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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第2章 帝国襲撃

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第26話 人の皮をかぶった邪悪

 村長のおじいちゃんから聞いたことはざっくり言うとこんな感じだ。


 僕達が助けた子供達以外にもその村では子供や若い娘が襲われる事件が多発していたそうで、とある獣人の少年が盗賊達の跡を追っていくとこの街に入っていったそうだ。


 その街について調べてみるとその盗賊達はこの街の奴隷商人に攫った人達を売っているらしい。

 そこまでの調べはついたものの、街にはたくさんの駐屯兵がいて助けるのも厳しく、加えて下手に刺激すれば村事態に被害が及ぶとなってずっと動けない状態だった。


 そんな時、僕達がやって来て村長は「どうか村と子供達を救ってくれ」と頭を下げてきたのだ。

 その願いを聞き入れ、僕達は今行動している。


「よし、行くか」


 気合を入れて路地に入っていく。

 賑わいの溢れた通りから雰囲気が百八十度変わるように物静かで暗い。

 汚れた服を着た浮浪者達が壁に寄りかかりながら、目を細めて僕を見てくる。

 すると、前からパンクな格好をした三人組の粗野な男達が向かってきた。


「よう、ボウズ。こんな所に一人で来ちゃダメだって両親に教わらなかったのか?」


「怖い大人に脅され、仕舞には死にかけるような思いをしながら金を貪り取られるってな」


「さらに怖い人達はそんなお前を奴隷として売ってしまうそうだがな」


 顔と口調で圧をかけてくる。しかし、恐怖心は微塵もない。ましてや興味もない。


「先急いでるんで」


 そう言って僕はその三人をやり過ごすとすぐさま僕を追いかけてきた。


「てめぇ、待ちやがれ!」


「無視とはいい度胸だな!」


「こっちが親切にしてやればその態度! 痛い目に遭う覚悟は出来てんだろうな!」


 当然ながら出来ていない。

 加えて、彼らがこれ以上僕の後ろをついてくることもない。


「「「!?」」」


 僕の後ろをついてきた瞬間、どうやら僕が足から転写した<麻痺>の魔法陣に引っかかったらしい。

 そして、三人は体を痺れさせて動けなくなった。


 周りの人達は魔法を現象化する名前すら言ってないないのに魔法が発動したことに驚いている様子だ。


 それだけこの世界では魔法陣というものの存在の弱さが浮き彫りになっているということだが。

 ま、誰も足から魔法陣が描かれたなんて思いやしないだろうし当然か。


 そして、そのまま路地の奥へ進んでいくと目を動かしながらこの街について詳しそうな浮浪者を探した。

 すると、粗悪品ばかりだがマーケットを開いている人がいたので、そこに近づいていく。


「良いもの売ってますね。一番いいやつってあります?」


「一番いいのはこの種だな。植えたら空飛ぶ葉っぱが出来るっていう。

 ま、誰も信じちゃくれないが―――」


「なら、それを貰うよ。いくら?」


 そう言うとそのおじいちゃんは僕を睨むような眼で見て聞いてくる。


「お前さん、何をしようとしてる?」


「何ってそれを買うつもりだけど」


「そういうことじゃねぇ。いや、単に教える気がねぇだけか。ほら、一万ギュエンだ」


「吹っ掛けるね~。ま、いいけど。

 別に教えてもいいけど、代わりに僕の質問に答えてくれるならね」


「内容次第だな」


 そう言うおじいちゃんに僕は種を受け取ると質問した。


「この街の領主の家ってどこにあるか知ってる?」


「......」


「安心してよ。おじいちゃんは知らぬ存ぜぬでいれば何も問題ない」


「......この先を真っ直ぐ行くと通りに出る。

 そこを右に曲がっていけば、十字路に出るからそこからならもうデカい家が見える」


「わかった。ありがとう」


 僕は立ち上がるとおじいちゃんはすぐに言葉を投げかけてきた。


「さて、こっちは質問は聞いてやったぜ。それじゃあ、さっき質問を答えてもらおうか。

 人目につかないようにわざわざ路地(やみ)の住人から情報誌入れるようなこと情報誌→情報仕入れる


「ないよ。全く。でも、場合によっては出来るかもしれない。

 僕がやろうとしていることはただ一つ自由を奪われた子供達を救いに行くだけだよ」


 そして、僕はおじいちゃんから去っていた。

 通りに出る最中、何度かゴロツキに襲われたがそれは先ほどの三人組と同じように処理していくと通りに出る。


 その通りを見て最初に思ったことが小奇麗な場所だということ。

 最初に通った場所に比べれば静かで、通りを歩く人の格好はオシャレで、冒険者風の格好はちらほらとぐらい。


 例えるなら最初の通りが一般人の層で、今いる通りは貴族とか比較的裕福な人達がいる層な感じだ。

 おじいちゃんの言葉通りそこから右に曲がって歩いていく。


 すると遠くに見える十字路の方で貴族用の装飾が施された馬車が通って、その後に若い少女を乗せた奴隷商人の馬車が通った。


 行く先は左方向。

 右側は一般層のはずだからその逆の貴族層のさらに奥へ向かう先にあるのは......。


「やはり領主の屋敷か」


 足早に十字路に向かって通った馬車の行く先を見てみれば、わかりやすいほどに一本道の通りの先に屋敷が存在感を放つように立っていた。


