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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第2章 帝国襲撃

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第40話 力の差

―――青糸蓮 視点―――


 化叉の防御力は高い。

 だが、額を切ったように外傷が目に見えて現れてる時点で全くダメージが入ってないわけじゃないだろう。


 つまりはこちらの攻撃の数割減カット率でダメージが入っているということ。

 そのカット率でも抑えられないような攻撃を確実に当てなければ奴は倒れないだろう。

 加えて、相手は同時に攻撃力、速度がともにこちらを上回っている。

 まともに喰らえば終わるのはこっちだ。


「要は相手を回避しつつ、攻撃し続けろってことか。昔と何も変わらん」


 俺達が錬魔で修行し始めて少しした時、レッドアームより強い敵と戦ってきた。

 その時の数々の戦いは常にこのような相手が格上の時。

 ま、あいつを格上と認定するのは癪だが。


 とはいえ、先も言った通りやることは昔と変わらない。

 相手の動きを見て着実に倒すだけだ。


「気に入らないな~。その目が。俺の蹴りを食らって痛み堪えてるくせに全くこっちに怯えてない様子。

 この国の騎士と力試しした時は全員そういった顔したってのにさ」


「確かにもとの世界でのお前らだと臆していただろうな。

 だが、こっちに来ていろいろ経験した今だとお前らのような存在は腐るほどいることに気付いたからな。さすがに慣れた」


「へぇ、そう。だったら、俺が新たな恐怖を刻み付けてやるよ」


 そう言って、化叉は消えるように目の前から姿を消した。

 速度は姿こそ見えないがおおよそどの方向に動いたかわかるぐらい。

 そして、奴は背後に立つとそのまま剣を横薙ぎに振るってきた。


「っ!?」


 しかし、それを体を横に傾けて躱していく。

 振り抜いた剣が僅かに揺らいだ。

 なぜ避けられたって思ってるんだろう。


 そこから俺は後ろ回し蹴りで化叉の横っ腹に蹴りをぶちこんだ。

 しかし、それは直撃こそしたもの、その場で受け止められ奴の左腕でがっしりと抑え込まれた。


「これでまぐれでも避けられない。さっさと死にやがれ」


 そう言って化叉は右手に持った剣を大きく振りかぶって振り下ろしてくる。

 直撃すればまず間違いなく瀕死になるだろうな。

 だが、自分の死の直前で動けなくなるようなことはもうしないと決めた。

 そんな時でも誰かを守るために全力で頭を回したアイツのようにな!


 俺は右手の短剣を順手に持ち替えると化叉の顔面に向かって投げた。

 奴もさすがに顔面だったせいかその短剣を首を傾けて躱し、一瞬振り下ろす手の動きを止める。


 意識は完全に短剣を避けることに集中した。

 目線が物語っている。

 つまりは二投目は避けられないだろう。


 すぐさま左手の短剣も順手に持ち替えるとそれを奴の鎧部分ではない右腕の箇所に刺していく。


「くっ、痛ってぇな!」


「なら、もっと味わっとけ―――感電糸」


 そして、その短剣の柄に繋がった糸から電撃を流していく。それによって化叉は感電した。

 この糸はあらかじめ<電撃>の魔法陣を仕込んでいてそれを手首に巻き、袖の下で隠していたのだ。


 俺とて律のようなどこにでも魔法陣を複写できる異常な技術は持っていない。

 だが、代わりのやりようならいくらでもある。

 ま、それもアイツが魔法陣の可能性を見出さなかったら気づかなかっただろうが。

 

「ああああああ!」


 化叉の叫び声が聞こえてくる。

 しかし、しっかりと足は掴んだままだ。

 俺の魔力で組んだ魔法なだけに俺には感電しない。

 魔法反射で別魔力に変換されれば別だが。


「クソがっ!」


「っ!?」


 しかし、奴はその感電の最中体中が痺れてるにも関わらず動き出すと左手で俺の足を掴んで振りかぶると地面に叩きつけた。


「がっ」


 咄嗟に背中に魔力を集中させて防御に回したとはいえ所詮は咄嗟だったか。

 ただでさえ一撃でアバラと内臓がやられてるのにこのダメージはキツい。

 そう思っている化叉は立て続けに地面で跳ねた俺を思いっきり右脚で蹴り飛ばした。


 それを両腕でガードしていくが衝撃のままに地面を勢いよく転がっていく。

 チッ、魔法防御もだいぶ上がってたか。少し想定が甘かったな。


「だが、あと少しだ」


 俺は痛みを堪えて立ち上がると両手の袖からサッと新たな短剣を取り出した。

 それを見た化叉が強めの怒気で告げる。


「なんだ? 忍者にでもなったつもりか?」


「あながち間違ってはないな。そういう立場だし、そのポジションは嫌いじゃないしな」


「けど、それって要は小細工使わないと勝てないわけだよな?」


「なんだ? 今更小細工使わずに正面から向かって来いみたいな言い方だな。

 もしやそうでないと勝機が見えなくなったのか?」


「減らず口が。だが、そうだとしても逆にお前は小細工使わないと勝てねぇじゃん?」


「お前が求めてんのは殺し合いだろ?

