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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第72話 鉱山突入#1

―――ヨナ(現在の主人格セナ)視点―――


「ここだよ。普段アタイ達が鉱石を回収してる鉱山は」


 ついに鉱山に到着していざその目的の場所を見てみるとなんだか普段見るような山とは大違いね。

 というのも、目の前の山はなだらかというよりじゃ全体的に土石で作られたような草木一つのないみためだから。


「ここで大勢の人達が失踪してるということだったわね?」


「あぁ、ここに入って人は誰一人として戻って来てない。覚悟の準備は良い?」


「問題ないわ。そんなものとっくの昔に決めてるもの」


 一応周りの顔を見てみても誰一人としてそこに恐怖するような顔はなかった。

 もしあるとすれば、私のもう一つの人格のセナぐらいかしら。


『しょうがないじゃないですか。やっぱり緊張するんですよ!』


 別に責めちゃいないでしょ。

 ただいずれはこういう場面に一人で向き合う機会があるかもだから私を通して慣れておきなさいってこと。


『大丈夫です! その時はまた変わってもらいます!』


 はぁ、前の神殿で頑張ったのは一体なんだったのやら。ま、徐々に頑張りなさいってことよ。


「それじゃあ、行こうか。途中までだったら案内できる。

 けど、それは今回みたいな騒動が起きる前の話だから、いつ鉱山の魔物が襲ってくるかはわからない」


「安心して、それぐらい皆自衛能力があるわぁ。アイちゃんだけは一応皆で見ときまひょ」


「アイも大丈夫なの! お兄ちゃんが別の場所で頑張ってるならアイも頑張るって決めたの!」


「それは良い志ね。でも、アイ、頑張ることは危険に立ち向かうという意味ではないのよ?

