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プロローグ1

カタカタカタ……


「………」


時間は午後二時、俺は自室でパソコンと向き合っていた

時計の針を刻む音とキーボードの入力音のみが部屋に響いていた


「………」


俺の名前は(しのまえ) 海山(かいざん)、小説作家である

一言に小説とは言っても推理小説や文学小説など様々な種類があるが俺が書いているのは主に若い人たちに向けて描いているカジュアルな内容のライトノベルを書いている「サンサン大海原」という作家だ、中途半端に伸びた紫色の髪を少しボリボリ書きながらブルーライト用のメガネをかけなおして作業を進める

今は書いている作品のクライマックスシーン……現在書いている巻の最終ではなくシリーズの最終回だ

10巻以上も続いていたシリーズの集大成でもあり、今まで立てられた伏線もすべて回収したし…主人公達の目的もすべて完了し締めの言葉を行っている


「………」


俺の作品は登場人物同士の仲の良さを全体的に表現をしている

チープな作品によくありがちな全肯定などはなく、喧嘩や謙遜に疑心などもあったりもして、正直書いているコッチもしんどくなることもある

……でも最終的には主人公たちは仲良く笑顔で終わる、それが俺の作品だ


「………シ」


いくつかのシリーズを打ち切りであってもちゃんとした形でも完結していったが、いつもこの瞬間は高揚感がある、あまり登ったことないけど山に登って山頂にたどり着いた時に似ているかもしれない

楽しいけど結構な時間を苦労して時間を掛けて山頂にたどり着く感覚、多分同じだろう

そして……


カタカタカタ、タンッ!

「……ア」


最後の「 (終わり) 」と入力してここにまた一つの大きな物語が完結した

背伸びをすると同時に両腕を上にあげてガッツポーズをする

完成した……完成したんだ!満足する結末だ!

正確には担当編集の確認作業やイラストレーターにどこのシーンを描いてもらうかの相談も残ってはいるが

それでも俺が書いたこの小説「不可視の一撃を乗り越えて」はほとんど終わったも同然だ!


「……」


全身で喜びを表現する、家には妹と親友がいるからドタバタと騒音はさすがに出来ないが腕を上下におもいっきり振る、勿論周囲に気を配りながら腕を振る。ここでパソコンに腕が命中してデータが吹き飛んだら目に余ることになる

ひとしきり喜んだ後は再びパソコンの前に戻り今度はメールの作成を行う

編集の方に原稿が完成してその内容を送る作業もある、最初の締め切りはまだ一週間後にあって余裕はまだまだあるがやることには早い方がいいだろう

………最初の締め切りって言ったが、どうやら締め切りには普通の締め切りとマジモンの締め切りと二種類あるらしい、普通の締め切りは不測の事態に備えて余裕を持って設定される締切とのことらしくこの締め切りを破っても発売に影響はないが編集に影響があるし作家はその期間で編集者に甘えてはいけない

そしてマジモンの締め切りとは、破ったら発売延期などをして本当に本が出せなくなる締め切りであり大手ともなれば大赤字になったりしばらく本が出せなくなったりと大変なことになる

作家系のライトノベルではマジモンの締め切りの事を「真デッドライン」「マジの本当のヤバイ締め切り」って言われていたりしているが、普通の締め切りを常に守っているから考えたことない

とにかくパソコンのメールを開いて送信準備を始める


カチ、カチカチ

「………」


キーボードからマウス操作に切り替えて、出版社の「サンライズヒル文庫」の担当編集と話をする

とはいえ、一言二言だけメールの送信が終わると先ほどまで書いていた最終巻の原稿を送信する、昔は原稿を郵便かもしくは直接出版社に持って行かないという時代もあったらしいが、便利な世の中になってよかった


担当編集>はい、確かに原稿を受け取りました。お疲れ様です!

しっかりと誤字脱字確認させていただきます!!

サンサン大海原>よろしくお願いします


送信も完了して、俺の出来ることはほとんど終わった。

時間にして本当に数十分程度で終わる作業であったが、終わった嬉しさと寂しさが同時に心に来る、本当にこの感覚は好きだ


「………」


………さて、これからどうしようか?作品が書き終わったらまた新しい作品を書こう…って思いたかったけど何も思い浮かばないし、ちょっとした余韻に浸りたいからしばしの休暇をしようと思う

作家として普通に暮らせるほどのお金はあるがそれでも、休暇がてら小説のネタになりそうな経験をしてみたい


……まあ、内職などの簡単な数日で済むバイトをしてみるか?


思い立ったが吉日、自室からリビングに向かおう!自室のパソコンから調べてもいいが新聞とかから探したい気分だ、メガネを置いてさっそく部屋を出て……ん?


