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消えたブリジット嬢。

 二人で集合場所に戻ると、何やら騒ぎが。


「――って、オスカーにアリアンヌ様も! やだ……ブリジットと一緒じゃなかったの?」

「……!」


 ブリジット嬢だけがいない――戻ってきていないですって!? そんな……。


「……とりあえず解散しよう。俺とリゲルの警備の人とで捜索しておくから。ちゃんと見つけてみせるから、俺たちに任せといて」


 オスカー殿の仕切りと宣言により、混迷していた私達は落ち着きました。


 ブリジット嬢はなんらかの事件に関わっている可能性だってある。自分たちがこの場にいて、第二、第三となってしまったら。彼らは各々の護衛と共に帰宅することになりました。


 私は耳をそばだてました。商会関係者の話、客の話から統括して――ブリジット嬢は誘拐された可能性が高いです。

 世界に誇るほどのリゲルの安全性、まさかこのようなことになるだなんて。


「……って、アリアンヌ様!? なんでまだいるの!」


 オスカー殿は声を荒げていました。私も一緒に帰ったと思っていたのでしょう。


「ええ、オスカー殿。失礼させていただきますわっ」


 私は会釈と同時に走りだした。


「……って、そっち帰る方向じゃないし!」


 オスカー殿は苛立ち混じりでした。ええ、その通り。私は店舗内に引き返しているのでしたから。


 私は走る中、目にしたのは騒然としたリゲル商会の方々。店を閉めて店員方も捜索に加わっています。


 大事なお客様、さらにバリエ商会長の孫娘。被害者は未成年でもあります。どうして見過ごせますでしょうか。それは公の感情。

 私個人としても――どれだけ冷たくされようと、憎まれ口を叩かれようとも。私はどうしても放っておけなくて。心の奥底で『あの子』と重ねてしまっているのかも。


「足はやっ!」


 オスカー殿は私を追いかけてきました。彼は私を帰宅させようとしているのでしょう。もちろんブリジット嬢の捜索も怠らない。彼は周囲いたるところに目を光らせていましたから。それもあって、彼は速度を落としています。かといって、私とも離れ過ぎることもなく。


「……私もですわね」


 見落としがあってはなりません。細部を見て参りましょう。もちろん、疾走しつつ。



 私達は店内を駆け回りながらも、捜索していました。ですが、まだブリジット嬢は見つからず。これだけ捜しても見つかりませんの……? 


「オスカー殿、店舗内というよりは――」


 私は声を枯らしながら、後方にいるであろう彼に話しかけてみることにしました。


「……オスカー殿?」


 オスカー殿の返答はありません。というか、彼の気配が近くありません。別ルートで捜すことにしたのでしょうか。私は確認の為にと振り返ってみますと。

 かなり後方にいたオスカー殿。彼はしゃがみ込んで、何かを手にしています。ここからでは見えないものですわ。あまりにも小さくて。


「……げっ、戻ってきた」


 オスカー殿は私が向かってきたことに気づかれたようです。いえ、オスカー殿? 


「げっ、ですって……?」


 私の顔は引きつるも、今は抑えましょう。彼はおそらく手がかりを掴んだ。それを元に辿ろうとしていますわ。


「頼むからアリアンヌ様、大人しくしててっ?」

「それは致しかねますわ。そちら……細切れになってますわね。元は写真?」

「……食べた時に、記念に撮ろうって。それを破いたのはブリジットだ。そうだ、手がかりになるように――って」


 オスカー殿は説明してくださってますが、私が隣までやってきたことに気づかれたようです。しゃがんでもおりますわ。


「……彼女、痕跡を残されていたのですのね」


 彼女は『今回も残してくれた』。それはさすがに口を噤みました。


「……はあ。どうしても戻ってくれないのなら。俺は何が何でも連れてくけど」

 オスカー殿は諭すようでいて、強い口調でありました。私の安全を考えてくれているのでしょうが、ですが……オスカー殿。


「それは時間のロスになってしまいますわ。逃げ回っていた身で恐縮ですが、共に参りましょう。お忘れになって? 只者じゃないとか、ゴリラとか。そう称したではありませんか」

「あ……」


 オスカー殿は口に手をあてていました。


「ああ……言ったね。うん……言ってたわ、俺」


 ええ、言いましてよ。オスカー殿は一呼吸すると、私と目を合わせた。


「何が何でもって言うなら、こっちだよな。アリアンヌ様、俺があなたを守るから」

「……オスカー殿、それは」

「それだけは譲れない。行こう。風で飛ばされてもいるだろうし」

「……はい!」


 私達は頷きあった。



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