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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第74話 鉱山突入#3

―――ヨナ(現在主人格セナ)視点―――


 鉱山に入ってからかれこれ数時間、鉱山に住む魔物の手下もしくは分身体と思われる敵を倒しながら進んできたけど、目の前程の異常性はまだ見たことなかったわ。


 まるでその場所だけ重力が消えてるようにふわふわと漂う瓦礫の数々。

 それが足場のようになっていて、螺旋を描きながら上に続いている。

 恐らくこの瓦礫の足場を使って上に行くんだけど......


「落ちたら一巻の終わりだね」


「そうみたいね」


 カオルの言葉に頷く。

 下に広がるマグマはぐつぐつと煮えたぎっていて、奈落の底が赤く光っているのだ。


 加えて、何百メートルと高い位置にいるにもかかわらず酷い熱気を感じて、ほんと薄着になりたい。

 私は少し着物の胸元を広げて肩を露出させていくとヨナか焦ったような言葉がかけられる。


『な、なにやってるんですか!?』


 何って少しでも体を涼しくしてるのよ。

 それに今更何よ? 前からやってたじゃない。


『やってましたが! 何も男性がいる場所でそんな行動しなくても!

 ほら、気を遣って目を逸らしていますよ!』


 気を遣ってくれてるなら良いじゃない。

 別に誰かにアピールしてるわけでもない......別にリツがいるわけでもないのに。


『なんで言い直したんですか!? モラルが大事だって話です!』


 諦めなさい。今はこの私が体を操ってるんだから。

 そう言うと悔しそうな声が聞こえて来るけど、それを無視して周りを見てみる。

 正直、一番色気むんむんなのはミクモだと思うけど。

 あんな姿私がいた国にも遊女としてたくさん存在してたけど。


「さて、お目当ての場所はきっとこの先だから慎重に行くわよ」


「あ、少し待って」


 そう言うとカオルはウェンリへと声をかけていく。

 すると、ウェンリも「良いアイデアね」と賛同した様子を見せると何やら動き始めた。


 カオルは地面に何かの種を埋めるとそこから巨大な花を咲かせていく。

 そこにウェンリが何か細工をすると花の中心からミストが噴射されていった。


「わぁー、涼しいの!」


「こらええわね。冷たおして気持ちいわ」


「皆、熱そうだったから。これなら少しでも楽になるかなって」


「とかなんとかいって実はミクモの格好に気が散ってしょうがなかったんじゃない?」


「ち、違うし!」


 コウタに問い詰められるとカオルは顔を赤らめてそう言った。

 でも、その反応の時点で言い逃れ出来てないし、それに―――


「ふふっ、そうならそう言うてくれたらええのに。後でたっぷり独り占めさしたるさかい」


「違うって言ってるでしょ!」


 ミクモのS気センサーに捉えられてしまったようね。

 彼女はどうにもカオルをからかった時の反応が楽しいみたいね。


「イチャイチャは全てが終わったら好きにやればいいわよ」


「イチャイチャしてないし!」


「いつもこうなのか?」


「そうね」


「違うから!」


 カオルが必死にメイファに言い訳しているのを他所に私は近くの瓦礫に飛び移っていく。

 瓦礫は思ったように頑丈そうね。

 これなら全員が乗り移っても問題なさそう。


「大丈夫よ。渡ってきなさい」


 私の掛け声で全員が飛び移ってくる。

 全員が集まったことを確認すると再び次の瓦礫へ。

 それを何回か繰り返していくと周囲に変化が起こった。


――――ゴゴゴゴゴゴ


 聞こえてくるは地鳴り。

 空中に浮いた瓦礫にいるせいか振動の影響は受けないけど、鉱山自体が微振動しているようにも感じる。


 また地震? いや、これまでの道中でのことを考えるとこの鉱山にいる魔物の本体が何かしてると考えた方が良さそうね。


 そう思っていると周囲の壁の一部が隆起し始めた。

 それは山のような円錐状の形をしていて、その頂点は火口のような穴が開いている。


 その形をしたものが多少間隔を空けながら次々と同じように隆起していく。

 そして同時に聞こえてくる叫び。


――――グオオオオォォォォ


 耳を劈くような爆音で手で耳を抑えても鼓膜が潰れそうな感覚に襲われる。

 聴覚にガンガンに響き渡り、もはや立ってることすら難しい。


 うるさい! うるさい! うるさい! なんなのこの音は!