「ふわぁ~お疲れーヒロ、今回の耐久配信半端なかったね~」

「あぁ~流石に1日以上は勘弁してくれよ、まあモデレーターも楽しいからいいけどな。さっさと失った分寝させてもらおうか」

「私は1回シャワー浴びてくるよ」

「おれはぁその後もらうわ、ん?」

「あれ?兄貴?」


部屋を出ると隣の部屋から2人の男女が扉から出てきた

女性の方は「(しのまえ) 星奈(せいな)」、俺の妹であり俺と同じ紫色の長髪をしている。普段は赤い二本のヘアピンを付けているはずだけど今は外しているみたいだ?いつもは結構快活な話をしているけどお疲れムードの様子

そして同じくお疲れムードの赤黒い髪の男性は「七宮(しちみや) 宏樹(ひろき)」、俺の幼馴染であり親友…いやほとんど同じ意味か、いつもは結構のんびり屋でぶかぶかな服を着ておりちょっとけだるげであるがいつも以上にだるそうに……というよりも疲れていた


「(お疲れ様、2人とも)」

「ありがとう兄貴!」

「ありがとうなカイ、お前は?」


実を言えばなのだが……俺は声帯に異常があって喋ることができなくて手話で二人と会話をしている

呻き声のようなのやため息しか口から出せないし、無理に声を出そうとしたら声帯への負担で喉が痛くなる

親友や家族である2人は手話が分かるけど、お店に出かけた時のようにそれ以外の人は手話が分かる人はあまりいない、その時は小さなホワイトボードとペンを持って筆談をしている


「(楽しみにしててくれ、今まで書いていた「不可視の一撃を乗り越えて」が遂に完結した。担当編集に原稿は送ったから近々イラストの依頼をするよ)」

「おめでとう!!いや~読むの楽しみだな」

「兄貴おつかれ~気が向いた時には私の動画で紹介配信するよ!」

「(いや、別に宣伝はしなくてもいいよ)」

「いやいや、兄貴の作品はいっつも面白いからヤイたみ達に共有したくなるのよ!」


俺はライトノベル作家をやっているけど、2人も創作関係の仕事についている

妹の星奈はVtuberで動画配信をしており……えっと動画配信というのはあまり詳しくはないけど動画を生配信で流して色々な人たちを楽しませる仕事であって、Vtuberはその中でも二次元に生きる先進的な配信者でありバーチャルの世界からも楽しませてくれるから……

…え?今目の前にいるのにバーチャルってどうゆうことかって?触れるな

個人ではなくスカイウィンドという事務所に所属していてVtuberとしての名前は「音黒 ヤイミル」。先ほど言っていた「ヤイたみ」というのはヤイミルのファンの事を差している、登録者は50万人もいてかなりの人気、モフモフな外見にツノの生えた元気な女の子だから人気が高い、いや本当に凄いな……

2人の会話の内容から察するに先ほどまでやっていたのはどうやらゲームをクリアーするまでずっと配信し続ける耐久配信をやっていたみたいだ、1日以上ゲームをやり続けているって話していたけど本当に妹は昔から体力おばけだな?


そして親友の宏樹はここの同居人でイラストレーター兼モデレーターをしている、名前は「モノクロノイズ」

寝るのが大好きなのんびり屋ではあるけど仕事は本当に早い、俺の書いている小説のほとんどを担当しているし、更には妹のVtuberという意味で母でもある……どうゆう意味かって?さぁ?

俺の書いている小説は人間関係のを優先的に書いてるけど戦闘シーンのような激しいシーンも異種族とのような人外や獣人もほとんどなんでも描ける、ケモノ好きではあるがそれよりも彼が一番表現できるのは登場人物の表情!人間関係を表現する俺の作品と相性が本当に良い!食べ物以外なんでも描けるんじゃないかと思っている

そして星奈のモデレーターも俺と一緒に行っている、モデレーターというのは配信者が配信に集中出来るようにコメントの管理をする仕事だ

どんなに人気の配信者であってもアンチコメや荒らしは必ず現れる、そんな奴らを蹴散らすための仕事……だったかな?それ以外にも告知を行ったりもするけど多分そっちが本職かもしれない

ここで寝るみたいな発言をしていたけど普通にルームシェアをしている、つまりこの家で三人で暮らしている


「ふわ……もっと喜び合いたいけど耐久配信後だから私はシャワー浴びてくるおよ、このままだとシャワー浴びながら寝てしまいそうだからえな」

「(呂律も回ってないが大丈夫か?)」

「俺も眠いけど、変に寝ないように一緒に入るか?」

「うん、そうするー」


後もう1ついうと宏樹と星奈は付き合ってる、俺が邪魔者になってなか心配だし家にいていいんだろうか??兄としては幼馴染だからこそに任せられるから快くOKをした。

配信的には当然秘密にしているけど時たま宏樹の声が入ってしまうこともある、その時には「兄がいる」とごまかしている、OKしておいてあれだけど色々と複雑では?


