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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第83話 新たな仲間

 巨人族の伝統的な踊りも見て、宴もたけなわといったところで僕はちょびちょびとお酒を飲みながら隣で両手で顔を覆いながら固まっているヨナを見ていた。


「......大丈夫―――」


「見ないでください!」


「はい......」


 先ほどの踊りで酔いが少し覚めたのか羞恥心に悶えてる。

 どうやら先ほどの自分の痴態に顔を上げられない様子らしい。


「リツさんは......えっちな女の子はお嫌いですか?」


 なんて唐突にコメントしずらい質問を!?

 それでどっちで返答しても妙な雰囲気になるやつじゃん!


「返答が返って来ない......つまりはお嫌いなんですね!?」


「ヨナ、さてはまだ酔っているな?」


 ということにしておかないと、周りの視線が辛い。

 なんで僕が悪いみたいな視線が仲間達から送られなきゃいけないんだ!?


「律、勇気を見せる時だぞ」


「何に対して?」


 蓮がなんかわけわからんこと言ってる。

 はぁー、どうやらお酒を飲むときはある程度めんどくささを考慮しないといけないな。

 まぁ、前回からわかってたつもりなんだけどね。


 僕は立ち上がると「ちょっと歩いてくる」と周りに告げて膝上に寝ていたアイを抱えた。

 すると、服の裾をちょんと引っ張ってくる人物がいる。

 その方向を見るとヨナであった。


「あ、あの、私もご一緒してよろしいですか?」


「うん、いいけど......」


 というか、そんなうるうるした目で見られたら断れないよ。

 なんでそんなうるうるしてるのか知らないけどさ。


 僕はアイをミクモさんに預けると村を出て夜の砂漠を歩いて行く。


 砂漠は寒暖差が凄いともとの世界での知識ではあったけど、どうやらここでは夜は比較的に過ごしやすい温度である。


「相変わらず大きいですね......」


 しみじみと告げるヨナの目の前にいるのは鉱山を背負った巨大亀の頭がある。

 僕が亀の頭から寄生生物を引きはがしてからまるで起き上がる気配はない。

 でも、僕の<魔力探知>から魔力反応が消えてないので死んでいるというわけではないはず......たぶん。


「レオン.......」


「「!?」」


 ゆっくりと瞼が上がると同時に告げられた全く知らない名前の人物。

 いや、どこかで聞いたことがあるかも?


 その亀は次第に意識をハッキリさせてきたのか僕達を認識すると再び言葉を呟いていく。


「そうか......もうそんな世界はなかったな。助けられた。今回は世話になったな」


「寄生生物に乗っ取られてた時の意識はある......んですか?」


「ふふっ、無理に敬語にせんでも普通に話せばいい。

 所詮はもう朽ちるだけの老いたる身だ。もう長くはない。

 意識はあった。僅かにだけどな。

 だから、お主達が何をしようとしていたかわかる」


 僕は思わずヨナを見た。

 すると、ヨナも同じことを思ったのか顔を向けてみる。

 すなわち、状況が森の神殿のフェニックスの時と似ているのだ。

 わからないことをそのままにしておくのはむず痒い。

 思い切って聞いてみよう。


「あなたは何者?」


「なんだ? すでに勇気の神殿をクリアしておいて今更そんなことを聞くのか?」


「勇気の神殿......?」


 そんな名称初めて聞いた......いや、そういえば一度だけガレオスさんがそんな言葉を口にしていた。

 ということは、この亀はガレオスさんと何か関係があったりするのか?


「私の名前はラグラナ、力の神殿を司る守護神だ。

 ちなみに、以前お主達があった勇気の神殿の守護神の名はフォーレリアという」


「ラグラナにフォーレリア......どこかで聞いたことが......え、まさか!?」


 ヨナが何か気づいた反応を見せる。ちなみに、僕は全くピンと来てない。

 そんなボクの様子に気付いたのかヨナが説明してくれた。


「これは異世界から来たリツさん達からしたら馴染みの薄い神話の話ですが、この世界には四人の神がいたのです。

 その神の名が力の神ラグラナ、勇気の神フォーレリア、知恵の神ディアーナ、心の神スーリアというのです」


 えっと、それはつまり......?


