか。アリアンヌ様が何したっちゅうねんとしか。元はあのギャグ落ちっぽいのが、バッドエンディングであったのでしょうに。何ともまあ……。
「はーい、席に着いてくださーい」
先生がいらっしゃったので、私達は着席をすることに。その間も、私は今後のことを考えておりました。
正直前途多難ではありますが、気持ちで負けてはいられませんわね! 早速、誰かさんから塩対応をくらいましたが、最初は仕方ありませんもの!
お読みいただきまして、ありがとうございました!
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