 そこにスポーツのような正々堂々さを求めるなよ。

 とはいえ、そこまで言うなら縛ってやらないこともないが」


「いいねぇ! その意気だよ! どうせ戦うならそう来なくちゃ」


 これで相手は俺が接近してくれば確実に勝てると思い込んでいる。

 挑発して俺に対するヘイトで余計な冷静さを上書きして、その上相手から自分の土俵に上がって来たとなれば自分の思い通りの展開になったと思うようになるからな。


 自分が思い描いた展開が実際に現実になった時、自分はこの盤面を支配していると考える。

 となると、そこからは相手は勝ちムーブに動き出すだろう。そこが狙い目。


 俺は真っ直ぐ化叉に向かっていく。

 それに対し、化叉は不敵な笑みで迎え撃つように走り出し、正面に立てば力いっぱい振り下ろしてきた。


 それを短剣で防ごうとすればそれだけでこっちの動きは止まる。

 避ければ防戦一方で攻めてが無くなる。

 ならば、どうするか―――その攻撃をいなせばいい。


「チッ!」


 攻撃を短剣で受けるもその力を別方向に流していく。

 何も戦闘は刃で受けるばかりが戦いじゃない。

 両者の力が似たり寄ったりならば力押しの先方もなくはないだろう。

 だが、俺は化叉よりも力が劣っている。

 なら、まともにやりあう方がバカらしいだろう。


「なんで当たんない!? どうなってんだ?」


 化叉が先ほどから攻撃を加えているのに俺が避けたりいなしたりしてまともなダメージが入っていない。


 加えて、いなしは一種のカウンターであるが故に奴は俺の攻撃を避けられずに細かなダメージが蓄積されているようだ。


「どうしてか焦ってるみたいだが当然だろ。は戦闘訓練を何も受けていない。お前

 そんなお前が対人戦闘を訓練した俺に力任せの我流が押し通ると思うなよ。

 力はそれを出力する技術によってその効果が発揮される。

 だから、お前がいくら速く動き強く振り回そうともそれの動きを訓練した俺には届かない」


「クソがっ!」


「っ!?」


 その瞬間、俺の短剣は弾かれて無防備をさらした。

 そこに化叉はニヤリと笑みを浮かべて両手で握った剣を力強く振り下ろそうとする。


 だが、そこがそこが甘い。


 到来してきたチャンスを何が何でも得ようと手を伸ばせばその他に視線が回らなくなる。

 「ピンチはチャンス」という言葉があるが、逆を言えば「チャンスはピンチなんだ」


「チェックメイトだ」


 俺は戦闘の最中に仕掛けていった糸が繋がった右手をレバーを引くように引いてみせた。

 その瞬間、化叉の両手両足が勢いよく開かれて、空中で大の字を作るように浮いた。


 化又は自分に起こったことが理で奴は混乱したように左右を見渡している。出来ていない


「な、何をしやがった!」


「お前、俺の役職を覚えてるか? 戦闘中にも散々使ったと思うが」


「あ? 糸だろ? お前の魔法は......ってまさか!?」


「あぁ、そのまさかだ。お前が空中で突然無防備を晒してるのは戦闘中に俺が仕掛けた糸によるものだ。

 通常よりも細いが耐久力のある糸。それがお前の両手両足に巻き付き、壁と繋がっている」


 戦闘最中に着地狩りをされるタイミングで右脚、ドロップキックした際に左腕、感電させる時に右腕、先の戦闘中に意識が外れてる隙に左足。これからの準備の全てだ。


「お前は強い。それは認める。だが、それはあくまでその手にある紛い物の力だ。

 純粋な力で言えば好き勝手生きていくには全然経験値が足りてない」


「ハッ、このタイミングで説教か。お前は主人公気取りか?」


「別にそんなことを思ったことはない。むしろ悪役だ。だが、それでいい」


「お、おい、待て」


 俺は短剣をしまうと大きく右拳を振りかぶった。


「同郷のよしみだ。殺さないでやる。生殺与奪はこっちが握ってるからな」


「ちょ、待て―――」


「鬼人拳術―――白蓮」


 俺の拳は化叉の鎧に突き刺さり、その鎧を壊しならさらに深く抉っていき思いっきり吹き飛ばす。

 地面を転がっていった奴はそこからもう起き上がることはしなかった。


「地に足ついてなかったら百パーセントの威力をその身に受けるしかないからな。さすがに倒れたか。

 とはいえ、防御力のせいで気絶させるにも全力で殴らざるをえなかったな。拳が痛い」


 右手を握ったり開いたりしながら感触を確かめていく。

 そして、次に移した視線は化叉の右手にある刻印。


 近づいて見てみても過去に村にあった本ではそのような刻印について記されたものは一切ない。

 ま、単にたまたまなかった可能性もあるが、それでもその力は後から授かったものだということは理解できる。


「この力が化叉の他に少なくとも北谷と槍弥、そして王といる。全員、気をつけろよ」


*****


―――堅持康太 視点―――


―――18時36分頃


 現在、おいらは作戦当日前に奴隷商人から解放した奴隷の子達が匿われている結界で待機していた。

 そこにはすぐに皆が逃げられるように馬車が用意してあり、おいらはその全員が乗れるように馬車を改造中だ。


 奴隷の子達は皆不安がった様子でありながら、おいらの行動に少し興味があるのか遠巻きに見ている。

 一応、おいら達が家に帰すということを伝えてあるんだけど、さすがにそう簡単には信用してもらえない感じだ。


 にしても、皆は今頃どうしてるだろうか。皆無事であろうか。

 おいらは役職や体型的に皆よりは身軽に動けない。

 直線的動きだったらかなり速く動けるけど。

 だから、この作戦からは外された。けど、別に気にしてはいない。


 律は助けるために必死で考えてそう配置したのだ。

 それにおいらは子供が好きだし、相手がどんなであれ守れるということに誇りを持っている。

 もう臆して動けないなんてことはしたくない。


「おっ、ちょっと散歩に出かけたら面白い奴がいる」


 その嫌な声においらの作業の手は止まる。そして、振り返れば―――北谷重太の姿があった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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