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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第76話 鉱山の魔物#1

―――ヨナ(主人格セナ)視点―――


 「ここが鉱山とは思えなくなってきた」―――そんなメイファの言葉に同意しながら、正しく生物の体内にいるような気分で目の前の肉の繭を見ていた。


 天井や壁にいくつもの肉の筋が伸びていて、その中央にある繭で開く目は私達を凝視している。

 それは中央の一番の大きい目から様々な角度で私達を眺めている。


 一つ一つがギョロギョロと動き、正直滅茶苦茶気持ち悪い。

 これから戦う前にだいぶ精神が汚染されてる気がする。


「それじゃあ一番槍をやらせてもらっていいかな?」


 その時、右腕をグルグルと回しながら気合が入った様子のメイファは私達の前に進んで向かっていくと腰のポーチから小さな箱を取り出した。


 それに魔力を流したのか箱は変形していき、やがて一本の槍へと変わっていく。

 それを槍投げするように頭の位置まで持ち上げた。


「ねぇ、この鉱山で仲間が消えてるのってあんたの仕業なの?

 ダスティン、ロッコス、グラエラ、マストンおじさん、リーガスおじさん、アラバス爺まで」


「ギギギ」


 中央の巨大な目玉は嘲笑うように目を動かすと目尻から黒い液体を流していった。

 それはやがて人型に変形すると見たことある形に変形していく。

 あれはドワーフや巨人の人と同じ姿。


 顔や大きさが一人一人違う。

 もしかしなくとも食った人達を影の魔物として作り出したってことよね。

 こっちの琴線に余裕で触れて来るじゃない!


 その私の怒り以上にメイファは怒りを感じていたのか槍を握った手をプルプルと震わせて、僅かに浮かんだ涙をそのままにギリッとした目で睨んだ。


「あんまりアタイ達を舐めんじゃねぇよ。

 あんたは絶対にぶっ倒す!

 ふざけんじゃぇねよクソ魔物がああああぁぁぁぁ!」


 メイファは走り出すとその槍を思いっきり投げた。

 直後、槍のお尻の部分から炎が勢いよく噴射されていき、真っ直ぐ巨大な目玉に向かっていく。


 巨大目玉は空中を飛ぶそれに影の魔物が意味ないとわかるとすぐさま目から光線を放っていく。

 それは槍に直撃し、撃ち落された―――かに思った。


「喰らいな。まずは一発目だ」


「グギャアアア!」


 爆発で出来た黒煙からいくつもの小さな槍が飛び出しそれぞれが巨大目玉に向かっていく。

 どうやら一本の槍に複数の槍が搭載されたものであったようね。相変わらず凄い技術力。


 メイファの攻撃に油断していた巨大目玉に小さな槍が全弾直撃。

 その痛みにこの空間に耳がキリキリする高い音の叫び声が響いていく。


―――ギュイーン


「来るわよ! 全員回避!」


 巨大目玉は自身の四方八方にぶら下がってる目玉から一斉に光線を放っていく。

 それらは光であったり、水であったり、炎であったり、風であったり、雷であったりととにかく多種多様な属性をぶつけてきた。


「『こっちを見ろ!』」


 コウタが<挑発>で敵視を取ろうとするがそれらの光線はコウタだけに向くことはなく、全体を蹴散らすように動いていく。


「ダメだ、おいらの魔法じゃ敵視が取れない」


「いや、考え方を変えるべきね。周囲の目玉はそれぞれが独立した個じゃない。巨大な目玉の一部なのよ」


「なら、まずはそれらの目玉を全て破壊すべきね」


 ウェンリの言葉にミクモが返答するとカオルの名前を呼んだ。

 それに対し、カオルは「うん」と返事をするとまるでそれ以上の言葉は不要とばかりに行動に移した。


肉食直物の蔦(グラトニーアイビー)


 カオルは手の指に植物の種を挟むとそれらを一斉に空中にばら撒いた。

 そして、それらに手のひらを向けると魔力を流していく。


 すると、それらは一気に成長し、肉の地面に根を生やしていくと成長過程で伸びていったツタが天井や壁にくっつく肉の筋に絡みつき引きはがしていく。


 そして、植物の先端は貝の口に牙を生やしたような感じになり、近くの目玉を喰らっていく。うわぁ、想像以上にえげつない。


「さて、行くで、ウェンリちゃん!―――鉄扇斬火<狐火斬刺>」


「力を貸して氷の精霊―――氷凍弾弓」


 ミクモが空中に火球をたくさん作り出し、目玉に向かって一斉射撃。

 それに合わせるようにウェンリが氷の矢を連射していき、それは壁や地面、天井を跳ね返り凍り付かせながら目玉を射抜いた。


「グギャアアア!」


 再び叫ぶ巨大目玉。どうやら効いてるみたいね。

 でも、それは影の魔物を動かすほどの余力はある。

 もうすぐこちらにやってくる。あれをまともに相手するのは不味いけど、対処しなければ面倒になる。


「アイ、私達であの影を潰すわよ。くれぐれも捕まっちゃ駄目よ」


「......」


「アイ?」


 アイの方を見てみると何やらキョロキョロしていて、正確に音を捕らえようと必死に耳を動かしている。

 そして、何かがわかると私に叫んだ。


「セナお姉ちゃん、今すぐミクモお姉ちゃんをその場から吹き飛ばして!」


「え―――わかったわ!」


 私はすぐに目の前の影の魔物から視線を外し、すぐ近くにいるミクモへと走った。

 アイは全身に雷を纏わせてウェンリの方へと向かっていく。


 アイが何を捉えたのかはわからない。

 でも、アイが必死にこの状況で捉えたんだから必ず意味があるはず!


