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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第62話 宝玉のありか

 ロゴフさんがドワーフの長に連絡を取ってくれるらしいので、とりあえず明日にまた会う約束をすると僕はふらふらによっている康太に肩を貸していた。


「くっ、もっとおいらが強くならないと。そうしなきゃ、そうしなきゃ、うわああああ」


 どうやら康太は泣き上戸だったらしい。隣で盛大に泣いていらっしゃる。

 正直、康太は笑い上戸だと思ったんだがそれはむしろ薫であった。解釈不一致だね。


「はははっ、蓮君が顔真っ赤じゃん。いつも澄ました顔ばっかしてるくせに、ははは!」


「という意見に対しての返答は?」


「まぁ、澄ましてるというよりはリアクションが薄いというタイプなだけなんだがな」


 薫の肩を貸している蓮は確かに頬をほんのり染めながらも案外理性的に話していく。

 お酒に強い家系なのかな? いや、それとも案外飲まなかった?


「随分とハッキリしゃべれるんだね。お酒に興味なかったの?」


「いや、あった。それにたらふく飲まされた。

 けど、俺はこのグループの中じゃ密偵という役割に近いから、お前に教えて貰った<酔い止め>の魔法陣で酔わされないように気を付けてたが......言語能力に支障が出ないぐらいが限界だな」


「まぁ、初めてだし。それに皆は直接舌に設置出来ない分効果を百パーセント受けれないしね」


「ということは、お前は酔ってないわけか」


「いや、あえてほろ酔いぐらいにしてある。おかげで気分がふわふわしてるよ」


「律君がふわふわ......律君がわたがし、あはははは!」


「何も面白くないよ?」


 まぁ、絡み上戸とかじゃない分マシだろう。そう、ほんとにこっちよりは。

 そう思いながら俺はずっと目を背けていた方へと目を向けていく。


「はい、ウェンリちゃん、お口開けまひょね~」


「......」


「落ち着いてください! 今のウェンリさんはお酒で思考停止状態なんです!

 そんな状態の人にあなたを近づけることは出来ません」


「ええやんの、女の子同士なんやし~。

 それに口と口をくっつけるだけよ?

