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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第61話 酒場で情報集め

 僕達は日中は必ず魔物に追いかけられるという苦行を終えて遂にドワルゴフへとたどり着いた。

 その街はまさに砂漠にあるオアシス。これまで見ることがなかった緑が広がっていた。


「ここがドワルゴフか。緑がある分、なんだか外よりも涼しく感じるね」


「それに正しくファンタジーで見る髭面の小人がいるな。筋肉隆々の」


「逆に康太君みたいな大き目な身長の人もいるけど」


「なんというか身長が極端すぎない?」


 街の住人について僕達はそれぞれ感想を述べていく。

 それがこの街のまず一番最初に目がつく特徴であったからだ。


「それにしてもあちこちから金属音がしますね」


「カンカンって音が周りからたくさん聞こえてくるの」


「まぁ、そら職人住む場所やさかいね。

 チラッと見ても売ってる武器はどれもこれもが相当の値段がするもの。

 ま、本人達からしてみたらガラクタに近いものかもしれへんけど」


「刃が鏡のように手入れされたあの剣がガラクタね」


 確かに、ミラスの街や帝国で見た武器屋で一番目立つ所で売ってそうな武器が乱雑に傘立ての傘のように入っている。


「よぉ、見ない顔だな。もしかしてこの砂漠を渡って来たのか?」


 声をかけてきたのは一人の口を覆うほどの髭を生やした男性であった。

 その男性の着ている服は汚れていて、特にグローブなんかはかなり使い込まれてる様子である。


「はい。かなり大変でしたが」


「そいつはすげぇな。ここ最近、バカでっかい魔物が増えまくってこの街に訪れる冒険者や商人はめっきり減っちまったってのに」


「あの魔物はここ最近で増えたんですか?」


「あぁ、かれこれ二週間前ぐらいだったかな。

 大規模な地殻変動が起きてそれ以来鉱山に向かう際に渡る砂漠地帯で妙にデカい魔物に遭遇するようになっちまった。

 まるで地下に眠っていた怪物達が一斉に目を覚ましちまったみたいに」


「妙な話ですね」


 そう言いながら僕は皆に目配せしていく。

 その目線で送った意見は全員が同じ見解のようであった。

 つまりはこの魔物の影響も魔神の使途によるものではないかということだ。


「おかげで俺達の商売はあがったりだ。

 買い手は来ねぇし、素材を取りに行こうも砂漠を渡るのも簡単じゃねぇ。

 それに鉱山に行った連中が帰って来ねぇと踏んだり蹴ったりだ。

 とにかくまぁ、兄ちゃん達がどんな理由でここを訪れたにしろ俺達は拒む理由がねぇから安心しろ。

 あ、でも酒の席だけは断るなよ?」


 そう言うと「んじゃな。仕事がまだ残ってる」とその男性は去って行ってしまった。


「この後の予定はあるのか?」


「なんか色々聞きたいことがあるけど、とりあえず一旦泊まれる場所を探そう。

 本格的な情報集めは明日からってことで」


 蓮の質問に答えていくと一先ず馬車を止められる宿屋を探した。

 それは案外早く見つかり、先ほどのドワーフの男性が言っていたように人がほとんど来ていないのか一人一室が取れるほどがら空きであった。


「アイはお兄ちゃんと一緒なのー!」


「アイ、最近めちゃくちゃ甘えてきてお兄ちゃん的には嬉しいけど、分別はつけような?」


 とはいえ、お金の面では問題なくても僕達は一応お尋ね者みたいな立場なので最低でも一部屋二人という形にしたのだが、そこでアイがだだをこねてきた。


 僕とてアイが安心して眠れる活況を作ることにはやぶさかではない。

 とはいえ、それとこれとは別である。別に僕が何をするわけでもないけれど、アイには女子部屋で寝て欲しい。

 場合によってはアイには聞かせられない内容を話し合う可能性もあるから。


「ヨナ、ヘルプ」


「ほら、アイちゃん、行くよ」


「いーやーなーのー!」


「リツさん......お兄ちゃんは聞き分けの良い子が好きだって言ってましたよ?」


「!?」


 ヨナがそう言うと愛の動きが止まった。

 そして、先ほどのだだをこねこねした様子はどこへやら、アイは「良い子だから!」と僕から離れた。


 さすがにアイの扱い方が慣れてらっしゃる。

 僕の場合は押しに負けて結局許してしまいそうになるからなぁ。

 そういう意味では本当に助かる......ん? ヨナの顔が妙に赤いな?


