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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第68話 不可解な行動

―――ヨナ 視点―――


 その日の夜、私達は一室に集まると情報を共有していきました。


「とりあえず、こちらとして得られたものはないですね。

 魔道具に詳しい方に当たってみたものの、砂嵐の方はどうにもならないみたいです」


「そう。なら、あたし達の報告をするわ。

 実際に現場を見に行って規模を確認してきた。

 時間は少しかかりそうなものの、リツの魔法陣講座や錬魔による魔力量の底上げが出来たおかげか何とかなると思うわ。

 とりあえず、現状で出来る程度の魔法陣の設置をしてきた」


「そうですか。なら、それまでロゴフさん達には動かないでもらいましょうか」


「ん? そっちで何かあったの?」


 そう聞いてくるカオルさんにミクモさんが答えていきます。


「じっとしてることに痺れを切らしたのか救助隊を編成して鉱山へと向かうらしいわ。

 そのついでに、枯渇し始めてる鉱石を取ってくるみたいで」


「そうなんだ。だけど、未だ鉱山の中に仲間がいると思うと心配だよね」


「だな~。せめて別に鉱山があれば良かったんだけど」


 そのコウタさんの言葉にふとロゴフさんの話を聞いた後のアイちゃんとミクモさんのおかしな様子を思い出しました。あれは何かを隠しているような感じでした。


「砂嵐を鎮めるための魔法陣ってどないなの?」


「別に大したものじゃないわ。ただ土と風の精霊に働きかけてアリジゴクと砂嵐を消してもらおうとしてるだけ。

 ただ精霊は魔力体で、精霊による魔法の行使は自身の体を消費することになるから、私が魔法陣を用意して代わりに使う魔力をそこに置いておくだけよ」


「あんな砂の上じゃわかりずらくならないの?」


「大丈夫だよ。作る魔法陣自体はとても簡単だから。数分もかからないよ」


 あれ? だとしたら、先ほど魔法陣を少しでも作っておいたってのはどういう意味でしょう?

 一気に作れてしまうならもう既に「魔法陣の設置をした」と言っても良かったでしょうに。


 いや、もう少し深く考えてみましょう。

 なぜわざわざ一気に作れる魔法陣をわざわざ作りかけでやめたのか。


 そもそもこの魔法陣は自然発生という線と誰かによる人為的な線という二つの見方をしていたはず。

 となれば、作りかけをわざわざ置いたのはもしその砂嵐が人為的なものである場合、こちらにはそれをどうにかする手段があると示すことにもなる。


「なるほど、罠を張ったんですね」


「あぁ、その通り。現場でウェンリがその砂嵐を見た時の最初の一言目が『この砂嵐は全てが不自然だ』って言ってたからね。

 だったら、おいら達はそれに対処する前に罠を張って根本的に処置しようかと思って。

 犯人を先に捕まえて置けば後にどうこうされる心配はないしね」


 確かに、こちらが砂嵐を消すことが出来ても再び作り出されてしまえばイタチごっこが続くだけ。

 捕まえてしまえば、仮にこちらが消すことが出来ないものだとしても、犯人に消させることができるかもしれないですし。


「ちなみに、どんな風に不自然だったんですか?」


「風の巻く方向が均一じゃなかったのよ。

 そもそも砂嵐は風の精霊のイタズラで起こる衝突した風で出来上がるもの。

 けれど、先ほども言った通りその風を動かすのは自身の魔力(にくたい)を使うことになるの。

 一回でもまともに魔法を使えば消えてしまうような体をいくつもの砂嵐を作るために魔法を使うとは思えない。

 それにその砂嵐は右回りもあれば、すぐ近くの砂嵐では左回りと本来あり得ない風の動きでありながら、消えずにその場に留まってるのよ」


「という、ウェンリちゃんの意見からこれは人為的に発生させられたものだとわかったわけだけど、何より一番大きな証拠はこれかな」


 そう言って、カオルさんが収納袋から取り出したものに私は思わず目を見開きました。

 それは中心に球体があり、その球体からいくつか枝が伸びて、その枝が外枠に繋がるような形状。


「あの場所にはこの魔道具が砂に埋もれた状態で発見された」


 あれはメイファさんの部屋を訪ねた際に修理する箱に入ってるものと同じものでした。


 私は思わずミクモさんへと目を向けました。

 すると、ミクモさんも表情こそ大きな変化はなかったものの、目はそこそこに開き耳がピンッとしてます。


「あ、それ、メイファお姉ちゃんが持ってたやつなの!」


「メイファお姉ちゃん?」


 ウェンリさんが首を傾げるので私がそれに答えていきました。


「先ほど伝えた魔道具に詳しい方です。ロゴフさんの娘さんにあたります」


「なるほど、その人がこの魔道具を持っていたと。

 魔道具に詳しいということもあってなんだか怪しいわね」


「とはいえ、メイファさんが悪い人に見えませんでした。

 確かに何か隠している様子ではありましたが」


「ヨナがそう判断するのならメイファって人は悪い人じゃないのでしょうね。

 しかし、だとすればどうしてこの魔道具を鉱山へと散りばめたのか」


「そうだね。それって助けに行こうとしている人達の邪魔をしてるわけだし」


「それから鉱石が枯渇してもいいみたいにも感じる」


 ウェンリさん、カオルさん、コウタさんがそれぞれその疑問に対して首を傾げていきます。

 確かに、そうまでして邪魔する必要はどこにあるのでしょうか。

 

