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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第79話 リーダーは遅れてやってくる

―――ヨナ(主人格セナ)視点―――


「行くわよ! 皆!」


「「「「「「おう!」」」」」」


 そして、私達は巨大亀のもとへと走り出した。

 あの亀の一歩は非常に遅い。

 しかし、巨体過ぎるが故に移動スピードは思ったよりも遅くない。


 とにかく、この状況をなんとかするには亀の進行を遅らせる人と村の方へ避難勧告する人で分けた方がいいいみたいね。


「アイ、あなたの速度で村の皆に念のため避難するよう伝えてきてくれる?

 あの巨体じゃ絶対に見えてるだろうけど、私達の存在があるかどうかで気持ちの持ちようは変わってくると思うから」


「わかったなの! 今すぐ皆の所へ行ってくるの!」


 アイは全身に紫電を纏わせると誰よりも早く村の方へと駆け抜けていった。

 その姿を見ながらすぐに亀へと視線を移していく。


 それにしても、どうして突然起き上がったのかしら?

 鉱山の持ち主である亀に住む魔物は倒したはず。

 感謝こそされど恨まれる覚えはないわ。

 それとも鉱山で暴れたことを怒ってる?


「あぁ、全然距離が詰まってる感じがしない! どうするよあの亀!

 このままじゃアタイ達が正面に回り込む前に村に到達されちまう!」


「なら、どうにかして気を引くしかないわね。

 だけど、あたしの弓じゃ大した火力にはならないわ」


「残念やけど、ウチもやで。それにあの巨体の気ぃ引く魔力を込めるためにはより魔力の高める必要があるさかい走ってられへんわ」


 確かに、それにそれで魔力を高められたとしても今度は射程距離が問題になってくる。

 そもそもの話、どのくらいの火力ならあの亀に通じるかすらわからないしね。


 全力で攻撃して通じるかどうか......やる前から自信無くしちゃダメだろうけど、さすがにあの巨体相手には自信無くすわ。


 ドスン、ドスンと一定間隔で地面が揺れる。

 あの亀が歩くだけであの衝撃。

 まともに攻撃を喰らえばそれだけで死にそう。


 亀をどうにかしなければいけない。

 しかし、それに対する有効な手段が見つからない。

 そのせいか沈黙が流れる中、またもや彼が立ち上がった。


「薫、数秒だけ生物の成長速度と僕達の移動速度を同じにすること出来ない?」


「わからない。ただ何か策が思いついたんだったらやってみよう!」


 コウタがカオルに話を持ち掛けるとカオルは意見に同意して行動を始めた。

 自分の前方に種をバラまくと一瞬にして発芽、成長させて地面から二本の茎が伸びていく。

 それは走る私達の速度と等速で成長していった。


 その茎の葉にカオルとコウタがそれぞれ乗るとコウタはメイファに声をかけていった。


「メイファ、とりあえずありったけの火力が出るもん手持ちにない?」


「一つだけあるよ。といっても、さっきの目玉の時の残りもんだけど」


 メイファが手のひらサイズの箱をコウタに渡していく。

 それに魔力を流して開いていくと槍が出てきた。

 それは目玉に初撃を入れた際の槍みたいね。

 それをどうする気......まさか!?