「どうした?」


「なんというか......お兄ちゃんって呼ぶの恥ずかしいですね」


「!?」


 その瞬間、僕の脳内に電流が流れるようにお兄ちゃん呼びをするいくつものヨナの姿が映った。

 あ、やばっ、これはなんというか......YABAI。


 僕まで顔が熱くなってくる。

 そんな僕達の様子をジトーとした目で見ていたアイは―――


「やっぱりアイは良い子でなくていいの!」


 僕に抱きついてくる。

 それからアイを説得すること数分、もとから着いた時間が割に遅かったためにすっかり時刻は夜へと突入していた。


 僕達はもはや小学生のようなロリキャラにしか見えないドワーフの女性(35歳らしい)にお勧めの店を案内されるとそこに向かっていく。


「ガハハハ! 飲め飲め! 騒げ!」


「ったく、ほんとに酒が飲むときが一番生を実感する」


「この時間がなけりゃほんとやっていけねぇな!」


 店を訪れればそこはもはや酒宴となっていた。

 ドワーフや高身長の男達が木製のジョッキに入った酒をガブ飲みしている。

 というか、近くの酒樽から直接すくって飲んでるし。


「お、さっきの兄ちゃん達じゃねぇか! ほれ、こっち来い」


「わ、ちょっと!」


 強引に手を引かれると先ほどその人が座っていた席に座らされ、目の前に並々に酒が入ったジョッキが置かれる。


「さ、グイっと。ほら」


 周りからの圧が凄い。僕が飲むことを心から期待しているような目だ。

 けど、僕はまだ酒を飲む年齢に達してないんだよな~。

 ま、それはあくまで元の世界での基準でこっちでは合法になるわけだけど。


「おい、まさか酒が飲めねぇってわけじゃねぇだろうな?」


 なんか急に態度が変わったんだけど。

 職人の目って案外鋭いんだからその目を向けてくるのやめて欲しい。

 それにさっき酒の席は断るなと言われたしな......仕方ない。


 僕は舌に<酔い止め>の魔法陣を仕掛けるとジョッキに入った酒を一気に飲み始めた。

 そして、それを全て飲み切ってガンッとジョッキを机に叩きつける。


「これで文句ないですよね?」


「「「文句なし!」」」


 全員が満面の笑みで笑っていく。どんだけ酒飲むのが好きなんだよ。


「ほら、あんた達、他所からの客人に無茶させんじゃないよ!」


 そんな男達を注意したのは二メートルは超えてそうな長身の女性であった。

 その女性はテーブルに様々な料理を置いていく。


「これはあたしからのサービスだ。他所からここに来るなんて珍しいからね」


「お、気が利くじゃねぇか」


「あんた達の分じゃないよ! だけど、お代はあんた達だからね!」


「そ、そんな理不尽な~」


 先ほど元気だった男性達が見るも虚しいほどに小さくなっていく。

 うん、これだけで十分に上下関係が見えたね。


 そして、僕はチラッと周りを見ると皆も巻き込まれてるようなので、「南無阿弥陀仏」と唱えながら食事を始めた。


 <酔い止め>の魔法陣は覚えてるだろうけど、設置できる場所によって効果が変わるからね。

 そして、しばらく一緒のテーブルを囲う男性達の話を聞くと興味深いことを聞いた。


「へぇ~、それじゃあその身長は巨人族の末裔だからってことですか?」


「あぁ、そうだ。ドワーフの民と交わる前はもっとデカかったらしいけどな」


「ま、今じゃデカすぎても暮らしにくいだろとか思うけどな」


「逆に俺達にとっては羨ましい限りだぜ。どんなに手を伸ばしてもその身長にはいかないんだからな」


 そう言うドワーフの男性ロゴフさん(最初に声をかけてきた人)は酒を飲みながら悪態をついた。

 しかし、それに対し高身長の男性の一人がすぐに答えていく。


「まぁまぁ、そう言うなって。知ってるか? 年々、生まれてくる子供の平均身長が上がってることに」


「そうなのか?」


「そりゃそうさ。なんだって、巨人族(おれたち)の血が混じってんだからな。そりゃ影響は受けるだろうよ」


「ってことは、将来俺達もお前達ほどの大きさに―――」


「それはない」


「せいぜい互いの平均身長を足して半分の数ぐらいだろよ」


「ったく、夢がねぇな~」


 ロゴフさんはため息を飲みながら再び酒を飲む。

 この人、一体どれほど飲むつもりなのだろうか。

 一人だけ異様に飲むし、仕舞には一人で酒樽一つ空けてるし。

 量が少ないからって酒樽に口付ける人初めて見たよ。


 すると、今度は僕の方へと顔を向けると質問してきた。うっ、ダイレクトに酒臭さが。


「そういや、兄ちゃん達は一体どういう目的でここに来たんだ?」


「もちろん、良い武器を調達するためでもありますけど、実は言うととあるものの情報収集に来ました」


「お、なんだなんだ? 武器や道具に関するものだったらなんでも聞いてくれ」


 う~ん、情報集めは明日からにするつもりだったけど、せっかくだし今見せてもいっか。

 そう考えると僕は腰のポーチから金属の棒と黄色い宝玉を取り出した。


「実はとある遺跡でこの金属の棒を、そして獣王国からこの黄色い宝玉を貰ったんですが何か見覚えありますか?」


「ちょっといいか?」


 そう言って、高身長の男性は金属の棒を取ると肌触りを確かめたり、模様、形状、魔力の有無などを確かめていった。

 時には指で棒を弾き、その響く音を聞くように棒を耳に近づけていく。


「ダメだ。よくわからん。金かと思ったけどどうにもそれとは違うような感じがする。

 分解すりゃわかると思うが、さすがにそうはいかないだろうし」


「まぁ、そうですね。壊されるのはちょっと......」


 僕は男性から金属の棒を受け取った。

 そして、この棒と宝玉について簡単に説明していく。


「手にいれた場所は違うんですが、どうにもこの宝玉はこの棒が近くにある時に反応するみたいで、それでここに来ればわかると思ったんですが」


「悪いな。どうにも俺達にはわかりそうにはない」


「そっちの宝玉も見させてもらったけど魔力を感じるけど、加工できなさそうな感じだしな」


「そうですか」


 何か手掛かりが掴めると思ったんだけどな。仕方ない、しまっておくか。

 その時、チラッとロゴフさんを見れば何やら険しい表情をしているようである。

 そして、思わず目が合うと僕に告げてきた。


「兄ちゃん、もしかしたら長なら何か知ってるかもしれねぇ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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