贈り物は――宝箱。
公爵邸まで送ってくださったオスカー殿。一人で帰れる、そう言いたいのは結衣だから。立場上、私は有難く受け入れることにしました。
「オスカー殿、ありがとうございました。気をつけてお帰りくださいましね」
雨は依然降り続けていますが、穏やかなものとなってました。
「うん、わかりました。またね」
「ええ、また明日――」
オスカー殿は傘をさして帰られました。私はいつまでも見送りたかったのですが。
「お、お、お嬢様……まさかと思ったら」
傘を持ちながらやってきたのは、先程のメイドでした。これまでかというくらい、真っ青な顔をしています。部屋にいないと気づかれてしまいましたわね。捜しにいこうとしてくれたのでしょう。
「心配かけてしまいましたわね……よいかしら。私はバルコニーに出たら落とし物をしてしまった。それを探していた。そういうことですの」
ちょっと苦しいかしら。それでも彼女が責められるようなことにはしたくなくて。
「で、ですが……」
「ほら、戻りましょう。このことは、ご内密にね」
お互い体も冷えますし、留まっているのもよくはないでしょう。というか、イヴ辺りが察知しそうですわ。今はそのようなことはありませんが。
「は、はい……」
私は彼女に付き添ってもらい、家に戻ってきました。
生乾きの寝間着は、部屋の中にある風呂場で一緒に洗ってしまいました。こっそりと室内干しですわ。
「さあ、開けてみましょうか」
机の上に置いてあった、オスカー殿の贈り物。明日の朝一番に感想をお伝えしたいですわね。
「?」
包みを開けると出てきたのは小さな宝箱。まあ、オスカー殿。ダンジョンから手に入れてくださったのかしら。コレクションしていたと覚えていてくれましたのね。
「ふふ」
私が喜んでくれると選択してくれた。私は笑いが零れた。改めて、愛しそうに宝箱を見ようとすると。
「……あら」
それは茶色の宝箱。慣れ親しんだものとは質感が違う。鍵穴も凝った作りで鍵も付属されていた。これはアンティークショップで売られているようなもの。ダンジョンで手に入るものではありませんでした。
「オスカー殿……」
私は彼の名を呼び、その宝箱を胸元で抱きしめた。心が満たされるようで――。
「くしゅんっ!」
私はくしゃみをしてしまいました。顔は咄嗟に背けましたから、飛沫はかかってはいませんわね。危ないところでした。
「……寝ましょう」
とうに深夜も回ってますから。本当に良い一日でした――。
ああ、何故ですの……。
「ごほっごほっ」
私は今、寝込んでおります。額に氷嚢を乗せられ、ベッドにてうなされています。
ええ、そうです。私は風邪を引いてしまいました……。
何故ですの、私は頑丈なのではなくて? もしかして、風邪などには弱いのでしょうか……。
ここ数日は安静にするようにと、お医者様にも言われました。今はただ、回復に努めるしかありません。
「ごほっ……」
視界がぼやけますわぁ……。私はおぼろげな意識の中、オスカー殿のプレゼントを考えておりました。本当に素敵な贈り物でしたわ。
「私も彼が喜んでくれるような……」
今度はいつ贈り物をしようかしら。オスカー殿、まめに返してくださるから。こう、催促感も生じてしまいますわね……頭がくらくらしますわ。
手持ちも尽きてきましたからね。またダンジョンに赴きませんと。
「残り一個……でも」
そう、とっておいたといえましょうか。レアに該当する宝箱でした。以前、制限でもあるのか受け取っていただけなかったものです。今なら受け取ってくださるかもしれません。そうだとしても。
「……渡せませんわ」
その中身は――コロシアムの観戦チケットでした。今となっては渡せなくて良かったと思ってますわ。
ヒューゴ殿の前例もありますから、何らかのきっかけやイベントが発生するのでしょう。好感度だって跳ね上がるのかもしれません。
「ええ、私にはどうしても」
それでも無理でした。どうしても無理で。
「……すうすう」
薬が効いてきたのでしょう。私は眠りについていきました。
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