「んじゃ、メンバーの中で一番の怪力の誇りを示させてもらおう!―――そらあああああぁぁぁぁぁ!」


 コウタは葉の上で助走を取ると自身も勢いで吹き飛びそうなほどに前のめりになって槍を投げた。

 それは高速で亀の顔面へと近づいていくと目の近くで直撃、爆発した。


「グオオオォォォォ」


「うしっ! 手応えあり!」


 コウタとカオルは葉っぱから降りると私達と同行していく。


「どうやら動きが止まったみたいね」


「こっちに意識が向いたな」


 ウェンリの言葉に全員が亀に警戒を向けた。

 亀はゆっくりとゴツゴツとした頭をこちらに向ける。

 その時、私達は信じられないものを見た。


―――ギョロ


 そう聞こえるほどに確かな動き。

 亀の頭の眉間の位置には第三の目があり、その目は先ほど戦った巨大目玉とそっくりだった。


「あいつ、まだくたばってなかったの!」


「アタイが斬ってやったってのにしぶとい奴だな!」


「ほんまにしつこいのんは好かんね」


「それに相手するのはどうやら亀だけじゃないみたいよ」


 ウェンリが指を向けた。

 その方向を見てみると私達の方を見ているのは亀だけではなく、亀の尻尾から伸びた五体の巨大な蛇。


 その蛇一体一体が十分なほどの災害レベルの巨体にも関わらず、それが亀とセットになってるとか......ははっ、ホント嫌がらせよね。


「皆、なんか不味い攻撃がくるかも!」


 亀は口を開けるとそこから咆哮の際の衝撃波を凝縮させた方な砲撃を行ってきた。

 それに対し、コウタが盾になるように前に出る。


「魔力障壁<五重の盾>」


 コウタが両手を伸ばすと自身の前に五つの魔力障壁を作り出した。

 亀の頭から放たれた砲撃はコウタの障壁を二つを容易く壊すと三つ目、四つ目と破壊していく。


「皆! 今のうちに早く!」


 コウタが必死に伝えてくる。

 そのことに思わず歯噛みした。

 けど、それでも進まないといけない。

 コウタを信じてるからこそ、前に足を踏み出さない踏み出さないといけない!


「行くわよ! 皆!」


 私が先導して走り出した。

 その直後、圧倒的な防御力を誇るコウタの盾を破壊して彼は吹き飛ばされていく。


 僅かにチラッと見ると口から血を噴き出す彼の姿が見えた。

 浸透系の攻撃だから彼の物理防御を無視したのかもしれない。


「攻撃来るぞ!」


 メイファの言葉にハッとすると尻尾の方から帯びてきた蛇の頭がシャーと大きな口を開けて丸のみせんと襲い掛かって来た。


 私はそのうちの一体を避けていくと怪力丸薬を噛んで大剣を持ちながら全開パワーで斬りかかる。


「っ!」


 しかし、それは蛇を攻撃することこそ出来ても、切断は全く持って出来なかった。

 刃が蛇の肉で止まる。

 そして、目の前で大きな口を開けた。

 そこには赤々と燃える炎が―――


「どいて!―――鉄扇斬火<火炎鎧>」


 瞬間、私はミクモに吹き飛ばされた。

 そのすぐ横では蛇の口から放たれた火炎放射がミクモを包んでいった。


「ミクモ! クソがあああああ!」


 私はハンマーを作り出すとその先端にリツから貰った<衝撃>の陣魔符と合わせて蛇の頭に叩きつけた。


 それによって蛇の頭は勢いよく吹き飛んで火炎放射は止まった。

 そのうちにミクモへ近づいていく。


「ミクモ、大丈夫!?」


「えぇ、いけるで。うちは火ぃ扱うさかいもともと火耐性は強いの。

 そやけど、ただちょい火遊びが過ぎたみたいね」


 ミクモの服が所々焦げていて、その失った衣服の一部から火傷した肌が露出してる。


「ふふっ、さっき助けてもろうたお礼ってことで」


「もうあんたは......それにそれはアイのおかげって言ったでしょ?」


「シャアアアア!」


「っ!」


 蛇が声を上げながら自重をそのまま活かしたようなプレスをしてくる。

 私は咄嗟にミクモを突き飛ばすと頭上から太陽光を遮るような巨大な頭に対して両手に剣を構えた。


「くっ!」


 ズドンと地面へぺしゃんこになりそうな重さが全身にかかる。

 膝を大きく曲げてなんとか耐えきったけど、ここからどうするか......。


 でも、今の一撃はあんたにとっても痛手でしょう?

 なんせ私は剣を盾にしたわけじゃくて、剣先を上に向けたまま受け止めたんだから。

 今頃顎下から深々と剣が刺さってることでしょうね!


「シャア!」


「っ!」


 その直後、別の場所で蛇の頭が地面に叩きつけられたかと思うとそのまま地面を沿って横薙ぎに振るってきた。


「がっ!」


 私は押さえつけられたまま動けず、その横薙ぎに攻撃をもろに受けてしまった。

 咄嗟に直撃するわき腹に剣を刺し込んだけど、火柱に水球といった風に全く持って無意味と分からされるように破壊された。


 私はそのまま地面の上を思いっきり転がっていく。

 そして、すぐに立ち上がれなかった。


 ダメージもそうだけど、砂漠という環境も相まって火傷しそうなぐらい熱い砂と遮ることのない太陽光が私の体力と精神を同時に蝕んでいったからだ。


 もとより目玉との戦いで連戦続き。

 僅かに顔を上げて他の皆を見てみれば同じように蛇に苦戦してる。

 他の蛇も水、雷、風、氷のブレスを放ってくるとか......ほんと嫌がらせみたいね。


 でも、こんな所で終わるわけにはいかない。

 私達が戦っていればきっとあの二人が帰ってくるはずだから!