 なんもやらしいことあらへんちゃう~」


「それは全てキス魔の戯言です。我慢してください」


「嫌、お口寂しい!」


「なら、これでも食べててください!」


「あら、うまい。甘おしてええわ~」


 ヨナはミクモさんの口に何かを放り込んでいくと彼女はそれを口の中で舐めていく。

 飴的ななにかであろうか。


「そっちもそっちで大変だね」


「まぁ、それだけ安心して身を任せてくれるということでもありますからいいんですけど......さすがにウェンリさんがダウンするとは思わなかったです」


「なんかいつ寝てもおかしくないほどに目が細いけどね。歩くのもやっとって感じ」


「ですが、それはほんとにマシな方です。

 ミクモさんはもうほんとに......律さん達は近づけられないですね」


「嫌ね~、殿方でお口を許すのんは愛する人だけよ? さすがにそれぐらいの節操はあるって」


「なら、女性でも節操を持ってください」


「可愛いさかいあかん~。もし初めてやったらかんにんな」


「はぁ~」


 ヨナが珍しく疲れたようなため息を吐いている。

 まぁ、どのみち今のハイテンションな薫は近づけられないけどね。

 何が起こるかもはやわかりきってる。


「そういえば、アイは寝ちゃってるんだな」


「どうにもお酒の匂いに当てられたみたいで。

 それにお腹いっぱいに食べたことも影響している様です」


 ヨナに背負われながら気持ちよさそうに寝てる。

 皆良かったね、このままじゃアイに不名誉な威厳を見せる所だったよ。


 というか、ヨナはアイを背負いながらウェンリの手を引いて、ミクモさんの相手してるのか。すげぇな。


 そして、無事に宿に戻していくと皆を部屋に寝かしつけていく。

 途中、飴という枷が無くなったミクモさんがヨナを襲いかけてたのでそれを阻止。


 どうやらアイには母性的な感覚が働くようで子供を寝かしつける母親のようにして一緒に眠ってしまったので無事に全員を寝かせることに成功した。

 うん、ミクモさんにはお酒を規制しなきゃ。


「これではもし仮に襲撃にあっても対処できませんね」


「とりあえず、ミクモさん達と蓮達の部屋には頑丈な結界を張っといたから大丈夫。後はヨナの所にも張っておくよ」


「ありがとうございます」


「それにしてもヨナは酔ってないんだね」


 女性陣の中では一番ケロっとしている。

 いくら<酔い止め>の魔法時を仕掛けていても蓮みたいにある程度は影響は出ると思ったんだけど。


「私の場合、立場的に儀式でお酒を口にする機会がありましたので。

 それに私は医者ですよ? それに対処するための薬は作ってあります」


「なるほど」


 すると、ヨナがちょいちょいと手招きしてくる。

 ん? 耳打ち? でも、他に聞き耳するような気配はないと思うんだけど。


 とはいえ、一応ヨナの要望通りに耳を近づけていくと頬に柔らかい感触を感じた。

 思わず顔を遠ざけ、その感覚が残り続けている頬を触れる。


「とはいえ、飲んでるかどうかはまた別ですよ、ふふっ」


 そういたずらっぽく頬を赤く染めて告げるヨナは「おやすみなさい」と言って部屋に戻っていった。

 そんな姿をしばらく棒立ちになりながら、僕も顔に熱を帯びていくのを感じる。

 もしかしたら、僕も酔ってるのかもしれない。


―――翌日


 僕は予定時刻に待ち合わせしていたロゴフさんの所に訪れた。


「よう、兄ちゃん! 来たみたいだな」


「おはようございます、ロゴフさん。アレだけ飲んだのに酔ってないんですね」


「ドワーフにとって酒は水だぞ? 水で酔う人間がいるか?」


 お酒は水......どこかの人が「カレーは飲み物」と言ってたぐらい衝撃的な言葉だぞ。

 まぁ、朝の挨拶はこの辺にして早速本題へと移らせてもらおう。


「それで昨日の件はどうなりました?」


「あぁ、無事に約束を取り付けた。今からその場所に案内してやる」


 そして、ロゴフさんの後についていくと村の奥にある崖のようにそびえたつ壁に球状に家が建っている。


 周りの家々よりも一際大きいその場所に階段を上っていくとロゴフさんはドアをノックし、「入るぞ」と一声かけるとそのまま入っていった。


「よう、長! 例の客人を連れてきたぞ」


「おう、ロゴフ。さっきぶりだな。で、そいつがそうか」


 奥の方で酒を飲んで座っている人物がドワーフの長であるようだ。

 見た目はロゴフさんに似ている。

 強いて言えば、顎髭が三つ編みになってるぐらいだろうか。


「こっちの兄ちゃんの名は......って、そういや聞いてねぇな」


「リツです」


「で、こっちがこの村の長をしているベルダンだ。

 兄ちゃんと分かれた後に約束を取り付けにいってそのまま一緒に飲んでた」


 え、僕達が店を離れたのってそこそこ深夜だったはずなのに......いや、それ以上に「さっきぶり」って言葉からしてロゴフさんオールして飲んでたの!?


「ん? どうした? 驚いた顔をして」


「い、いや、大丈夫です」


 僕は一つ息を吐いて気持ちを落ち着けるとベルダンさんに金属の棒と宝玉を見せていく。


「なんだこの棒は? 金属質......ではあるが、見たこともない金属だ。

 見た目は金に似てる。だが、指を弾いた強度からして......ふむ」


 ベルダンさんは近くにおいてあるシルバーグリーンの金づちを取り出すとそれをおもむろに棒に打ち付けた。ちょ、何やってるの!?


「ふぅ、やっぱりだめか翠銀(ミスリル)製のものでもダメとなると強度は極白金(オリハルコン)並。

 しかし、その金属に見られるような特徴的な白みがかった光沢が見れねぇ。

 うん、ダメだ、お手上げだ」


 ベルダンさんはその金属を僕に渡してくるので、それを受け取ると彼は話しかけてきた。


「その金属はもしかしたら金属であって金属でないかもしれない」


「どういうことですか?」


「ま、言ってみれば俺達文明レベルじゃ作れない代物ってことさ。

 古代文明の遺産か、もしくは俺達よりも超常的な存在がいてそいつが作り出したものか、いずれにせよこの世界の最高基準の技術を持っている俺達でダメならば他の誰に聞こうとダメだろう」


「そう、ですか......」


 この金属はこの世のものではない?

 でも、ガレオスさんに見せた時には何か知ってる反応を見せた。

 ということは、これは恐らく魔神の遺産かそれに近しい何かであることは確定した。


 まぁ、これまで聞いてきたのは一応確認みたいな作業だったしな。

 もし、これを見せて何か魔神に関する情報が得られたらみたいなものだったし。なら、次の情報だ。


「これは神殿の奥深くで見つけたものなんですけど、この近くで神殿はありませんか?

 もしくは昔神殿と呼ばれてた場所とか」


「あるちゃ、あるが......そこは危険地帯として封鎖している。

 そのせいでだいぶ資源に行き詰ってるけどな」


 それって―――


「前にロゴフさんが言っていた地殻変動ですか?」


「ま、そうだな。それに仲間が消えた鉱山がその神殿と呼ばれる場所だ。

 加えて、もうじっとしても拉致が明かねぇから俺も行こうとした時に突然砂嵐がいくつもできてな。

 もはや鉱山に行くまでも叶わなくなった」


 とはいえ、僕達の場合はその手掛かりとなる場所に行く必要がある。何か対策を考えとかないとな。


「そういや、その宝玉だが―――」


 すると、ベルダンさんが声をかけてきたので耳を傾けていく。


「帝国に売った」


「......はい?」


 思わず耳を疑った。え、今売ったって言ったよね?


「どうしてですか?」


「単純だ。宝の持ち腐れになるからだ。その宝玉はかなりの魔力を秘めている。

 だが、叩いても、熱しても、冷やしてもとあらゆることに手を尽くしてきたが傷一つつかない。

 先代から受け継がれてきたものだが、使えねぇものをそばに置いておいても仕方ないから、ある時この場所にやって来た帝国の王様が欲しがったもんで売ってやった。だから、今この場所にない」


「そう、ですか......」


 これはなんというか面倒なことになったな。

 ということは、また帝国に行かなきゃか。

 でも、帝国では僕達はお尋ね者に違いない。

 となると、少数でこっそりと行った方がいいか。

 はぁ、仕方ない。後回しよりも行動すべきだな。うん、取りに行こう。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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