「(お疲れ所あえて言わせてもらうが

2人で入るはいいけどアレはするなよ、しばらく机に向かって作業していた後に急激な運動をしたら心筋梗塞の可能性があるから)」

「健康の話はもうやめなー」

「そうだよ!兄貴はいっつも長時間配信をしたら『人間は20時間以上起きていたら判断能力が低下する』とか毎回言ってるし!」


創作をするにあたって一番重要なのは健康だと思っている、「生きていれば書ける」なんて言っている作家もいたけど100%の実力を出すには100%に精神も肉体も万全じゃないといけない、作家もVtuberもイラストレーター同じだ、不健康に無理をして過ごしていたらいつ死んでしまうか分からない、そんなことをしたら更新が無くなってしまって待っているファンの人達を悲しませることになるし


「(え?そんな多い?)」

「カイはいつも言ってる」

「いつも言ってるよ!」

「(わりいな、でもそう言っておきながらまた次言いそうだけど)」

「自分で言うなーってツッコミ待ちか?」

「もーいいからシャワー浴びに行かせてよ!」

「(あー長く止めて悪い、じゃあ行ってらっしゃい)」

「行ってきまーす」


そう言いながら、ヒロとセイは風呂場に向かって行った

去っていく後ろ姿を見ながら動画サイトを開き「音黒 ヤイミル」と検索をする、先ほどまでやっていた配信動画を確認してみると………

十二時間弱の動画が二つ?プラスして八時間の動画があるってことは………32時間?!途中で飯やトイレ休憩があったとして、カイがいったん仮眠を取ったとしてもここまでやるのか!?

………後で無理をしないようにキツく言っておこう、人は無理をしたら急に死ぬ可能性があるからな

ちょっとだけ終盤の所を確認してみたけど、本当にずっと元気だな


動画視聴はそのぐらいにしてアルバイト先を探す。

問題はたとえ見つけたとしても電話対応はできない、喋れないから

なのでメールでのやり取りができる所を探す。もちろん喋れなくても働ける仕事でないといけない……本当にライトノベル作家やれててよかった、好きを仕事に出来る才能があって本当に良かった。

とりあえずチラシを一通り確認して………ん?

チラシの山を漁っていると一枚のチラシがはらりと落ちた。

こういう時って物語だと何かしらあるって感じになるんだよな、ってこれは……


クラインフライカンパニーのゲームのテストプレイヤー?


確かにゲームのテストプレイはやったこともあるし、先行プレイの楽しさもあるけどデバッカーとなるから意外としんどいこともある

そういった経験も大歓迎だけど二つほど怪しい所が…


まず俺もゲームをよくやるからゲーム会社は色々と知っているけど、クラインフライカンパニーなんて聞いた事ない。今検索してみてもゲームをやっている実績は無い、この会社は……研究?文明の発展?本当にゲームと関係ない物が多い

そしてもう一つは賃金が異常すぎる所だ、普通は高くても二桁万円の所が三桁万円の数字が見える

短期バイトにしては法外な値段すぎる、裏社会や闇のバイトとかそういった類のものにしか思わない。研究と言っていたし人体実験を受ける可能性だってある、面接と適性検査を受けて合格すれば行けると書いてあるが……

でも普通の新聞にチラシとしてついて来ているし、ざっと調べてみても普通の会社、更に更に言えば重いっきり街中にある

怪しい研究って山奥の屋敷とかで生物兵器開発とか、恐竜の復元とかで違法なことをやったりしているイメージがあるけど完全に都内の街中だ、怪しいのか怪しくないのか分からない


………だが、普通であれば小説も書いていたり健康に気を使ったり、幼馴染も妹という大切な家族もいるから本当にこういったものは誰もが「こんなのは関わらないほうがいいだろう」とチラシを捨てるかもしれない

ここに応募するのは相当ピンチな人か相当バカな人しかいないだろ

だけども俺は……


「行ってみたい」という好奇心が湯水のように湧いていた相当バカな人のようだ


ゲームのテストプレイヤーは確かに何回もやったことあるけどそれに関しては慣れている。

でも、このような怪しい所だなんて創作でしか見たことが無いし「実際はどうなるんだろう?」という好奇心が本当に合った、正直……後悔もストレスも他者に迷惑をかけなければ経験したい

小説家だから好奇心があるって話は聞いたことあるが、俺は好奇心旺盛だからこそ小説家になった所もある、気がついた時には自室に戻ってメールで相談をしていた


三 海山>初めまして、ゲームのテストプレイヤーのチラシを確認しまして

面接や適性検査の前に質問があるのですがよろしいでしょうか?


俺はクラインフライカンパニーへ「喋れなくてもできる仕事」なのかを聞くことにした

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