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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第66話 砂漠の調査

「律、知り合いか?」


「全く知らない人だよ。はぁ~、えらい目に遭った......」


 聖王国から脱出した僕達は街道沿いの木陰で休んでいた。

 なんかとでもない相手に目を付けられたよ。

 相手は僕を知っているようだったけど、どこかで会ったか......ん?


「どうした思い当たることでもあったのか?」


「うん、確かミラスの時に僕達の馬車の目の前に子供が飛び出して、その際に身を挺して助けた人が確かあの人だった気がする。

 でも、直接的な接点はそれ以降はないよ。

 だから、どうして目を付けられたのか全くわからない」


「とにかく好戦的な女だったな。

 あいつの攻撃は俺一人じゃ確実に対処できなかっただろう。

 助けてくれてありがとう」


「いいよ、別に。むしろ、蹴っちゃってすまないと思ってたぐらいだし。

 はぁ、こんな目に遭うなら皆の顔なんて見に行くんじゃなかった」


「ふっ、結局お前もクラスメイトのことを気にしてんじゃないか。

 別に素直になったって誰も笑わないぞ」


「単に今どのくらいのレベルか知りたかっただけだよ。

 ま、想像以上にレベルが低くてどうしようかと思ったけど」


「また素直じゃないな。

 仮にお前よりも強かろうとお前はクラスメイトを戦地で死なせないように行動をするだろうに。

 その行動の進み具合が速くなるか遅くなるかの違いだな」


「わかるだろ? こう、男の美学的なもんだよ。

 陰で皆の助けになれるような行動が性に合ってるだけ。それが好きなだけ」


「......あまりしょい込むなよ。そろそろ行くか。遅いとどやされるだろ?」


「そうだね。特にアイはまるで僕の体の一部になったようにくっついて離れなくなるから......帰ろうか」


 そして、僕達は聖王国で目的を終え、ドワルゴフへと走り出した。


*****


――――ヨナ 視点―――


 リツさんとレンさんが宝玉を取りに行ってから、その日の夜私達はこの国で出来ることを相談し始めました。


「とりあえず、先ほど皆さんが集めてくださった情報をまとめると今このドワルゴフで起きているのはこんな感じです」


 そういって、私は大まかにまとめたことを書いた紙を皆さんに見えるように中央に置きました。


「まず一つ目に、このドワルゴフでは地殻変動による地震が起きているということ。

 周期は一週間に三、四回ほどと割に多めに起きてますね」


「で、次は砂漠の魔物の突然の巨大化現象ね。

 これはあたし達が実際に体験したから言うまでもないわね。あのデカすぎる魔物のこと」


「問題はそれの原因がなんであるかわからないということです。

 相手が生物である以上突然多発的に魔物が巨大化することなんてありません」


「三つ目は砂嵐も起き始めたということ。しかも複数。

 その現場は僕と康太君が実際に行ってみたけど、確かに異様なほど多かったよ。

 まるで近づくなって言ってるみたいに」


「四つ目はドワルゴフの職人はん達普段行ってる鉱山がその砂嵐の先にあるちゅうこと。

 加えて、その鉱山に行った者帰って来いひんちゅう事件も発生してる」


「それらが原因して今いる職人さん達は助けに行きたくても砂嵐で行けず、武器の鋳造に必要な鉱石も枯渇し始めている.....という感じですね」


 私達の話を聞いていたアイちゃんは何かを考えるような仕草をすると発言しました。

 ふふっ、考える時に口に手を当てる仕草が律さんに似てきてますね。


「まずは砂嵐をなんとかしないといけないの。

 そうじゃなきゃ、鉱山にも行けるかわからなくなっちゃうの」


「ふふっ、そやな。よう話を聞いとって偉いわ。

 ほな、その砂嵐をなんとかしたいのだけど......旦那はんのもう少し詳しい見立てが聞きたいわ。

 例えば、強行突破は可能なのかやら」


 その言葉にカオルさんはコウタさんと顔を見合わせるとミクモさんの質問に答えていきます。


「そうだね。強行突破しようと思えば行けなくはないと思うよ。

 ただそれだと行きは良くても、帰りは救助者もいるわけでおススメはしないかな」


「それにアリジゴクもあったしね。ウェンリはその砂漠にいる精霊に干渉できない?」


「干渉できなくもないけど......ちょっと特別な魔法陣を敷かなきゃいけないから数日かかるわね。

 それに実際にその現場に行ってみないと。

 規模によってはもっと長期的になるかもしれない」


「それではとりあえず、今できることをやりましょう。

 それではカオルさん、コウタさん、ウェンリさんは再びその現場の方へ行って様子を見てきてください。

 私とミクモさん、アイちゃんはもう少し情報を集めてみましょう。

 一応、その砂嵐が人為的である可能性もありますので」


「わかった」


「暑くて痩せそうだな~」


「えぇ、わかったわ」


「ふふっ、新しいリーダーもええわね」


「頑張るぞー!」


 そして、その日はそのまま就寝しました。

 私はアイちゃんと一緒に寝ましたが、アイちゃんがどうにも寝付けないようです。


「なんか寝れない。お兄ちゃんがいなくて寂しい」


「奇遇ですね。少しお話ししましょうか」


 恐らくアイちゃんが寝れないのは家族が消えてしまうかもしれないという恐怖心からくるものでしょう。