 僕は一目のないところに一旦隠れると自分の体に<気配断ち>の魔法陣を発動させ、すぐさま領主の方へと向かっていく。


 あくびをする門番の横を通り抜けるようにジャンプで鉄柵を超えると<魔力探知>で屋敷の中の人の数や配置を探った。


 二階に一人、一階に二人。気配の大きさからして大人三人か。

 加えて、明らかに地面より下の位置―――つまり、地下に気配が二つ。

 そのうち一つの気配が今にも消えそうなほど弱弱しい。


「侵入なら二階がよさそうだな」


 ジャンプで屋敷の屋根に上ると使用人が換気のために開けていた窓から侵入。

 使用人に<催眠>の魔法陣を転写して眠らせるとその部屋を出て一階に向かっていく。


 すると、階段を降りようとしたところで若い男と妙齢の女性。

 恐らく領主の妻と息子が話しながら二階に向かって来るので、<接着>の魔法陣で壁に張り付きながらやり過ごしていく。


「そういえば、さっきの奴隷商人って父上が呼んだものだろ? ってことは、また買ったのか?」


「みたいね。はぁ、また無駄な買い物をして。少し叱らないとダメそうね」


「とはいえ、結局母上も嬉しそうにしてるじゃないか。

 観察ばっかりでつまらなくないの?」


「あの薬漬けにしていく姿がいいんじゃないの。

 絶望の中で見つけた甘美な蜜を貰おうと必死に足掻く姿は見ていてゾクゾクするわ」


「母上の趣向は理解に苦しむな~。泣き叫ぶ姿見た方がいいと思うんだけど」


「それだとすぐに終わっちゃうじゃない。

 長期的に楽しめるのが大人ってものよ」


 そんな話をしながら二人は階段を上がっていく。

 そろそろ使用人に仕掛けた魔法陣の効果も切れる頃合いだ。

 二人の足止めは未だ掃除が終わっていない使用人が怒られる形で時間を稼いでくれるだろう。


 にしても、先ほどの会話でこの領主の裏でやっていることは大体理解できた。

 吐き気がするほどの邪悪ってことだ。


 一階に来ると足から<音響>の魔法陣を発動させて部屋全体の構造をソナーで調べていく。

 どうやら地下への入り口は階段の裏らしい。


 そこに向かえば何もない壁があるように見えるが、それはただの入り口の壁に貼り付けた<幻影>の魔法陣による幻の壁。

 <看破>の魔法陣を目に転写すればそんな幻に隠された闇も暴ける。


 ドアノブに手をかけて地下へ入ろう―――とするがすぐに止まった。

 侵入者センサーようの魔道具が仕掛けられている。

 そこから出る赤い線に触れればブザーやら侵入者対策の罠やらが起動するのだろう。


 この場をやり過ごすには避けて通るか魔道具を壊すかの二つ。

 ただ前者は失敗すればセキュリティが強くなるし、先ほど運ばれた奴隷の少女達を助けるのが困難になる。

 後者は単純に壊れた音で気づかれる可能性があるので避けたい。


 とまぁ、本来ならこの二つで迷うかもしれないが、俺は鍛え上げた魔法陣によって第三の選択肢を作り出すことが出来る。

 それは魔法陣を魔道具に飛ばし、<結界>で覆ってしまうこと。


 魔法の中で唯一<結界>だけは範囲となる魔法陣を作ることが必要なのだ。

 そして、それは最低三つは魔法陣が必要で、自身に張り付けて移動ということは出来ない。


 なので、本来ならここで<結界>という選択肢は出てこない。

 なぜなら、レーザーを防ぐために<結界>の天井を張るなら、それを仕掛けるには一回必ずレーザーを避けて仕掛けなければいけないから。


 ただし、僕は魔法陣を特殊な例で<結界>を作り出すことを容易にした。ま、転写だけどね。


 僕は魔法陣で魔導具のすぐ下の壁に魔法陣を仕掛け、それを歩きながら階段の通路の末端につけられてる魔法陣まで繰り返していく。


 それによって、僕の魔法陣は<結界>を作ってレーザーを防いだ。これで当たる心配はない。


 暗い通路に加えて、魔道具は壊れていないのでオンオフを切り替えた時の不調で気づかれることもないし、<結界>は透明だから普通に見ただけじゃ絶対にわからない。


 安心して階段を下りていき、その先にあった扉を抜けていくとそこにあったのは牢獄であった。

 ニオイも酷い、血と糞尿が混じったような悪臭だ。


 その牢獄の部屋を一つ一つ見ていけば、すでに白骨化している人や死んで腐った姿の人。

 薬物症状のような人や体に無数の傷がある人といる。


 そして、奥の部屋を見てみれば―――一面の壁が血で真っ赤に染まっていた。

 壁には貼り付けにするような鎖付きの手錠があり、その周辺には様々な拷問道具がある。

 どうやらこの一家は奴隷商人から奴隷を買っては影で残虐非道な行いを繰り返していたらしい。

 それに先ほどの会話からすればそれを楽しんでいる様子ですらあった。


 その中で何が一番悪いかとすればそれは―――それらの被害者は全て獣人であったということだ。


 白骨化の死体も腐った死体も薬物に犯されてる少女も傷つけられた少女も全て獣人特有の耳と尻尾があるのだ。


 つまりはこの一家にとって獣人はこのような扱いをしても許されると思っている価値しかなく、彼女らの幸せはこの一家の僅かな愉悦のために潰され、殺されていく。


「許せないな」


 思わず沸き上がった殺意だが、すぐに呼吸を整えて止めた。

 そして、必ず助けると勝手な約束をしながら一度この場を立ち去った。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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