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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第63話 帝国へ再訪問

 その日の夜、皆に僕の考えを説明をすると康太から質問された。


「それじゃあ、律と蓮はこれから帝国に戻るってこと?」


「うん、そのつもり。ガレオスさんの言葉からしても宝玉は魔神に繋がる重要な手がかりらしい」


「だが、それは逆を言えば相手にとっては厄介なものであるともいえる。

 前に帝国でその手下となった者達と戦った以上、そこに未だあるかどうかわからないが行って確かめに行った方がいいだろう」


 蓮ががっつり説明してくれた。

 うん、ほんと優秀で僕は一切しゃべることないや!

 すると、ミクモさんが当然の質問をしてくる。


「それで、この人選は?」


「ま、少数精鋭の方がいいかなって。

 蓮は魔法使わずとも気配を隠すことが出来るし、加えて僕の魔法陣でさらに気配を隠せるから。

 それに僕達は帝国ではお尋ね者だ。

 そういう意味でも大人数での行動は控えた方がいいだろうし」


「律君の考えなら僕はそれでいいと思うよ」


「そうね。リーダーがそう決めたなら、こちらのことは任せなさい」


 薫とウェンリも賛成の意見を示してくれた。

 恐らくミクモさんやヨナに関しては効くまでもないだろう。

 後は―――


「アイ、しばらく僕はいなくなるけど......頑張れるか?」


 そう言ってアイの頭を優しく撫でる。

 アイに関しては少し心配だ。


 アイは昔のトラウマがある。

 それが僕が家族という形で少しずつ癒えてきているものの、それはあくまで僕がそばにいるとわかっているからだ。


 しかし、今回こうして帝国に行くことを決めた以上、アイにはそのトラウマを再発しないかが心配だ。


 なんせその兆候らしきものはすでに出ている。

 この説明をし始めてからそばにいるアイの手が僕の服の裾を掴んで離さない。


「お兄ちゃん、ちゃんと帰ってくるよね?」


「うん、必ず。だから、アイは皆のために出来ることをして欲しいな」


 優しく言い聞かせていく。

 アイのトラウマを知っている以上、無理やりそうさせることは傷を抉るに等しいだろう。

 ならば、アイ自らがその約束を取り付けてくれるほかない。


「アイちゃん、お兄ちゃんにふさわしい女の子になるために頑張ろう、ね?」


「......うん、アイ、頑張る。だから、お兄ちゃんも頑張って!」


「あぁ、その言葉だけでいくらでも頑張れそうだよ!」


 と言いつつも、アイはもう今日は離れるつもりがないようにピッタリくっついてきた。


「出発は明日だな」


「ごめん、ありがとう」


 蓮に気を遣わせてしまったみたいだけど、そっちの方がアイのためにも良いだろう。

 そして、その日の夜は甘えん坊となったアイと一緒に眠った。


―――翌日


「それじゃあ、行ってくる。そっちのことは出来る範囲で進めておいてくれると助かるよ」


「いや、律達が帰って来るまでにおいら達が全て終わらせておいてあげるよ」


「僕達のリーダーは俺TUEEEE系の感じじゃないしね。

 というか、それだと冒険味も薄れるってもんだし」


「ファンタジー脳はほどほどにな」


 蓮に心配される二人だけど、この二人なら心配ないだろう。

 それに優秀な女性陣もいることだし。


「ほな、気ぃ付けてや」


「あんまり無理しないようにね」


「いってらっしゃい」


「頑張ってなのー!」


「うん、行ってきます」


「あぁ、行ってくる」


 そして、僕達は出発した。

 移動は徒歩もとい走りである。

 蓮と二人ならこっちの方が速いんだよな、実は。


「そういえば、帝国まで概算でどれくらいかかりそう?」


「そうだな.....恐らく全力ダッシュを継続的に続けたとして最短で三日だろうな。

 だが、もちろんそうはいかないだろうから五日ぐらいか。

 とはいえ、やはり砂漠で走るのは陸上よりも体力持ってかれるな」


「なら、僕達も道具を使おうか」


「?」


 この砂漠には来た当初は大型生物ばかり存在感を主張していたけど、もちろん小型生物もいる。

 といっても、おおよそ自分と同じかぐらいの全長なんだけど。


 そして、その小型生物の特徴は砂をまるで水面のように泳いでいくのだ。

 なので、そいつを<魅了>の魔法陣でテイムしていくと体に蓮の糸を括りつけ、足元に魔力障壁の壁でも敷いてやれば犬ぞり(犬じゃないけど)の完成である。


「これは楽だな。それに走るより速い」


「素早く移動できて全く疲れない。やはり乗り物は便利ですな~」


 そんなこんなで一日とちょっとで砂漠エリアを走破するとそこからはしばらく平原が続いてからの森である。


 霧隠れの森は移動に厄介なのでそこを遠回りして行ったために少しタイムロスしたけど、おおよそ予定通りに獣王国を視野に捉えた。

 そこからさらに移動していき六日ほどで帝国にやって来た。


「さすがに走り疲れたな」


「とはいえ、この世界じゃ最高速度の乗り物が竜脚種の魔物を使った乗り物なんだけど、魔法を使った僕達の方が圧倒的に速いし」


「ま、これがファンタジーってことか。

 それで? お前の知りたい情報は誰から聞くつもりなんだ?」


「そりゃ当然、帝国で一番のお偉いさんさ」


 その日の夜、僕と蓮は互いに<気配断ち>の魔法陣を張りつけ、さらに蓮が作った常夜の衣という装備を着て、夜に紛れながら復興途中の城に潜入していく。


 あれからおおよそ一か月ちょっと経ったおかげか城は八割方完成していた。

 後は尖がりの屋根の一部とかそんなぐらいである。


 さてさて、夜を待つ間に簡単に情報収集は済ませてきた。

 どうやら現状でこの国を治めてるのはこの国一番の騎士であり、僕も対峙したことがあるドイルさんであるらしい。


 あの人は話が通じる相手だったからもしかしたら穏便に済むかもしれないし......済まないかもしれない。


 そこはまぁ、やっぱりお尋ね者だし?

