ここがスタート地点。
私達は学園の外れまでやってきました。お馴染みの場所ですわね。
「来てくれてありがと。話しておきたくてさ。俺とブリジットの関係のこと」
オスカー殿は机に手をつき、語りかけてきました。
「俺さ、直談判してきたんだ。ブリジットのおじいさん、会長さんにね。話がさ――進み過ぎている気もしたからさ」
「!」
私が驚いていると、オスカー殿はだよね、と笑われました。
「リゲル商会の知り合いに協力してもらって。うちの親が勝手に進めているんじゃないかって、俺も思ってたから。うちは貴族といえど、調べれば調べるほどボロが出るわけだし。良縁ともいえないのに、相手でいいのかなって」
「それで話をつけに……ですの」
「そうそう。まあ、結果が――そこまで話がいってなかったというか」
「ええ!?」
なんということですの。ブリジット嬢と男爵家だけが、でしたの?
「孫の望みなら、って感じでもあったけど。でも……だからこそ、俺とじゃ幸せになれないって。フェル家の実情も話したよ。恥とか言ってらないし」
オスカー殿は気まずそうにしていました。恥でもあって、傷でもありますから。話すのは大変だったことでしょう。
「会長さんも納得してくれたよ。実際にさ、厄介な家族がついてくるんだから。デメリットでしかないからね。まあ……お孫さん溺愛でってのはあるけど」
まだ危惧することはあると、それでも。
「……厄介、だって。それすらも言えなかったのに。俺、あの人達に断り入れずに動いてるし。でもさ、動いてみたら平気だった!」
オスカー殿の顔は晴れ晴れとしていました。見てるこっちまで、明るくなってくるような。
「まあ、結局は――なんだけど」
「……?」
ぼそりと呟いた声は、私には聞き取れず。聞き返そうにも、オスカー殿に首を振られてしまいました。
「……えっと、結局は家のことはあるけど。でも、いつまでもさ。あの人達に言われたままにもしておけないし。間違ったことは正してもいきたい」
「……オスカー殿」
机の上にある手は震えたまま、それでもあなたは変わろうと。そうなのですね。
「アリアンヌ様のおかげだよ」
「いえ、私はそんな」
「いや、本当にそう。あなたに支えられたようなものだから」
なんてまっすぐな目ですの。私に向けられたそれは、そらすことも出来ず。
「ええ、これからも支えていきたいですわ――もちろん、友人として」
私に出来ることでしたら。私は笑って答えました。
「……」
オスカー殿は片手で自身の胸元を抑えつけています。顔は笑んだまま、でもどこか辛そうな――。
「……ああ、そっか。俺が散々言ってきたな」
――気持ちがわかったよ、と。目を伏せておられます。
「……でも、いいか。今、スタート地点に立った感じ。ううん、なんでもない。あ、ほら。まだ時間あるでしょ。話でもしていこう?」
「え、ええ……そうですわ。誕生日の贈り物についてですが――」
オスカー殿に笑顔が戻られました。私はどこかひっかかりつつも、彼との会話を楽しむのでした。
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