 アイは私達のパーティでも大切な存在。

 それにアイちゃんはこの中じゃ最速の足をしてるからいざという時の伝令役としても必要なの」


「アイはまた一人になるの......?」


 アイが思わず悲しそうな声で告げる。

 しかし、それはアイにとっては当然な反応なのだろう。

 なぜならそれはアイにとって村で起きた悲惨な出来事の再来とも言えるから。


「大丈夫、なんたっておいら達はその村の悲劇を避けた律の仲間だよ」


「うん、もうあんなことを起こさせないために強くなったんだ。

 だから、アイちゃんも僕達のことを信じて」


「......わかった。必ず絶対に万が一にも怒らないと思うけど、起こった時には村のおじちゃん達に伝えてお兄ちゃん達を呼んでくる」


「それでいいわ。よくわかってるじゃない」


 私はアイちゃんの頭を撫でていく。

 完全に不安を拭えた様子ではなかったものの、アイちゃんの中でもケジメが付いたようだ。


 そして、メイファが先導する形で私達は鉱山の中へ入っていった。

 薄暗い洞窟が続く中に道を照らすように壁に魔光石のランプが使われてる。

 すると、メイファが少し歩く速度を落としてくると私の横に並んで話しかけてきた。


「気にしないようにしてたけど、やっぱり気になるから聞くことにする。あんた達に昔なにがあったんだ?」


「そうね。ま、隠すようなことでもないし」


 それから、私は村で起きた全てを話した。

 リツ達と出会い、村で暮らし、遺跡を攻略し、その後に村が襲われたことを。

 全ての話を聞き終えたメイファは何か納得したように何度か頷くと口を開いた。


「なるほど、あんた達がアタイ達の問題を解決したがるわけだ」


「別にそういうわけじゃないわよ。

 ここが神殿でもあると聞いてからはここを攻略することが目的となってたわけだし。

 あくまでそのついでよ」


「別についででもいいさ。

 アタイ達にとっては恐らくあんたらは希望の光だろうよ。

 少なくともアタイにはそう感じる」


「考え過ぎね。私達はいざとなれば邪道と呼ばれる方法でもって私達が救いたい人達を救う。

 そういうのはちゃんとした勇者という存在に言うべきよ」


「なら、アタイは余計に言いたくなるね。なんせ勇者よりもダーク勇者の方が好きだから」


「あっそ。好きにすれば―――敵の気配!」


 突如として前方から魔力反応した何かが近づいて来る。

 そして、目の前に現れたのは子供ほどの大きさのゴーレムであった。

 なんだか随分と小さいわね。

 それに侵入者排除の先兵かと思いきや一体だし。


「ねぇ、あの一体アタイに任せてもらっていい?」


「え、別にいいけど」


「さっきあんたらに実力を見せて貰ったけど、アタイもちゃんとした実力を見せておこうかなって」


「それなら村長との決闘の時に散々見たけど」


「いいから、いいから」


 そう言ってメイファは腰のポーチにいくつもついてるポケットから一つの手に押さまるような正方形の箱を取り出すとそれに魔力を込めていく。


 その瞬間、その箱は一気に膨張、変形していきメイファの身の丈ほどのハンマーになった。

 あの大きさからどうなったらその質量に至るのよ。

 しかし、なんか嫌な予感がするわね。

 一応、カオルに目配せしておこう。


「んじゃ、ぶっ潰れろ!」


 メイファは勢いよく飛び出していくとそのゴーレムへ叩きつけていく。

 その瞬間、ゴーレムはバラバラに弾け飛んだ―――


『侵入者確認。殲滅へ移行』


「へ?」


 直後には砕けたゴーレムの破片がメイファの目の前の空中で組み合わさり、砲台のような形になるとそこへ高圧縮の魔力をチャージし始めた。


「皆、回避!」


 私の声と同時に射線に入らないように全員が避けていく。

 メイファに関してはカオルのツタで脇へと寄せた。


 瞬間、通路のど真ん中にエネルギー砲が通り抜けていく。

 私くらいで死にはしないだろうの威力。

 ま、つまりは普通の人ならまず間違いなく即死レベルね。


 私は撃ち終わり直後を狙ってそのゴーレムに近づくと手にレイピアを作り出し、砲台の中へと剣先を突っ込んでいく。


 ゴーレムを貫通して飛び出した剣先にはコアらしき球体が串刺しになって出てきた。

 再び変形する様子がないところから恐らくこれで倒したことになるわね。


 さっきは破壊されることがわかってコアだけを緊急離脱させたって感じだったんでしょう。

 そして、コアさえあれは復活できると。


「これで大丈夫みたいよ。良かったわね、五体満足で」


「助けてくれてありがとう......完全に大丈夫だと思ってイキりました」


「なんとのうこの鉱山での死因の一つが垣間見えたわ」


「実力差を見誤ったってところね」


「ウェンリお姉ちゃんの言う通りなの! 調子乗る、ダメ、絶対! 死亡フラグなの!」


 メイファがアイに怒られてる。

 完全に頭が上がらないみたいね。ま、自業自得よ。


「さ、ここで時間かけるつもりはないわ。さっさと―――ってカオルどうかした?」


 カオルが自分の手を見ながらにらめっこしてる。

 誰も先ほどの攻撃は当たってないはずだけど......もしかして何かに気付いたのかしら?


「いや、大したことじゃないけど、さっきツタでこの鉱山の地脈に干渉した時、生物特有の魔力がしたんだ」


「ん? それはメイファが言ってたことじゃないのか? この鉱山には魔物がいるって?」


「そうなんだけど......ごめん、まだ意見がまとまらない。わかったらまた言うよ」


「ふふっ、気にせんでええわ」


「そうね。まだ鉱山に入ったばかりよ? これから情報はもっと集まると思うわ」


 そして、私達は鉱山の道を歩いて行く。

 結構広くトンネルを掘ったのか私達が三、四人横に並んでも空きが出来る程度には広い。


 また、先ほどのゴーレムの警告音とも呼べるものが引き金となったのか進むたびに四つ足、浮遊型、擬態型と様々なゴーレムが現れた。


 しかし、共通してよく話や物語で聞くような大きさのゴーレムではない。どれもが子供ぐらいのサイズだ。


 それから数分後、この鉱山における違和感に気付いたのはアイとミクモの獣人二人であった。


「ん?」


 アイがそう反応しながら耳をピクピクと動かしていく。音の出所を探すように右へ左へと。


「ミクモお姉ちゃん、心臓みたいな音がするの」


「そやな、ウチにも聞こえるわ。方向は右斜めからみたいね」


「心臓の音?」


 アイの言葉に思わず尋ねてみる。

 てっきりアイが表現として一番近しいものを言葉で発言したと思ったけどどうやらそうではないみたい。


「まるで胸に耳を押し当てたかのようにハッキリとドクンドクンちゅう音聞こえんねん。

 ウチ一人なら勘違いとも言えるかもしれんけど、獣人二人いて二人とも聞こえたならそら勘違いちゃう」


「そう。となると、この先にゴーレムの元凶があるかもしれないわね」


 二人の意見を参考にその方向へ進んでいくとゴーレムだけではなく、影で出来たような全身真っ黒で揺らめく生物の形をした何かがいた。


 魔物とは名状しがたいそれは狼だったり、ワシだったり、蛇だったり、はたまたアリ、カマキリ、クモと様々な生物の形をしたものが存在。


 加えて、その場所に近づくたびに瘴気が空間を覆っているように薄暗く淀んでいる。

 心なしか息苦しさも感じてきたわ。


「皆、戦闘準備よ。一斉に蹴散らすわよ!」


 そして、コウタが敵を引き付けると私とメイファ、アイが前線に出ていく。

 そのサポートとして中距離にカオルとミクモが狐火と植物で攻撃し、合間を縫って遠距離のウェンリが正確な狙撃をしていった。


 その影の何かはやはりというべきか攻撃しても実体はなく、煙のように揺らめいて消えてしまう。

 しかし、復活する様子はないのでいつまでも戦闘を続けさせられるというわけではなさそうね。


 でも、倒した影の何かは私達の体に纏わりつくように周囲を覆っていく。

 その度に力が上手く入らなくなり、普段ではありえないほど息切れが早い。


 えぇ、認めるしかないわ。どうやらあの影の何かは単体の攻撃力はほぼないと言ってもいいけど、倒すたびに体に纏う影が増えて、その影は私達にデバフ効果を付与していく。


 今はまだなんとななるけど、あまり長く戦闘していると武器を振り回すどころか疲労感で立ってることすら辛くなるわね。


「お前達、大丈夫か?」


 ウェンリが前線の私達を心配そうに声をかけてきた。それに私は答えていく。


「まだ大丈夫よ。でも、あまり長くは続かないからさっさと終わらせるわ」


 そして、私達は一部崩れたように穴が開いた場所を除くとそこには天井と地面を繋ぐような肉の繭があった。

 加えて、その繭はグニャっと嫌な肉の音ともに巨大な一つ目を開けたのだ。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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