まさかの同日開催ですの!?
もうすぐ楽しみな誕生日、そのはずでした。まさか、まさかでしてよ……!?
「――あのね? この日、私の誕生日なの。それでお招きしたくて」
と、ブリジット嬢。彼女は招待状を一人ひとりに配っています。その日は、その日はですわね……?
「まずは、オスカー様。あのね、私も手料理をふるうから。来てほしいなって」
上目遣いで凝った招待状を渡しています。相手はオスカー殿。
「えへへ……」
周りの生徒達はよくやった、とか。これは行くでしょ、とか。囃し立てているではありませんか。
「……へえ、誕生日なんだ。おめでとう」
オスカー殿は受け取り、招待状を見つめていました。それに頬を膨らませるのはブリジット嬢。
「もう、オスカー様? ――当日に言ってほしいなぁ? その方が嬉しいのに」
「あはは……」
オスカー殿は笑って答えていたものの。
「……『お父様』もね? そのこと、お話したらね――良い話じゃないかって」
「!」
ブリジット嬢は体は接触していないけれど、耳元に口を寄せて話す。近しい距離、秘め事を話すよう。実際、私の方まで聞こえておりますわね。
「お父様だってー」
はしゃぐ生徒達にだって。彼らは盛り上がっているのにかまけて――顔を蒼白しているオスカー殿には気づいていない。
「――さてと。あ、ヒューゴ様」
言いたいことを言ったから。そんな感じなブリジット嬢は、次に読書中のヒューゴ殿の元へ。
「ヒューゴ様も、良かったらでいいから来てほしいな? また昔みたくおしゃべりしたいなって」
「会話はしているではありませんか」
「もっと……もっとだよ?」
ブリジット嬢はヒューゴ殿は遠慮なく触れています。彼女の手は、彼の腕に添わせているではありませんか。
「……生憎ですが、その日は予定があります。せっかくのお誘いなのに申し訳ありません」
ヒューゴ殿は手はそのままにしてはいるものの、断ってはいました。そうですわね、その日は――彼もまた、『家の都合』ではありますわね。
「……そうなんだぁ。でも、いいの。終わったらでいいから、来てほしいなっ」
ブリジット嬢は体を屈ませ、ニコっと笑いかけました。ヒューゴ殿はすみません、と読書に集中していますわ。
「……」
怖ろしい子。ヒューゴ殿もロックオンされているのかしら……いえ、無意識かもしれません。尚更怖ろしい子……!
「アリアンヌ様、よろしいですか?」
「ええ、よろしくてよ?」
っと、いきなりこちらに来ましたわ。後回しにされるかと思ってましたのに。
「アリアンヌ様もよろしかったら。お待ちしてますね?」
「あなた……」
私にも笑顔をみせてくれるブリジット嬢。あなたのその柔らかな笑顔は、私のかつての友達を彷彿とさせるもの。あなたと同じ名前の彼女を、どうしても思い浮かべてしまって――。
「アリアンヌ様?」
「……失礼しましたわ」
意識がそちらにいってましたわ。ええ、返答しませんと。
「ブリジット嬢。申し訳ありませんわ。私もその日、都合がつきませんの。お誘いは嬉しかったのですから、またのご機会にでも――」
「え、アリアンヌ様も駄目なの? それもヒューゴ様と同じ日に……? それって、お二人はデートするってことですか!?」
言い方……! 仰天する私もですが、ヒューゴ殿も手を滑らせて本を落とされたではありませんか。とんでも発言でしてよ!
「……っ!」
ばっとこちらを見たのはオスカー殿。どこか焦っているような表情が気がかりです。ひとまず誤解を解きましょう……本当のことを申し上げましょう。その日は――。
「――ブリジット嬢。その日もですね、私の誕生日ですの。夜会ということで、一日潰れるようなものですから」
……まあ、気まずくはありますわね。招く相手も限られていますし、彼女のようにクラス全員を招待も出来ませんもの。一度だけでいいから、やってみたくもありますが。
「……ん?」
というか、オスカー殿。あなたは招待しているのですから、存じていたでしょうに。たまたまお忘れになっていたのかしら。
「あ……そうだったんですか。私と同じ日、なんだ」
気まずそうにしていますわね。でも、あなた。口元は笑ってましてよ。私にしか見えませんわね。
「そっかぁ、なるほど。ヒューゴ様もおうちのことなら断れないよね」
……かわいそ、と。私にだけ聞こえる声で言ってきましたわね。それはこちらも百も承知ですわよ。
ヒューゴ殿も気にされているのか、こちらの様子を伺ってます。あなたに言われましたものね。ええ、しっかりしませんと。
「私は出席は叶いませんが、お祝いは贈らせていただけるかしら。あなた、花のアレルギーなどはありまして?」
私は自分が思う限りの極上の笑みを浮かべました。あらぬ誤解は御免ですもの。ここぞとばかりに笑顔を見せますわよ。ちなみにありませんわね、ですが聞いておきませんと。
「……え。えっと、その、ないけど」
想定外の反応だったのか、たじろぐブリジット嬢。私は続けます。
「そう、良かったですわ。あなたの誕生日に花を添えさせてくださいな。家の者に送り届けさせますから」
「え、でも、なんか、仕込まれてそうで、怖いっていうか」
「……ブリジット嬢」
それはさすがに言い過ぎではありませんの? 私は笑顔は絶やさないまま、彼女に言葉を向けた。
「――ボヌールの名を汚すことなど、致しませんわ。恥ずべきことをすると、お思いなのかしら?」
公爵家の娘として、あなたへ贈るのです。どうして、家に泥を塗るようなことが出来るというの。
「……あ、ありがとうございます。私も贈りますね?」
「まあ、ありがとうございます」
ブリジット嬢はすごすごと引き下がった。彼女は居心地を悪そうにしながらも、招待状を配り歩いてました。私は招待状はいただいておきました。彼女の手作りでもありましたし。一つ一つ手が込んでもいますわね。それは私の分もそうでした。
クラスメイト達も。ヒューゴ殿も。オスカー殿も。そして、私も。ブリジット嬢からもらった招待状を一様に眺めていました。それぞれの思いを抱えながら――。
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