 体の奥底まで震えさせるかのような感じでまともに動けない!

 これって魔物の声!?

 でも、叫び声というかどこか痛みで叫んでるような感じにも聞こえなくもないけど!


 その声は十数秒間続き、声が収まった頃にはもはやその声だけで皆だいぶ疲労していた。

 四つん這いの状態になっている私も両腕が小刻みに震えてる。


 だけど、私よりも答えたであろう人は獣人のミクモとアイ、そして聴力が良いとされてるエルフのウェンリでしょうね。


「大丈夫だった?」


「え?」


 私がウェンリに声をかけてみるもまだちゃんと正常に聞こえてないのか聞き返してくる。


「耳は無事?」


「あ、えぇ......なんとかね。正直、耳がもげるかと思ったわ」


「そっちは?」


 目線を移していくとアイが寄り添うようにしてミクモに抱きついて手で耳を抑えていた。

 そんなアイを抱えるようにしてミクモはたた耳をぺたんとたたんでいただけであった。


「ミクモ、あんたそれで大丈夫なの?」


「いける.....ちゃうわ。正直、平衡感覚グラグラしてえらい辛い。

 そやけど、それ以上にアイちゃんはもっと辛い。

 なら、おねえとして守るのんは当然やろう?」


「悪いわね。一人押し付けるような形になっちゃって」


「ふふっ、気にしいひんで。こう見えても頑丈やさかい」


 そんな私とミクモの話を聞いてたのかカオルとコウタも参加してきた。


「とはいえ、もしかしたらどうにかなったかもしれないんだ。

 僕はリツから<防音>の魔法陣を習ってるからね」


「それならおいらだって習ってる。

 せめて陣魔符のような形にして用意しておくべきだった」


「仲間想いで助かるわ。なら、それ次に活かしたらええ。そうやん?」


「そうだね」


「なら、カオル、植物の葉っぱを出してくれよ。それを代用しよう」


 そして、カオルとコウタは早速<防音>の陣魔符の作成に着手し始めた。

 そんな光景を見ながらミクモに声をかけていく。


「あんた、本当に良い奥さんね」


「男は立てるものやさかいね。それに寄り添い、支え、時には引っ張ったるちゅうのが人生のパートナーたる妻の役目。

 これ、良妻狐おねえのアドバイスやで」


「つまり、花嫁修業にはミクモを頼ればいいわけだな!」


「そないなこと」


 突然横からメイファが割り込んできた。

 なにやら感心した様子で頷いてるけど、何? あんた、相手でもいんの?


―――キュイン


「「っ!」」


 その時、ミクモとウェンリが何かに気付いたように目線を壁の方に向けていく。

 その目線はそれぞれ違ったけど、目が先ほどの和やかな空気の時とは違っていた。


「どうやら私達がここに来るのを待ってたみたいね」


 壁に無数にある山のような突起の先端から目玉のついた星形の物体が体を回転させながら空中をふわふわと漂っていく。


 それだけじゃなく、蛇のような眼玉を先端とした長い物体や目玉から羽を生やしたものなどおおよそ五十センチほどのもの、長ければ百五十センチほどのものまで大小さまざまな形をした魔物が次々と溢れ出てくる。