「その神の一人と僕は話してるの?」


 なんだか最近にも魔神やらなんやらでだいぶ大きい話に関わってたなと思ってたけど、それよりも前に僕は神と会っていたのか。


 そんな僕の反応にラグラナは僅かに笑うと返答していく。


「ふふっ、別にかしこまる必要はない。

 だが、そうか......そう考えるとフォーレリアは敢えてお主達に自分の正体を伏せていたのかもな。

 特に、そこの少年」


「?」


「お主は異質な存在だ。くれぐれもこれからの旅は気を付けた方がいい」


「それはどう―――」


 そう言いかけた時、ラグラナの体が僅かに光始めた。


「どうやら時間が来たみたいだ。これで希望の種は植えられたようだな」


 正直、もっと聞きたいことはあった。

 だけど、この現象がもし前のフェニックスもといフォーレリアと同じような現象だとすれば、そうしないうちにラグラナも死んでしまうということ。

 それにもかかわらず、安らかな笑みを浮かべてるその顔を邪魔することは僕には出来なかった。


「そうそう、お主達に必要なものだ。私が消えた際、拾っておくといい。

 それとこの鉱山は私が消えても生き残る故、安心して村の皆に伝えるといい。

 では、またいつか。神の御加護を与えん」


 そして、ラグラナは光の粒子となって空に昇っていく。

 それは夜空の星々と重なって、まるでこれから星になるような光景であった。

 ラグラナとの短い会話の中で思ったことはたくさんある。

 だけど、今は安らかな眠りをお祈りするだけ。


 しばらくの間、僕はその光に黙祷を捧げると先ほどまで頭があった位置に何やら金色の装飾が施された棒の一部が置いてあった。


 それに近づいた瞬間、僕の<収納>の魔法陣から勝手に金属の棒が飛び出し、それと反応するように装飾のある棒も浮き上がって、空中で連結してみせた。


 眩い光を放つそれにそっと手を差し出してみると手の上にゆっくりと落ちてくる。

 これは―――


「もしかしたら残りの心の神様と知恵の神様に出会えば一つの何かが出来上がりそうですね」


「そうだね。それに神が意図して渡したとすれば、これは絶対に重要な何かになってくる」


 ガレオスさんにも他の人には見せるなって言ってたし。

 そう考えるといよいよ僕達は何に巻き込まれてるかハッキリさせなくちゃいけなくなったな。


「ひとまず、これについては後で皆の意見を聞こう。そして、今後の方針も決めよう」


「そうですね」


 ―――数日後


 ―――カンッ、カンッ


 軽快なリズムでハンマーが振り下ろされる音がする。それも一つではなく複数と。

 宴の夜から僕達は話し合い、一先ず今後の方針を決めた。

 それからは居心地が良くなったのかもう少しだけこの村に滞在していたのだ。


「―――というわけで、あたしも仲間に入れてくんない?」


 初めて入った鉱山でアイと一緒にメイファの採掘作業を付き合っていると他愛のない会話から突如としてそんな言葉を言われた。


 正直、あまりにも脈絡のない会話からの派生だったために驚いたけど、仲間になるか否かという議題に対しては特に驚きはない。


 というのも、僕と蓮がいない間の二週間ほどですっかりメイファは仲間の一員みたいになっているのだ。


 そんな雰囲気で僕は知らないからダメとも言えるはずがなく、つまりはもう既に勝手に仲間なのだ。

 ま、別に僕としてもメイファの人柄はすでに把握してるし特に断る理由はない。

 それに断れない理由がもう一つあって―――


「そういえば、康太とデキてるって噂あるんだけど本当?」


「はぁ!?!?」


 そう聞いてみると振り下ろすカナヅチを止めて赤らめた顔でこっちを見る。

 なんだろう割とガチっぽい?


「だ、だだ誰がそんな戯言を!?」


「ミクモさんだけど......」


「あの女狐!」


 あー、これはこれは。僕はもう把握しましたよ。

 さてはあなたはミクモさんにおもちゃにされてますね?


「お兄ちゃん、デキてるって何がなの?」


「あー、いわゆる恋仲のような二人のことを指す言葉だよ」


「なるほどなの。つまりはメイファお姉ちゃんとコウタお兄ちゃんは恋仲ということなの!」


「ち、違うから! 別にアタイはそんな......そりゃ巨人族みたいな体格でドワーフ以上の怪力はアタイの鍛造にはうってつけと思ったけど、別にそれだけで―――」


「ってことは、アイとお兄ちゃんもデキてるなの!」


「こらこら、僕達は兄妹だろ?

 それはそれとして、今のは大変天使でしたっ......!」


「おいこら! そこ! アタイを振り回しておいて和やかな雰囲気だしてんじゃねぇ!」


 とはいえ、噂の出所はミクモさんだし、ミクモさんも燃えなさそうな所に火をつけないというか。


「別にいいんだよ。うちは組織内恋愛禁止してないから」


「だ、だから違げぇって言ってんだろ!」


 むしろ、そこまで強く否定されると本気度が上がっていうというか。

 なんかメイファの反応が思春期の中学生が仲の良い女子のことで周りからからかわれてる反応にしか見えない。


「つーか、お前の方はどうなんだよ?」


「僕?」


「お前だってヨナとどうとか言われてんだろ」


「妙にカップリング多いなこの組織」


「アタイに聞くなよ。で、実際の所どうなんだ?」


 上手いこと話題を変えてきたな。

 とはいえ、どうと言われると......どうなんだろう?


 別に僕は恋をしたことがないというわけじゃないけど、今はそれよりも果たすべき使命感に駆られてるというか。


 僕は大切な人には幸せになってもらいたい。常々そう思っている。


 その言葉は裏を返せば犠牲になるのは僕一人で良いということでもあり、僕がそういう感情を持てば僕自身の破滅の道に周りを巻き込むということにもなる。


 それにこの気持ちはどの道どこかで割り切らねばいけないと思ってたんだ。

 なら、僕が答えられるのは―――


「ヨナは大切な恩人だよ。死にかけの僕を、僕達を拾ってくれた大切な、ね。

 だから、僕にとってヨナは恩人であり、幸せになるべき人なんだ」


「あんたは何もしないのか?」


「何もしないじゃなくて何もできないだろうね。

 僕が見てる先にはきっと......いいや、なんでもない」


「僕がいるかどうかもわからない」そんな言葉が口からこぼれ出そうな気がした。

 しかし、そんなあからさまな陰鬱なセリフを聞かせて仲間達を心配にさせるわけにはいかない。


「ま、少しずつ考えてみるよ。僕にとって彼女がなんなのか。

 現時点では恩人だけど、それが変わるのかどうか」


「......そうか。ま、ふとしたきっかけで何か変わるかもしれないしな」


「アイはどう思ってるなの?」


「大切な妹だな」


「それじゃ嫌なのー!」


「はい、そこ。イチャイチャしないで手を動かす」


 それからまた二日ほど経った後に僕達はドワルゴフを出発した。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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