 さすがに民衆が頑張って復興した城を壊すのは嫌よ?


「<魔力感知>からして魔力によるトラップは感じられない。

 強いて警備がちょいと厳重くらいかな」


「なら、その警備に関しては俺に任せてもらおう。

 たまには活躍しないと立つ瀬がないしな」


 そう言うと目に魔力を集めた魔力視でしか見えない魔力の糸を指先から出し、それを軽く空を撫でるように動かしていく。


 すると、その糸がまるで意志を持ったように廊下の兵士の首元に絡みつくとそこに<催眠>の魔法陣を仕込んでいった。


「魔力の糸に魔法陣の効果を流し込んだのか」


「お前の物に貼りつける魔法陣を練習していた副産物で出来たものだな。

 結局、お前が当たり前に使う“転写”とやらは難易度が高すぎて若干泣きそうだが、これなら近しい効果が得られるとわかった」


「ま、そう簡単に使いこなされちゃ、それこそ僕の立つ瀬がないよ」


 とはいえ、あの蓮が若干泣きそうなほどに苦戦しているとは......なんだろう、この優越感。


「ともかく、いざって時のためにお前は出来る限り魔力を温存しておけ。露払いは部下の仕事だ」


「部下じゃなくて仲間ね。それじゃ、よろしく」


 廊下の道に立っている兵士を蓮がどんどんと眠らせていく。

 相手にはこちらの姿が見えない(正確には気づかないぐらい気配が薄い)所から突然攻撃されてるんだから怖いよな。


 ま、それが死に直結する攻撃じゃないだけマシであろう。

 自分の死に目がわからず気付いてたら死んでるとか嫌すぎる。


 そんなこんなで一際強い気配がある部屋に辿り着いた。

 しかし、その部屋の人物は寝ておらず、まるで周囲の異変に気付いたようにドアの近くで待機してる。


 ほんと優秀だな。寝かした兵士も倒れる音を立てないようにしたり、足音もしっかり消してるのにその周囲に異変が起きてることに気付く敏感さは歴戦の猛者を感じさせる。


 だけど、残念ながらそっちにいるのは蓮だけなんだよね。

 僕の気配には気づいてないみたいだ。


「お久しぶりだね。騎士団長さん」


「!?......まるで気配を感じなかったな」


 僕はドイルさんがいるドアとは反対側の窓から部屋に侵入した。

 そのことにドイルさんは感心した様子で答えてくる。


「悪いね。突然お邪魔して」


「随分と殺気がないな。俺を消しに来たんじゃないのか?」


「だったら、もっと効率よく大規模魔法で城ごと爆破してるよ」


「ふっ、バカを言うな。お前は出来るだけ周囲に被害が出ないように標的を狙うタイプだ。

 そんな大量虐殺のような真似はしない」


「随分と信用しているみたいだけど、僕ってこの国の王様を殺したんだよ?」


「あぁ、そうだな。だが、我が王がああなったのは一概にお前達のせいというわけではない」


 なんか知らんけど随分と高評価だ。

 一応、「我が王の仇!」みたいな感じで斬りかかられると思ってたんだけど。


「それで? 犯罪者がどうしてわざわざ現場に戻ってきた? 何か忘れ物でもしたのか?」


「少し聞きたいことがあってね。

 ドイルさんは王様がドワルゴフから宝玉を買ったということを知ってる?」


「宝玉? ドワルゴフには警護として一緒に同伴した記憶が......あぁ、確かに珍し気な魔力の球を持っていた気がする。それがどうかしたか?」


「実はそれが欲しくてここまで取りに来たんだ。それくれない?」


「それか。なら、王が亡き今は俺が持っている」


 そう言って、ドイルさんは近くの戸棚に歩いて行く。

 その瞬間、僕は足元に拘束用の魔法陣を設置し、そこから伸びる鉄の鎖でドイルさんをがんじがらめにした。


「嘘は良くない。もちろん、そういう対策はしてあるんだ。

 なんせ敵同士であることは変わりないからね」


「<看破>の魔法か。魔法に長けているとは知っていたが、まさかそんな魔法陣でしかないマニアックな魔法に手を出しているとはな」


「悲しいことにそれが専門だもんで」


「......?」


「で、それはどこにある? 多少痛い目に遭わせることぐらいはするよ」


 その脅しが効いたのか、それとももとから抵抗する意識が薄かったのかわからないけど、ドイルさんは割とすんなり答えてくれた。


「あれはしばらくして聖王国に珍しい物としてプレゼントしていたな。今頃は宝物庫にでもあるだろう」


 げっ、よりによって聖王国かよぉ。


「さて、俺が知ってることぐらいこれぐらいだ」


「みたいだね。おおよそ何も使えなくて興味を失って、適当に聖王国との関係性を深めるためにプレゼントしたとかだろうしね」


「敵ながら察しが良いな」


 僕は<念話>で蓮に「引き上げるよ」と告げるとドイルさんの拘束を解いた。


「これから聖王国に行くのか?」


「ま、そんな感じ」


「なら、せいぜい気を付けることだな。この世には思いもよらぬ物好きがいるからな」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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