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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第2章 帝国襲撃

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第51話 指南者~勇者サイド~

―――エウリア 視点―――


「バケモノ......ですか?」


 突然リューズ様の言葉に思わず聞き返してしまいました。

 街でバケモノに会った......恐らく、武人や冒険者が使う“かなりの実力者”に対しての比喩的な言葉でしょう。


 しかし、リューズ様のパーティである「金龍乱舞」はもはや他の冒険者の遥か先を歩いていると言ってもおかしくない偉業を数々成し遂げていると耳にします。

 そんなパーティの最強剣士と認められる彼女がバケモノと認める相手がいるとは......。


 そんな話題の切り出し方はこれまでに散々繰り返してきたのか他の皆様から突っ込まれていきました。


「あら、またその話をするの?」


「つっても、見たのがリューズだけだからな~。

 俺っち達も見てれば信ぴょう性が高いんだけど」


「ハッハッハッ、別にリューズを疑うわけではない。

 だが、自身を強者と名乗る人物が次々にリューズに挑んでその敗北を見続けたためにその言葉が俺達には理解しきれないのだ。ましてや、そのバケモノの正体が少年だなんてな」


 バケモノの正体が少年......?


「何言っておる? ワシじゃって別に最強じゃない。

 現にこの力を使っても勝てない竜人族はおったぞ?」


「それは過去の話でだろう。もうあれから3年は経っていて、お前の肉体はよりよい形に成熟している。

 人族の成長スピードは短命種が故に俺達長命種の成長スピードを遥かに凌駕する。

 今のお前ならもう過去に負けたあいつらなどとっくに超えておある」


「じゃがな......あんなのを見た後じゃワシもまだまだと思うわけよ」


 リューズ様をそこまで言わせるとはなんだか興味がありますね。ここは一つ聞いてみましょうか。


「リューズ様、そのように思われる話を着てもよろしいですか?」


「あぁ。いいぞ! これはそのミラスという街で―――」


 自分のことのように元気よく返事をされるとその時のことをリューズ様は話されました。


 当時、金龍乱舞は私達の国に来るついでにとある依頼で帝国からミラスの街まで護衛任務をしていたそうです。


 そして、冒険者ギルドでの手続きが終わり、集まって行動していると知名度が高い故に人が集まってしまって行動しずらいという理由から各々個人で買い物をしていたそうです。


 そんなある時、母親にお菓子を買ってもらった子供が嬉しさに馬車の前に飛び出してしまったそうです。


 ですが、間一髪リューズ様が救出することに成功して難を逃れたそうですが、その時に轢きそうになった馬車が一番気になったそうです。


 魔力の気配から数人が乗ってることがわかったらしいのですが、その一人一人の実力が異常過ぎてその記憶が今も忘れられないそうです。


 後から冒険者ギルドに馬車からたまたま見えた人の特徴で検索をかけてみてたところ、その検索には引っかからなかったそうで、冒険者ギルドには加入していない謎の実力者集団ということでリューズ様はずっとその相手に会いたがってるとのことでした。


「それは冒険者ギルドではなく、傭兵団所属ということはありえないんですか?」


「その線も探ってみたが、特徴に合うエルフの少女と黒髪の少年はいなかったのじゃ」


「黒髪の少年......?」


「ん? お主もその人物が気になるのか?」


「あ、えーっと......その少年以外にも他に少年達を見ていたりしませんか?」


「見ていないが、その言葉を全て否定することは出来ないな。

 なんせ、ワシが見えていたのは馬車から顔を出していた人物のみじゃからな。

 もしかしたら中にいたかもしれない」


「そう、ですか......」


 ということは、もしかしたら律さん達の可能性もあるということですね......。元気そうにやっているのなら良かったですが......うぅ~、エルフの少女という方が気になります!