 今までは心の支えとなっていたリツさんがいましたが、そのリツさんが今はいませんからね。

 とはいえ、心の底からは誰にも心を開かなかったこの子が今は不安を抱えながらも頑張ろうと意気込む姿勢になったのはとても嬉しいと思います。


 それにこうして不安をしっかり吐露もしてくれますから、アイちゃんにとってリツさんがどれだけ大きな存在であるか伺えますね。


「アイちゃんは将来やってみたいことありますか?」


「将来? それってこの旅が終わったらってこと?」


「そうですね。その時でしょうかね」


「なら、家族を作りたい!」


「家族.....ですか?」


「アイは今もヨナお姉ちゃん達のことを家族みたいに思ってる。

 でも、それはどこかお父さんお母さんとは違うような感じがして。

 その時にミクモお姉ちゃんが『夫婦』になることって教えてくれたの!」


「それじゃあ、アイちゃんは自分が妻となった家族が作りたいということですか?」


「うん!」


 元気よく返事をするアイちゃんがなんだか可愛らしく見えて思わずギューっと抱きしめてしまいます。

 あぁ、可愛い。私もこんな娘が欲しい。ずっと甘やかしてしまいそうですが。


『これまで黙って聞いてれば、随分と甘々なことを言ってるじゃない』


 せ、セナ!? これはその......冗談です。


『同一人物に嘘ついてどうすんのよ。本心だってことぐらい丸わかりだから』


 う、うぅ~~~~~。

 急に一人でに恥ずかしがってる私を見てアイちゃんが怪訝そうに見つめてきます。

 あ、アイちゃん、ちょっとあまり見ないで!


『ともあれ、あんたが将来に向けてしっかりと目標があって同じ私としても嬉しいわよ』


 ん? どこか遠くに行ってしまいそうな感じがしますけど気のせいですか?


『気のせいよ。まだ消えたりしないわ』


 「まだ」ですか?


『それは言葉の綾みたいなものよ。つい付けちゃっただけ。あまり気にしないこと』


 で、ですが、普段はもっと私と入れ替わっているのにここ最近はずっと私が動かしてるじゃないですか。


『そりゃ、あんたの体なんだからあんたが動かすのは当然でしょ』


 そうではなくてですね!


『分かってるわよ。でも、戦闘の際には私が入れ替わってるじゃない。

 一番ハードな肉体労働はやってるんだからその他の肉体労働はあんたに任せてるだけ』


 それなら良いんですが......。


『あんたは深く考えすぎなのよ。

 それよりもあんたも明日やるべきことあるんでしょ?

 とっとと寝なさい。あんたが寝ないとあたしも休めないでしょ』


 わかりました。それじゃ、お休みなさい。

 私はセナにそう言うとアイちゃんがすでに寝てしまってることに気付き、起こさないように優しく撫でながら目を閉じました。


―――翌日


 私達は改めて情報収集をしていると「砂嵐を消す魔道具って作れますか?」という質問に対して、多くの人からとある人物ならもしかしたら、と意見をいただきました。


 しかし、その人は相当なものぐさであるために普段は全く外に出てることはないらしい。

 そして、その人はどうやら最初の親切なドワーフ職人ロゴフさんの娘であるとの情報も貰いました。


「あ? メイファのことか? アイツなら今もきっと地下に籠って黙々と惰眠を貪ってるだろうよ」


「地下ですか?」


「あぁ、俺の家の地面を掘ってな。

 小さい頃は作るのが大好きな娘で、俺に武器にかからわず色んなものを作っては褒めて欲しそうに見せてきたな。

 だが、ある時を境に地下に閉じこもるようになっちまった。

 週に定期的に真夜中に外に出ていくようだが何をしてるんだか」


「それは心配ですね」


「いや、別に心配はしてねぇ。

 夜にどこかへ行くアイツの目を見たことあるがどこかやる気に満ち溢れた顔をしてたからな。

 だから、アイツが夜になにしてるのかは敢えて知らないでいる。

 ま、もし心配なことを挙げるとすれば、成人したら家業を手伝い始めることになっているが、それをせずに地下に籠ってるせいで周りからものぐさと言われてるぐらいだがな」


 そう言いつつも、ロゴフさんの顔には心配の顔色が抜けきっていないみたいです。

 娘さんのやることだからと知らないを突き通そうとしているも、やはり親としては心配なのでしょう。


「実は私達、そのメイファさんにお話を伺いたいのですが、よろしいでしょうか」


「俺としちゃ問題ない。

 ドワーフは女が生まれにくい種族だからアイツの同年代も野郎ばっかでな。

 同じ年頃の同性ならいくらか気楽に接することができるだろう。

 ただアイツが地下の部屋にお前達を招き入れるかはアイツ次第だ。

 その交渉は自分達でなんとかしてくれ」


「わかりました。それでは案内お願いします」


「あぁ、こっちだ」


 そして、ロゴフさんに後についていき、家をお邪魔しました。

 何もない中央部分を開けるように立つとロゴフさんはその周囲に一か所に手を当てていきます。


 すると、何もなかった地面が僅かに動き出し、大きさ1メートルほどの正方形が一段上がるとそのまま横にスライドしていきました。

 下には長く続く階段があり、その先は暗くて見えません。


「メイファはこの下にいる。もとは元気だった娘だ。

 どうかその笑顔も取り戻してもらえると助かる」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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