待ち合わせの二人。
本日のお出かけ先は、リゲル商会の本店。そこはショッピングモールといえましょうか。お買い物はもちろん、飲食店や遊べるスポットまで充実しています。一日あっても回りきれないほどです。
あとなんといっても! 我が国だけではなく、世界にも通じるリゲル商会ですからね。厳重なる警備によって守られてもいます。要人もお忍びで来られるほどですわ。親御さんも安心して遊ばせられる場所でもありますわね。
護衛達は後方待機してもらい、待ち合わせの場所である入口に到着しました。
アーケード街でもあり、店がいくつも連なっています。カラフルな店たちを見て、私の心も華やぎますわ。
「まあ……」
こうしてみるとかなり広いですのね。私、幼少の頃に訪れたくらいでしたの。あまり記憶にありませんでしたわ。私の買い物は邸にやってくる外商のみでしたから。
ああなんて素敵……憧れの極地でしてよ。私は一人、胸を踊らせているのでした。
……ええ、私だけでしてよ。それもそう、私は早く来ていますから。それもそう、どなたも来てなくてよ。決して誰も来ないオチではなくてよ。
「ちょっ……アリアンヌ様、早すぎ」
今、噴き出しましたわね……オスカー殿!
「ごきげんよう。早く来たのはあなたもではありませんか」
「だね、俺もじゃんね? ごきげんよう、アリアンヌ様。俺さ、楽しみすぎて早く来ちゃった」
「まあ、私もでしてよ」
「だよなっ」
お互い様でしたのね、そう私達は笑い合いました。
「……なんか、新鮮というか」
ひとしきり笑ったところで、オスカー殿は私の格好が目に入ったようです。一度見たあと、それとなくそらされてしまいましたわ。
「ええ、まあ……着用する機会もありませんでしたから」
私の服は外商の方に勧められたものでした。持っておいて損がないと。たった今、機会に恵まれましたわね。
「オスカー殿、素敵ですわね」
彼の格好はラフめながらもジャケット姿。綺麗めの格好といえるでしょうか。かちっとした着こなしは、こう思えるようになっていますから――彼らしいと。
「……素敵とか、言わないでって。不意打ちとかやめてほしい」
依然目はそらされたまま、それどころか顔まで覆われているではありませんか。そのような状態で、彼は何かを言おうとしています。
「アリアンヌ様だって新鮮だし、似合ってる」
「まあ、ありがとうございます。そういっていただけて安心しましたわ」
普通の褒め言葉でしたわ。私は必要以上に構えて――。
「それと……あんまりにもかわいいから。誰にも見せたくないっていうか」
「……」
私は……どのような顔をすれば良いと? 私だってそう。あなたを見られなくなっているではありませんか……。
「――初々しいカップル。微笑ましいわぁ」
「……!」
こちらは来客者のお言葉。今の私達を見て――カップルだと。そう言った方だけではなく、通り過ぎる方々もそう。私達に温かい眼差しを向けていた。一様に私達が恋人同士であるという誤解をしている。
「カップルって……」
顔を赤くしたまま、オスカー殿は反芻していました。彼は否定することありません。
「……待って? 婦人の方、公爵家のご息女じゃない? ほら――王太子と婚約なさっている」
「……!」
高揚していた気持ちが。火照った顔が。一瞬にして――冷えていく。
それはオスカー殿もそう。彼も顔が青くなっていたから。それでも彼は――否定しようとしない。
「……そう、俺達は――」
それどころか、彼は何を言おうとしているの。
「……」
不貞だと思われている。早く、早く私が否定しないと――。