「頑張れ、私! 今立ち上がらなくていつ立ち上がるのよ!

 もうとっくの前から泥臭くても生きるって決めたじゃない!」


 軋む腕を動かしながら、熱々の砂の上に手を置いて体を持ち上げていく。

 そして、気合で立ち上がると威勢で武器を構えた。


 怪力丸薬の効果もある。

 これが切れれば本当に役立たずになってしまう。

 それまでにせめて蛇さえなんとかしなければ!


 一体の蛇が私に気付いて瞬間的に噛みついてきた。

 それを避けると両手の剣を投げて、さらに槍を繰り出して手に持ち目へと突き刺した。


「シャアアァァ!」


 蛇が痛そうな声をあげる。

 すると別の蛇が私の攻撃の後隙を狙って口から水ブレスを放って来た。

 それと同時に別方向から一本の矢が飛んでくる。


 それは水ブレスと接触するとたちまち凍らせて防いでいった。

 チラッと矢の飛んで来た方向を見るとやはりウェンリだ。


「セナ、そこから離れて!」


 今度はコウタの声。

 その指示に従うままにその場から跳躍すると地面の下から蛇が思いっきり飛び出してきた。

 少し遅かったら完全に食われてたわ。


「さっきのお返しだ!」


 コウタは素早く飛び出した蛇に近づくと胴体に向かってハンマーを振り抜いて巨体を吹き飛ばした。


「拘束して―――アムラクサの棘」


 五体の蛇の頭にカオルの植えた植物のトゲトゲしたツタが絡みつく。

 それはかなりの強度を持っているのか蛇の動きを止めてしまった。


「今のうちだ! 同時に攻撃するぞ!」


 雄たけびに近いメイファの声が聞こえてきた。

 その声に皆が動き出していく。


 全員がボロボロに傷つきながら気力を振り絞って今にも立ち止まってしまいそうな足を止めないように動かしながら走っている。


 皆も同じ気持ち。それだけで力が湧いてくる。動け、私!」


「くらいなさい!―――鬼剣術<二極一刃>」

 

「燃え千切れ―――鉄扇斬火<円天火>」


「ぶった斬れろ!―――巨竜狩り(ジャイアントキリング)


「力を貸して―――雷風の逢引き(ルクトワード・ヴィレ)


「吹き飛べ―――重加鉄槌」


 私が両手に持った大剣をクロスして斬り裂き、ミクモが円形に作り出した炎の輪を蛇の頭に通してそれを狭めることで焼いて切断。


 また、メイファは魔道具の力をフルに活かして力任せに断頭し、ウェンリが雷と風の精霊を合わせて破壊力のある一矢で頭を吹き飛ばし、コウタは自重を重くして振り抜いたハンマーで地面をへこませるほどに押し潰した。


 それによって蛇の処理は出来た。

 しかし、その時点で私達は満身創痍に近い。

 加えて、予定では怯んでくれるはずの亀が全く怯まずにこちらに口を開けて砲撃の準備をしている。


 誰も動くことができない。

 もはやその場から離れる体力すら残っていないのよ。

 その時、私達の体に見覚えのある糸が絡みつき、強制的に射線へと外れた位置に移動させられた。


 さらに射線にもう一人の彼が立っていく。

 はぁ、ほんと遅いのよ。これは何か奢ってもらわないとね。


「ガアアアァァァ!」


 亀が先ほどコウタの防御を突き破った衝撃波のブレスを放ってくる。

 それに対し、彼は腰を深く落とすと抜刀の構えを見せた。


 瞬間、彼はそのブレスを斬ってそのまま放たれた斬撃は亀の口元を斬っていく。


「待たせてごめん。僕達が来たからもう大丈夫......なんちゃって」


 そう言ってリツは照れ臭そうに笑った。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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