「ミクモ、失礼するわよ!」


「え!?」


 私はミクモにタックルして吹き飛ばすとその直後、ミクモの足元からはギザギザした牙をつけた口が現れ、まるで食いちぎるのように飛び出してきた。


 この魔物......! 鉱山に入った人達を食った割には口がないと思ったらそういうことね!


 口がそのまま追いかけて来る。

 私達を喰らおうとしてる。

 そんなこと当然させるわけないじゃない!

 私は手から矛を取り出すとそのまま横薙ぎに振るって斬り飛ばしていく。


「おおきに。助かったわ」


「お礼なら後でアイに言うべきね」


「おい、早く立ち上がれやばいのが来るぞ!」


 メイファの言葉にハッとして目の前を見るとまだ残っている目玉と巨大な目玉が号泣するように黒い涙を流していた。


 どうやら私とアイが対処するはずだった影の魔物はメイファとコウタが蹴散らせてくれてみたいだけど、確かにこれは不味い!


 黒い液体はまるで濁流のようにして一気に押し寄せてくる。

 それはまさに影の魔物のもとと言ってもいい。


 あの影は触れると酷い疲労感や虚脱感を感じさせ、それに触れ過ぎればもはや立ってることすら危うくなるわ。


 すぐに蹴散らしたいところだけど、波で押し寄せてくれるそれをどう蹴散らせばいいのか。

 ただの水であればミクモとウェンリで蒸発させることも出来るでしょうけど―――


「ちょ、あんた何やって!?」


 その時、コウタが前に出た。

 しかも、何か対策を施したような感じではなく、ハンマーを肩に担ぎながら堂々と。


「おいらは皆の盾だから。こういう時に前に出ないとね。それに―――」


 コウタはハンマーを大きく頭上に掲げ、全身に魔力を流していく。

 コウタの役職<重壁士>は自身にかけた魔力に合わせて防御力と僅かに“体重が増えていく”という特殊な魔法<守りの構え>というものがある。


 それは本来体重が増えたとしても些細なもので、他の誰からも全く気付くことがないのが普通なの。

 でも、彼は錬魔によって底上げした魔力で他の人からもハッキリわかるように変化が起きる。


 コウタの足元だけがどんどんとめり込んでいく。

 増えた体重によって地面の耐久度を上回っているから。

 そして、その重さとは―――同時に力の強さにもなる。


「ふん!」


 コウタは地面にハンマーを思いっきり叩きつけた。

 その瞬間、()()()()()()()()


 コウタが肉の地面を叩いた衝撃で振動が起き、地面を伝ってやってきたそれで打ち上げられたの。


 また、それはコウタの目の前までやって来ていた影の波も同様で、それはまるで板のように地面から残らず浮いている。


 その時の光景はハッキリ言って目が白黒した。

 思わず周りに目線を移してみたけど、皆似たような表情で少し安心したけど。


 そんな中、しっかりと地面に固定された康太はそのハンマーの柄を両手で握り、体の側面を向けていく。


「生きるために相手を食べる。それは自然のことだから怒ることじゃない。

 だが、おいらは許せないのは人の悲しみを嘲笑うかのようなお前の態度だ。

 だから―――この場で必ずお前を倒す!」


 コウタは豪快にフルスイングした。それは影の波の目の前で盛大に空ぶったけど、どうやら狙いはそのスイングによる風圧らしい。


 コウタだからこそできるその風の壁は影の波を押し返し、そのまま巨大目玉に思いっきり浴びせ返してやった。


 その瞬間、コウタはそのまま巨大目玉に向かって走り出すとそれがくっついている肉の筋に抱きついた。


「ふぬぬぬぬっ!」


 コウタは顔を真っ赤にするほどに引っ張っていくとやがて下の筋が千切れた。

 その瞬間、巨大目玉からとてつもない悲鳴が聞こえてくる。


「完全に引きはがしてやるから覚悟しろ!」


 そして、コウタは天井にくっついている筋も引きはがそうと引っ張ったその時、私はコウタの近くの壁が僅かに盛り上がってることに気付いた。


「コウタ、そこから離れて!」


「っ!―――ぐっ!」


 突如、拳の形をした巨大な肉がコウタを殴って吹き飛ばした。

 それに思わず動き出そうとした時、なぜか片足が地面から動かない。

 思わず見てみると足に肉の輪が繋がれていた。

 しまった―――


「くっ!」


 それは思いっきり私を振り回していく。

 うっ、遠心力で頭に血が上ってくる。

 それにコウタの行動に同じく注意力が散漫になってた皆も同じように振り回されてる。


「がっ!」


 私はそのまま地面に背中から叩きつけられた。

 他の皆も壁や地面に叩きつけられたようでバラバラの位置にいる。


 くっ、思ったより重たい一撃をもらったわね。

 錬魔の防御強化でもってしても内臓が傷ついたみたい。

 口に血の味がする。


 そんな私達に攻撃してきた巨大目玉は他の残ってる目玉をまるで回収するように移動させていくとやがて巨大目玉に隣接するように小さな目玉が並んだ。

 かなりビジュアルが気持ち悪い......。


 加えて、それは四足歩行になるようにて足をちょこっと生やすと天井にくっつき、天井や壁に残った肉の筋は形を手に変えていく。

 どうやら第二ラウンドってところね。


「かはっかはっ......ふっ、いいわよ。相手してあげる」


 そして、私は回復の丸薬をかみ砕いた。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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