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ブリジット嬢、同時ロックオン。

 放課後になりました。ブリジット嬢はご友人と遊びに出掛けるようです。もちろん、オスカー殿もご一緒に。


「……ええと」


 静観している場合ではなくて? 二人の距離が縮まっておりません? 私も今回ばかりは、お声を――。


「ブーリジーット嬢っ!」


 ああ。歌うようにやって来られたのは殿下でした。学年は違いますので、わざわざ赴いてまで。彼はブリジット嬢に逢いに来たのでしょう。ここ連日でございます、ええ。


「きゃっ、殿下……!?」 

「お、おう……すまん」


 勢いあまってか、殿下は抱きつき寸前でした。二人は照れています。


「……むう、ハグ未遂でこれだけ照れるとは。たまらん、たまらないなぁ!」


 殿下は一人悶えています。7

「そうだ、殿下。先日いただいたもの、ありがとうございました。休みの日、欠かさず身につけてます」

「本当か! ああ、贈った甲斐があった!」


 殿下? 贈り物ですって? それも身に着けるようなものを?


「――殿下、お時間でございます。もう出ませんと」


 ついてきた側近殿は変わらぬ笑顔。


「ええー……、これだけぇ? なんとか時間作ってくれよぉ!」

「至らぬばかりに申し訳ございません」


 駄々をこねる……ええ、言葉通りですわ。本当に往来で駄々をこねてますもの。それを笑顔のまま強制的に連れて行くのは、従者殿でした。大変ですこと……。


「名残惜しいけど……またなっ! 前に話していた、花の博覧会! 今度行こうなー」

「ふふ、はい。楽しみにしていますね、殿下?」

「きゅーん! かんわいー! ぜったい連れてくかんなー――」


 ブリジット嬢のあまりの愛らしさに、殿下はとても刺さったようですわ。心臓を抑えています。強制的に連れていかれる中でですが。


「……」 


 多くの生徒の中にいた、ただの一生徒。殿下にとっての私はそうだったのでしょうか。一瞥くれることもなく、殿下は去って行かれました。


 殿下の背中を見送ったあと、ブリジット嬢も帰っていきました。約束が楽しみなのでしょう、微笑んでおられました。そのような話してましたのね……そのような約束を。


「――殿下、本当にブリジット嬢が好きなんだなぁ」

「誰にでも優しい方だけど、明らかにガチ惚れしてらっしゃるよな」

「好きで好きでたまらないんだろうけど……でもなぁ」


 当の二人がいなくなったからか、その場にいた生徒方が口々にしています。あの二人の仲、特に殿下側からでしょうか。熱の入れっぷりが凄まじいですもの。

 ええ、殿下。あなたは――ブリジット嬢を愛してますものね。王族であろうとそうでなかろうと。あなたの彼女への接し方は変わらない。


「――ほら、婚約者もいるだろ。一方は公爵家。もう一方は大富豪といえど、平民。良くて愛人だろうな」

「――って、おい。す、すみません、アリアンヌ様!」

「わわっ。すみませーん」


 あれこれ言っていた彼らですが、私の存在に気がついたようです。目を泳がせていた彼らは雲の子を散らすように去っていきました。

 そう、殿下の婚約相手は私。昔からの許婚ですわ。それは変わらないものと思っております。その為に教育されてきたところもありますから。


 ブリジット嬢。彼女は本当は王族でもあるのだと、私はそう思えるのです。それなのに、彼女は商家の出だとしている。王族であることを隠している。

 殿下がそれをご存知かどうかはわからない。ともかく、前回のように正式に迎え入れるのは難しいでしょう。殿下の思いがあれど、こればかりは――。




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