 メイファさんは鉱山で行方不明になった仲間を見捨て、さらには大事な資源の産地である鉱山すら捨てようとする。


 私達がその問題を解決しようとすると「その手伝いをする必要はない」的なことも言って、私達に力を貸してもらうことはしなかった。

 こう考えるとメイファさんは意図的に砂嵐の問題に介入する私達を拒んだ形になりますね。


 しかし、メイファさんは私達が協力的な姿勢であることには感謝を述べていた。

 そこからわかるのは別に周りから悪く言われてることに復讐心があるわけではない、それどころかあんな大きな魔道具を作ってこの周囲の地理状況をわかりやすく―――


『だけど、大丈夫! なんとかなるさ!

 きっとそのうちもっと安全な鉱山が見つかるだろうし!』


「......あっ」


 今、メイファさんの不可解な行動の理由がわかった気がします。


「ヨナお姉ちゃん?」


 ただ少しその行動が彼女である確かな証拠が欲しいですね。


「皆さん、今から少しお時間を貰えますか?」



――――翌日


『ん? あ、あんた達かどったの?』


「すみません、アイちゃんが魔道具に興味を持ったらしくてまた見せてもらえないかと」


 私達は再びメイファさんの部屋を訪れました。

 アイちゃんには事前に説明して魔道具に興味津々という設定(まぁ、もとから興味自体はあったみたいですが)で、それを口実に少し確かめたいことがあったのです。


 メイファさんは快く迎え入れてくださり、すんなり部屋に入ることが出来ました。

 部屋に入り、靴を脱ぐ際に私は魔力視でその靴に痕跡がついてないか確かめ、その確認が終わるとメイファさんの前に座りました。


「なんだかお忙しそうですね。すみません、わがままを聞いてもらって」


「良いってことよ、なんたってアイちゃんが魔道具に興味持ってくれたことが嬉しいからな」


「それで今は何作ってるん?」


「......簡単に言えばゴーレムを作ろうとしている」


 ゴーレム......どうしてそんなものを?

 それに作ろうとしているのがゴーレムの割には今目の前で制作しているのは杖なのはなぜでしょうか?


 そんな疑問をアイちゃんが代わりに聞いてくれました。


「アイ、ゴーレムのこと知ってるの!

 だけど、お兄ちゃんから聞いたゴーレムとは明らかに形が違う。

 ゴーレムって杖の形もあるの?」


「あぁ、正確に言えばゴーレムを作るための専用の杖って感じだな。

 ゴーレムは一から作っていくものと魔法でパッと作っちまうものに分かれるけど、これは後者の方でこの杖に丸く削った魔晶石をつけて<ゴーレム作成>の魔法陣を刻んでいくんだ」


「ほ~、そら力仕事にはもってこいね。それに人数不足も解消されるし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 今、ミクモさんが少し踏み込んだ言葉を言いましたね。

 とはいえ、その表情はまるで気さくに思ったことを口にしただけのようで、まるで裏を感じさせない。

 さすが王女というべきですね。表情からは微塵も気持ちを読み取らせない辺りが。


 その言葉にメイファさんはピクッと反応してチラッとミクモさんを見ました。

 しかし、ミクモさんの装う表情に気付かなかった彼女は同意するように答えていきました。


「そうだな~、確かにそういう意図で作ったってのもある」


「ほな、別の意味もあるん?」


「警備だよ、警備。アタイ達は鍛冶仕事や種族柄から筋力はそこそこあるから普通の魔物ならそれなりに相手できるけど、今蔓延ってる図体のデカい相手にはさすがに敵わない。

 それに人数が減ってる中でこれ以上警備に人数は割けないし、むやみにやたらに仲間が傷つくのは避けたいからな。

 こうすれば、アタイ達が戦わなくともゴーレムが何とかしてくれる。もちろん、限度はあるけど」


 この言葉もメイファさんのこれまでの行動の意味がわかっていると別の理由として聞こえてきますね。

 つまりはメイファさんはとにかく優しい人というわけですけど。


「そのような魔道具をどうして今?」


「......昨日パッと思いついたんだ。

 アタイ達って作ることにはとことん熱中する種族だから、これ作りたいって思ったらとりあえず作ってみる感じなんだよ。だから、深い意味はないかな」


「メイファお姉ちゃん」


 その時、アイちゃんが不意にメイファさんの名前を呼び、それに対してメイファさんが作業を止めて目線を向けていきます。


「一人だけ無理はダメなの」


「一人だけ......ははっ、大丈夫だよ。でも、心配してくれてありがとな」


 そう言ってメイファさんはアイちゃんの頭を撫でていきます。

 その撫でにアイちゃんはゆらりゆらりと尻尾を揺らしていくも、その顔はずっと心配を向ける顔でした。


「それでは私達はそろそろ戻ります。アイちゃんはどうしますか?」


「アイも行くの」


「ほな、また会いまひょね。その時は皆でなんとかしましょ」


 そして、私達はメイファさんの部屋を出ていこうとします。

 すると、最後に一つだけメイファさんが質問してきました。


「親父は......いつ頃行くって?」


「明後日の朝だそうです。ですが、その前には砂嵐はどうにかなりますよ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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