「にしても、お主もその男子が気になるとはさすがの目の付け所じゃの」


「え、あ、それは―――」


「ごめんなさいね。こうなると止まらないから聞いてあげて」


 マイラさんが少し困った顔をしながらリューズを見て、その後にそう告げてきました。

 どうやら日常茶飯事の光景らしいみたいですね。

 大丈夫です、聞くことには慣れてますから。


「その集団は確かに一人一人が高い実力を持っておった。

 じゃが、その中でその男子だけは一際体外に出る魔力量が少なかったのじゃ」


「ということは、その方がその集団の中で一番実力が低いということですか?」


「残念ながら逆なんじゃ。その男子が一番強い」


 あれ? でも、そういう強さの基準って魔力量に比例すると聞いたことがあるんですが。

 そんなことを思っていると私の考えを読み取ったように答えを告げてくれました。


「確かに、相手の実力を測ることは魔力量を測ることじゃ。

 魔力量は強さに直結する。じゃから、測った魔力量が自分よりどのくらい大きいかで判断することは大いにある。

 しかし、それはあくまで二流の実力者の考え方じゃな。

 自分が一流であると誇張するわけではないが、少なからずその域に達するものは魔力量で相手の実力は測らない」


「では、どのように測るんですか?」


「それはじゃなの―――」


「魔力の揺らぎ。もっと言えば、魔力操作の質らしいよ」


「それ、ワシが言おうと思ってたやつ!」


 突然横からハイエル様が入ってこられました。

 彼が「ずっと聞くの暇だったんだよ」というとリューズ様は渋々発言権を譲っていきます。

 ふふっ、その姿がなんだか子供っぽくて可愛らしいです。


「ま、これも全てリューズの受け売りだけど、実力が高くなると当然体外に溢れ出る魔力量は多くなる。

 すると、それが漏れてるだけでやがて周囲に妙な重圧感を与えるんだ。

 しかし、魔力量が多いというのはトラブルの種になることも多い。

 だから、自分の力を誇示したい奴以外でさらに強さを目指す者はそのトラブルを避けるための意味も含めて魔力操作の技術を覚える」


「ハッハッハッ、ついでに俺も混ざらせてもらおう。

 そして、その魔力操作はエルフの技術の叡智で可能にした錬魔、確かリューズの生まれ故郷では『豪魔』だったな、その過程で身に着けることができるんだ」


「なら、ついでに私も。そして、その錬魔という技術は通常の魔法攻撃を何倍にも効果を引き上げることができ、それは錬魔のレベルによるけれど初級魔法と呼ばれる『火球』が場合によっては殲滅魔法に昇華することだってあるの」


「で、本来ならば人が体外に出す魔力は必ず自身の感情や体調に合わせた揺らぎがあるのじゃ。

 しかし、その男子は全く持って揺らいでなかった。

 体外に出る魔力量を一般人レベルに絞っておったが、奇麗すぎて逆にバレとるな。

 じゃが、逆に言えば擬態できるまでに高めた錬魔のレベル。

 もはやあの男子を『人』と定義していいのか怪しいとすら言える」


「リューズ様にそこまで言わせるとは凄いですね......」


「ま、それだけ世界は広いということじゃ。

 ワシも自分の実力に天狗になりかけておったから良い戒めじゃったかもな。

 あ~、会って一試合してみたい」


「ふふっ、まるで恋する乙女ね」


「言ってることはかなり野蛮だけどな」


「ハッハッハッ、それがリューズさしらというものだ」


 なんというか、話を聞いた限りではイメージがもう律さんじゃない誰かになってますね。

 いや、リツさんがそうなってる可能性も否定は出来ませんが、彼はなんというか修行というより皆さんのお手伝いというイメージの方が定着しているせいで解釈が合わないんですよね。


「おっと、思ったよりだいぶ話が逸れてしまったな」


「逸らしたのは完全に自分だけどな」


「ごめんなさいね、お時間取らせて。それじゃ、本題の話と行きましょうか」


「そうだな。とはいえ、一応既に依頼内容は聞いているから今回はその返事ということになるが」


 タルクさんの言う通り、私が前に聖王国を離れたのは金龍乱舞のもとへ訪れるためであり、その時に彼女様達には勇者様方の武器指南役としてのお願いをしてあります。


 もちろん、最大限彼女様達の意向に沿うように話をしてきましたが、出来れば無事に受けてくれると助かります。


「で、前に依頼された武器指南役じゃが―――いいぞ。やっても」


「本当ですか!」


「えぇ、本当よ。といっても、こんなに清々しく言っておいて一番その依頼に渋っていたのは他ならぬ彼女だけどね」


「そうそう、『修行は実践あるのみ』とか言ったし、それにもとから弟子を取るつもりもなかったとか」


「だが、ミラスでの謎の一行との出会いが彼女の意識に影響を与えた。

 その結果、今一度自身の錬魔に関して考え直す良い機会として受けることにしたみたいだ。

 そう考えると、その謎の一行とやらは聖女様にとっては僥倖の出来事だったかもしれないな」


「ふふっ、そうかもしれません。後で感謝の祈りを捧げませんとね」


「なんかワシ疎外感を感じる......」


 そして話がまとまってから翌日、すぐに私は勇者様方に彼女達の紹介をしました。


 彼女達は一度それぞれを相手に実力を測り、それぞれリューズ様は剣士担当、マイラ様は魔法担当、ハイエル様は遠距離攻撃や魔道具解説、タルク様は剣以外の近接武器全般といった風に四つに分野を分けていきました。


 さらにリューズ様達は「錬魔」の修行にも着手していきました。

 これは一朝一夕で身に着けられるものではないらしく、そこら辺の指南方針は全面的に任せています。


 それから、二週間ほど経った頃にたまたま時間が空いたので修行中のリューズ様達のもとへ訪れ、リューズ様に話しかけてみました。


「どうですか? 勇者様方の様子は?」


「そうじゃな。伸びしろは誰しもが一般人よりも大きい。

 じゃが、如何せんやる気が人によってまちまちじゃな。

 魔族と戦う可能性があるというのに予定の半分も未だに達していない。

 少し幸先が不安という所じゃ」


「そうですか。もともと彼らは別の世界で暮らしていたので未だに環境に順応出来ていないのかもしれませんね」


「といっても、もうここに来て半年近くは経とうとしてるのじゃろ? さすがにその考えは甘すぎる」


「そ、そうですか......」


 怒られてしまいました。私の発言は思ったより過保護だったのでしょうか。

 少しだけしょげているとそこに兵士の方がやってきました。


 私に連絡が来るのは基本的に修道女を通じてですので、直接兵士の方が来るほど火急の知らせなのでしょうか。


「エウリア様、至急お伝えしたいことが......」


「リューズ様もご一緒で構いませんよ」


「あぁ、ワシも聖女がどんな仕事の話をするか気になるからな」


「わかりました。それではお伝えします。帝国ハンブルクが―――陥落しました」


「「!?」」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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