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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第4章 エルフの森

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第93話 エルフの森フォレスティア

 僕はふと馬車の隙間から顔を覗かせるとそこは僕達の村があった大森林バロンを想起させるような鬱蒼とした森に囲まれていた。

 違う点を挙げるとすれば、時間帯はまだ日中のはずなのに随分と暗く感じる。


 恐らく背の高い木々が太陽の光を遮断してるかんじなんだろうけど。

 あ、でもそっか。そもそも僕達の目指してた場所って―――


「ここからフォレスティアに行けるの?」


「あぁ、このマストゥワの森を行った先のさらに迷いの樹海を行った先にあたしの故郷フォレスティアがある。

 この森に入る前には正面に世界樹ミッドレン様が見えてたよ」


 僕の質問にウェンリが答えてくれた。

 世界樹......それってゼ〇ダのデ〇の木様みたいなものだよな?


 エルフの住む森にはそういうのがよくある設定は色んな漫画や小説にあったけど、まさか実際にあるとは。


 それから途中まで走っていると「そろそろ迷いの樹海に入る」と言ってウェンリが運転していた薫と交代し、そのまま馬車を走らせていく。


 なんでも、迷いの樹海はエルフにしか分からない精霊の足跡を頼りに進んでいるらしいのだ。

 そして、ウェンリは精霊を操るのでその精霊に直接道案内して貰うために運転手になった方が都合が良いらしい。


 そんなこんなで、僕はヨナ主治医の下にお世話されながら数時間後、エルフの森フォレスティアに辿り着いた。


 皆が馬車から折りていく中、僕は他の皆からも随分と心配を受けてるのか、普通に歩いていけるところを康太に背負われることになった。


「あたしはここで待っている。お前達だけで行ってきてくれ」


「え?」


 すると、突然ウェンリは僕達に向かってそう言った。

 すぐにその訳を聞こうと思ったけど、彼女の表情はどこか後悔と罪悪感といったものに覆われてる感じで容易に踏み込むことは出来なかった。


「うん、わかった。それじゃ、僕達だけで行ってくるよ」


「ありがとう。それから、これを渡しておく。

 これはエルフが友好を示した相手にしか貸さないものだからな」


 そう言って、ウェンリは服の下に入れていたネックレスを外し、ヨナに渡していく。

 それは木の葉が入った琥珀のペンダントだった。

 奇麗に手入れされてるがよく見るといくつか細かい傷が見える。


「それを見せればきっと悪いようにしないはずだから。それじゃ、また後で呼んで」


 ウェンリはこっちに気を遣うように笑みを見せた。

 しかし、その笑顔がどこか張り付けたようなのはすぐにわかる。

 するとここで、蓮が一人前に出た。


「悪い、俺も残る。話相手がいなきゃ暇だろうしな」


 振り返り優しげな顔を浮かべる彼に僕はそっと声をかけた。


「蓮......クサいよ、セリフが」


「いいんだよ、一緒にいたいならいたいって言っても」


「別においら達は何も言わないって......後で茶化すけど」


「お前ら後で覚えとけよ?」


 というわけで、僕と薫と康太で蓮を弄った所で僕達はフォレスティアの入り口の木の門の近くにいる弓を持った狩人的な人に声をかけていった。ちなみに、美男である。


「すみませーん、僕達―――」


「何者だ、お前達!」


 声をかけるやすぐに警戒態勢に入られた。

 人数もそれなりに多かったためにすぐさまもう一人のエルフが仲間を呼びに行ってしまった。


 う~ん、あの目......まるで何かに怯えてるように見えなくもない。

 この国にもドワルゴフみたいに何かあったのかな?


 すると、ウェンリのペンダントを持っているヨナが代表して前に出て丁寧にお辞儀すると自己紹介を始めた。


「突然の御訪問、申し訳ありません。

 私達は旅をしているもので、仲間であるウェンリさんにこの場所まで案内してもらい来ました」


「ウェンリだって......? その証拠はあるのか?」


「はい、こちらがウェンリさんから私達の身分を証明するために借り受けたペンダントになります。ご確認ください」


 ヨナは近づいていくと手に持っていたペンダントをその狩人に渡していく。

 その人は注意深く確認していくも、それがウェンリのものだとわかると警戒を解いてくれた。


「すまない、もしやまたあの賊の仲間と思い警戒してしまった。

 皆にはすぐに知らせるから安心してくれ」


 狩人はそう言ってペンダントを返した。


「本人確認はされなくていいのですか?」


「それについては大丈夫だ。このペンダントは特別製でな、所有者の許可なく奪われた場合は勝手に本人の所へ戻るようになっている。

 仮に殺して奪われたものだとすれば、たちまち壊れてしまう設計になってるからな」


 狩人は自身のペンダントを見ながらそのように説明した。

 エルフは魔法知識に対して進んでいるとは聞いているが......ふむ、所有者のもとに戻ってくる魔法か。


 それに死んでしまうのがわかるのは嫌だから身代わりみたいなことには出来ないだろうか。

 うわぁ、なんか難易度がめっちゃ高そう。


 すると、先ほど仲間を呼びに行った狩人が仲間を引き連れて戻ってきたが、対応してくれた狩人の人が事情説明をしたら割とすんなり引いてくれた。


「それじゃ、君達をまず長様の所へ連れて行こう。ちなみに俺のことはトリスで構わない」


 そして、トリスの後について僕達はその国へ入っていった。

 そこはなんとも一番ファンタジーを思わせる幻想的な風景をしていた。


 巨大すぎる木々を部屋が縦にしかないマンションみたいに使っていて、その木々を繋ぐ多くのつり橋、空中に無数に漂うオーブのような輝く発光体などそこはファンタジー心をくすぐるには十分すぎた。