「なんか目玉お〇じみたいなのが大量に出てきたんだけど。星形とか完全にヒト〇マンだし」


「で、確かあの目玉ってやばかったような......」


 カオルとコウタの焦りの声が聞こえてくる。

 そして、その予想が私にもわかり、それが的中するように私達を囲む周囲の無数の目玉は光を集め始めたのだ。


「皆、急いで立って! さっさとここを駆け上るわよ!」


「アイちゃん、動くで? いける?」


「う、うん......アイは頑張るって決めたの。

 そして、お兄ちゃんにいっぱい褒めてもらうの!」


「よっしゃ、その意気だぜ、アイちゃん! アタイもまたいい所見せないとな!」


 メイファは気合を入れたように懐から小さな筒を取り出すとそれに魔力を込めて空中に放り投げた。

 それはその場で立体変化すると四体の空中に浮かぶ魔道具を作り出した。

 その物体にコウタが反応した。


「それってもしかしてドローンか?」


「どろーん? まぁ、なんかわからんけど、似たようなものがあるみたいだな。

 これは空中にいる敵を自動で迎撃してくれるもんだ」


 そして、その魔道具......ドローンでいいや、それは私達の周囲に浮かぶ目玉に火炎放射、風の斬撃、水の弾丸、雷の放射とそれぞれが違う魔法で目玉を撃退していく。


「やるじゃない」


「あぁ、そうだろ! だが、これには欠点があって―――圧倒的に射程が短い!

 範囲は起動者のあたしを中心に半径五メートルほど。

 なんで、その距離以外の今も無数に取り囲んでいる奴らには無力だ!」


「なにそれ、褒め損じゃない!」


「ってことで、急いで駆け上れええええ!」


 メイファが大声で叫ぶとともに次の瓦礫へと昇っていく。

 その後に続くようにして移動した直後、周囲から一斉放射された光の砲撃が先ほどまでいた瓦礫を木っ端みじんに消し飛ばした。


 そして、その砲撃はそのままあたし達の後を追ってくる。ちょ、それは反則じゃない!?

 加えて、私達が乗る足場の瓦礫の強度が低いのか一人目が乗った時点で崩れ始めていく。


「これ、マジでアタイ達やばくない!?」


「えぇ、そうね。このままじゃ辿り着くまでに私達が終わりそうよ!」


――――グオオオォォォ!


 その瞬間、再び鉱山に響き渡る謎の声。

 その声に足が止まる―――ことはなかった。

 先ほどのカオルとコウタが即興で作ってくれた陣魔符のおかげで助かったわ。

 でなければ、今頃足場を失って一直線よ。


 それにこの叫び声でなぜか周囲の目玉の動きも止まった。今のうちにいくしかない。


「カオル、命預けたよ」


「!......わかった」


 声が終わり再び目玉が動き出したその時、コウタ一人だけが反対側へ走り出し、消えた瓦礫の方へとダイブした。な、何やってるのよ!?


「漢、康太! 勇気を見せろ!―――<挑発(ヘイトショック)>」


 コウタがマグマへと真っ逆さまに向かいながら<挑発>で目玉の注意を引き、彼を追うように目玉が後を追っていく。


「カオル!」


「オーケー! 皆、捕まって!」


 カオルは近くなった天井に向かって手のひらから大木程のツタを伸ばし、突き刺していく。

 そのツタに私達はしがみつくように飛び移ると彼はさらに康太へとツタを伸ばした。


 コウタがそのツタを掴むと一気に引き寄せて私達の近くへ、目玉は未だに真下に集まっている。

 なるほど、やりたいことがわかったわ!


「ウェンリ、ミクモ、アイ、メイファ、手伝って!」


「「「「任せろ!」」」」


 そして、私は上限いっぱいに空中に剣を作り出した。

 この後も考えるとおおよそ十本が限界ね。


 ウェンリはツタに支えられながら風の矢を番え、ミクモは狐火をばらまき、アイは爪を尖らせるように手を構え、メイファは球体の魔道具をこれでもかとばら撒いた。


「放て!」


 私の合図に空中から剣が降り注ぎ、狐火が舞い降りて、その狐火を不規則に動かすように風の矢が拡散して発射され、アイの指先から雷撃が落ちていき、球体は目玉の近くを通っていくと爆発を起こしていく。


 それらの一斉攻撃はコウタの機転と勇気のおかげでまとまった目玉の全てを処理することが出来、そのうちに私達は一番上まで登っていった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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