寸前だったブリジット嬢。
ブリジット嬢が残してくれた手がかり。風で飛ばされてしまったのが大半であり、特定に手間取ってしまっていた。それでも有難いのは確かで。
「方角は特定できたし。人の寄りつかない場所、使わなくなった場所。あそこでしょ」
オスカー殿が示した場所。『旧倉庫』でした。悪さをするには適した場所でありますわね。
「まだ留まっていることを願いましょう」
「……うん」
時間は経ってしまっている。通常ならばもう、去っていると思われるもの。それでも私は可能性に賭けたかったのです。
特定さえ出来れば、私達は全力疾走するのみです。到着したのは、旧倉庫前。施錠された強固なる扉が私達を阻みます。
「私の出番ですわね」
おあつらえ向きの鉄の棒もあるではありませんか。鬼に金棒とはこのこと! 私は破壊を試みまして――。
「待って止まって落ち着いてアリアンヌ様!」
慌てて制止してきたのは、オスカー殿です。一息でしたわね。
「……そう、落ち着いて。開錠されているから」
「開錠、ですって?」
私は鉄の棒を下ろした。侵入者がやったのか、それとも――。
「俺の後ろに下がっててね……これは」
オスカー殿が扉を開ける。漂うのは――血の匂い。倒れていたのは、リゲルの警備員。精鋭であろう方々が。
オスカー殿のように場所を突き止めていても。もしかしたらブリジット嬢も発見していたかもしれない。それでも侵入者に抵抗されて。
彼らから呻き声が上がりました。起き上がれる状態ではなくても、致命傷ではないようです。
彼らは抗ってくれました。力の限り、侵入者を妨げたのです。それはきっと、引き止めることになったと思うから。まだ……まだ間に合うはず。
「……助けてみせますから」
これは彼らがくれた時間。猶予ですから。
「急ごう」
「ええ」
先導するオスカー殿についていく。裏出口に繋ぐ扉を出ると、原っぱに出た――そこには。
「ん……」
黒い外套の不審者二名。片方の人物によってその口を塞がれてはいても。
――無事なブリジット嬢がそこにいた。
間に合った。でも、まだ安心してはいられないから。
「ブリジット! 今助けるから!」
「……」
オスカー殿の存在には気がついていたのでしょう。それでもぐったりしている彼女は、今にも気を失いそうでした。
長い間、耐えてくださった。私も……何よりオスカー殿が。助けに参りましたからね。
「――大人しくしてもらいましてよ!」
先手必勝。私は体術を仕掛けました。狙いはブリジット嬢を確保していない方。そっちに飛び掛かり、後ろをとった。
「ぐはっ」
羽交い絞めを行い、相手を落とした。賊は口から泡を吹いて、相手はその場に倒れていた。気絶している、こちらは良し。
「――余所見するんだ」
オスカー殿の狙いは――ブリジット嬢を拘束している方。彼も瞬時に後ろをとり、食らわせたのは頭部のかかと落とし。その者もまた、その場に倒れ落ちた。
「……はあはあ」
解放されたブリジット嬢はふらついていた。酸欠状態で、意識も朦朧としているよう。
「ブリジット……」
オスカー殿は自分から動こうとしていた。そう、彼女を抱き留める為。それは……ブリジット様が先に寄りかかったりしない為にでしょう。
……今はもう、ブリジット嬢が無事だったからいい。私は複雑な思いを隠し、その様を黙って見守ろうとしていた。
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