「空気がうまいわね」


「アイ、ここの雰囲気とっても好きなのー!」


「いやぁ、たまにはこういう場所もいいもんだな」


 ミクモさん、アイ、メイファももう気に入った様子で感想を述べていく。

 確かに、ここの雰囲気は今までで一番といっても過言ではないほどに目も心も癒されるような場所だ。


「ここなら療養にピッタリそうですね」


「そうだね。空気が澄んでて良さそうだよ」


「ねぇ、律、あれ止めなくていいの?」


 そう言って僕を背負ってくれてる康太が聞いてくるけど、僕はそっと目を逸らした。


「こっちはおしべを虫のように擬態させるというムシナキ草にあっちは別名『吸引壺』の異名を持つカズボノミじゃないか!

 それにこれはミトリナキにサザメ草! わっ、こっちには―――」


 そこにいるのは僕の仲間の中で植物ヲタクというべき薫の姿であった。

 トリスの後をしっかりついてきているようであるけど、あっちに行ったりこっちに行ったりと瞳をキラキラしながらせわしなく動いている。


 確かに、他所の場所に来てこのような行動は迷惑なのでリーダーとして止めなきゃいけないが、どうにもあそこまで興奮した薫を止めるのもなぁとも思ってしまう。


 それに止めるとすればそれこそ夫婦であるミクモさんの役目なんだけど―――


「ふふっ、旦那様ったらあないに夢中になって全くもって可愛いしかあらへんわ。

 どうしまひょ、供給追い付かへんわ」


 と、薫にゾッコンなので止める様子は毛ほども無し。


「はははっ、今時俺達でもそこまで植物に興味ある奴なんて少ないのにあそこまで元気に動き回るとはな」


「すみません、僕の仲間が......」


「いいって、別に気にしちゃいない。

 むしろ、この森で育ってきた俺達にとっては植物を大切に扱ってくれるああいう子は好ましいほどなんだ。

 そういうわけで、このまま放っておくほうがおすすめだぞ?

 そうすれば、あの子が勝手に周囲にお前達まで森を大切にしてくれる存在だと思うようになるからな」


「そんな打算的な話をトリスさんがしちゃうんですね......」


 まぁ、この国に住むトリスさんがそういうのだとすればあの植物ヲタクはこの場で放置してもよさそうだね。


 それから、エルフの長の家に行くまでの間にトリスさんからウェンリのことを聞かれたので、それとなく話していった。


「......そっか。それじゃ、ウェンリは元気そうだったんだな」


 僕達の話を聞いたトリスさんはどこか嬉しそうな笑みを浮かべた。

 その時、同時にウェンリのあの負の表情を思い出し、あまりにも対照的な反応に疑問が浮かぶ。


 てっきりウェンリがこの国で何かしてしまったのかと思ったけど、トリスさんの反応からしたらそういうわけでもなさそうだな。

 いや、そもそもそうだったら中に入れてくれるわけないか。


「ウェンリさんには何があったんでしょうか?」


「どうだろうね。その悩みが安易に踏み込んでいいかもわからない時はあっちから頼って来てくれるのを待った方がいいかもね」


「それでおいら達が手遅れにならないまで、ならだろうね」


「そうだね」


 仲間だから言いづらいということもある。

 仲間でも隠したい秘密がある。


 ウェンリが隠している秘密がどんなものかは知らないけど、少なからずそれで僕達が敵になることはないとだけはしっかり心に持っていよう。


「トリスさんはウェンリさんとどういうご関係なんですか?」


「ま、行ってしまえば幼馴染だな。

 だけど、君達ならすでに知ってると思うがウェンリは何かと冷静で、そして強気な口調をしてるからどっちかっていうと姉弟に近い関係かもしれないな」


「ほな、姉帰って来てくれたことはトリスはんにも嬉しいことなんどすなぁ」


「そりゃ、俺達は獣人族ほどではないがそれなりに仲間意識は強いからな。

 それに俺も結構仲良かったと思ってる。

 だけど、仲間を連れてきても顔を見せないってことは......きっとまだ引きずってるんだろうな」


 その顔はウェンリの秘密について心当たりがある様子であった。

 ふむ、ウェンリの秘密はトリスさん達からすれば受け入れてる、もしくは悪くないと思っていることか......ってついつい気になって推察してしまうな。


 そんな話を続けていると一つの大きな木にやってきた。

 そこの扉をくぐっていくと幹の中に作られた螺旋階段をグルグルと昇っていき、やがて一つの部屋の前までやってきた。


 トリスさんはその扉をノックするとその部屋にいる人物に声をかける。


「長様、ウェンリのご友人方をお連れしました」


「あぁ、今行く」


 そして、扉を開けたのは杖をついたエルフの御年輩で、その人は自己紹介とともに僕達に告げた。


「ワシはこの森を統治する長のワングじゃ。

 唐突で申し訳ないが、一つ頼まれごとをして欲しい。

 それはこの森の奥におられるミッドレン様の様子を見に行って欲しいのじゃ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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