夢か記憶か
多分。明け方近く、夢を見た。
遙か昔、私と舞がまだ母親のお腹の中にいるとき。
私たちは羊水にぷかぷか浮きながら、頭と頭をコツンコツンして遊んでいた。頭がコツンとぶつかると、いや、少し離れていても、お互いの考えていることや気持ちがわかった。
ママがご飯を食べてるときは、ボクたちもおなかがいっぱいになるねとか、パパがママのおなかをなでると、くすぐったいねとか。
それは楽しく幸せな空間、安らかな時間だった。今こうして二人、ベッドの中で頭を寄せ合って寝ているみたいに。
でも、ある日。
舞は「ごめんね、バイバイ。」と言ったきり。二度とその声が聞こえることがなかった。
そして、今も、また舞の声が聞こえない・・・
がばっとベッドから起きる。胸がドキドキしている。のどが締めつけられ、苦しい。
隣に舞の姿はない。慌てて探す・・・までもなく、舞はベッドの上で正座し、私の顔をじっと見つめている。
髪はすでに編み込んでアップにしている。
「瞑、どうしたの? 何か変な夢でも見た?」
「ううん、何でもないの。でも・・・ちゃんと舞がいてくれてよかった。」
「あはは、当たり前じゃん。ここ、ボクの部屋だもん。」
舞はベッドの自分のスペースにごろんと転がる。
「瞑は今日、何か予定あった?」
「ううん、何にも。」
週末の疲れをとろうと、土日は家でゴロゴロしている予定だった。
「じゃあさ、今日一日、つきあってもらってもいい?」
「え、構わないけど。」
舞から聞きたい話は山ほどある。
「やった! ではでは、さっそく朝ご飯を食べに行こう。」