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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第6章 記憶の継承

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第186話  本当の自分#4

――ヨナ視点――


 城に入って私はすぐに最上階へと向かおうとしました。

 そこにきっと私の会いたい人――セナちゃんがいると思って。

 なんとなくわかるんです。そこに気配があるんです。

 しかし、そう簡単には行かないようです。


「あれ? 城の内部が違う......」


 私は自分で言うのもなんですが、姫でした。

 なので、自分が住んでいた城の内部のことは当然わかるのですが......。

 もはやそんな次元じゃないという感じになっています。

 

 入ってすぐに見えたのは、正面と左右に伸びる階段。

 外部の城もそうですが、内部の装飾は私の記憶に基づいて和風であり、木製のそれが二階に続いています。


 私が暮らしていた城に、城の構造で入ってすぐに三方向に階段なんてありえません。

 なので、この時点で何やら妙な感覚がしますが、とりあえず進んでみなければわかりませんね。


「ひとまず正面から上っていきましょう」


 階段を上がると、すぐにふすまが正面に見えてきて、それは近づくと自動で開きました。

 瞬間、視界に広がったのは僅かな足場と、底が見えない奈落。

 まるで私がここを進むのを躊躇わせるように。


 今いる位置から人ひとり分が立てるような足場までは、ジャンプすれば届くでしょう。

 ですが、一度進んでしまえば、その後はジャンプで乗り継いでいかなければ進めなさそうです。


 それに、この底が見えない奈落は一体どこへ続いているのか。

 ここが私の記憶の中であるのは確かですが、やはり別の意思が介入しているとしか思えません。


「ひとまず、別の道の方も確認してみましょう。

 もしかしたら、ここより進みやすい道が.......ってあれ?

 道が......無くなってる?」


 私が後ろを向くと、その前には壁がありました。

 そう、退路が無くなっていたんです。進んできた道に戻れなくなっていたのです。

 どうやら一度階段を上れば、もう後戻りはできないようですね。


「ということは、落ちればどうなるかわからないここを行くしかないんですね......」


 もう一度振り返った私は、奈落と僅かな足場の方へ視線を向けました。

 そして、大きく深呼吸すると、「よし」と小さく呟いて気合を入れます。

 確かに怖いですが、私はもうかつての私じゃありません。この程度なら!


「ふぅー、行きます!」


 私は後ろへ足を一歩引いて、逸らした上半身の僅かな移動を勢いに、左足で踏み込んでその場をジャンプしました。


 そして、向かった先はここから一番近い足場。

 それは中心から僅かに右側へとズレていて、そのため右足で足場を捉えます。

 瞬間、勢いをそのままに右足で跳躍。


 それから向かうは、反対側の中心から左側にある足場。

 それを今度は左足で捉え、再び右側へ移動。

 その後、それらを数回繰り返し、ついに反対側のふすまにやってきました。

 ふすまは閉じたままでしたが、先ほどと同じなら――


「開いた!」


 私が一定の距離までふすまに近づくと、目の前のふすまは自動で開き、その先へ着地。

 すると、背後のふすまは勝手にパンッと閉まり、後戻りはできなくなりました。

 ふぅー、緊張しましたが、なんとか一発で行けました。さて、次です。


 私の目の前には再び三方向の道が示されました。

 ただし、先ほどの階段とは違い、あるのはふすま。

 どのふすまも先が見えないように閉じられています。

 恐らくどれかを選べば、先ほどと同じように道が無くなるのではないでしょうか。


「先程は正面を選びましたが、次はどの道へ......」


 <魔力探知>を使用してみましたが、どれも同じぐらいでわかることはなく。

 まぁ自分の意識の中って考えれば当然の結果と言えるのでしょうね。

 ん......? そういえば、ここは自分の意識の中なんですよね?

 ということは、自分の意思で自由に何か作り出せるってことですよね?


「先程お花を咲かせた実績もありますし、恐らく......」


 目を閉じ、脳内で武器をイメージしました。

 すると、両手にイメージ通りの形状の感触が伝わり、そしてずっしりとした重みも感じました。

 そして、目を開ければ、そこにはイメージ通りの武器が。


「出来た!」


 私が作り出したのは、トゲ付き鎖鉄球です。

 その武器は鎖を使って鉄球を振り回し、敵を攻撃する中距離武器。

 なぜこの武器を作り出したのかは、当然目の前のふすまを攻撃するためです。


 そう、ふすまをくぐって別の道が閉ざされるなら、その前にこの武器で壊して中を見よう大作戦です。


「さて、やりますよー!」


 私は頭上で鉄球をブンブンと振り回し、その回転した鉄球を勢いよく正面のふすまに向けました。

 鉄球は勢いよくふすまに向かい、ガンッと直撃しました......ガンッ?


「傷一つついてない......」


 ふすまの音とは思えない音がした後、鉄球が直撃した箇所には凹みも何もありません。

 まぁ、予想は出来てましたが、そう簡単じゃないですよね。


「あっ」


 その時、私の手元から武器が強制的に消えました。

 その代わりに現れたのは、三方向のふすまがある僅かな空間の中心に現れた看板。

 木製で出来た簡素なそれには、文字が一言だけ――「武器禁止」。


「あらら、どうやら無茶しすぎたようですね」


 ですが、これで私とは別の意思が介入してることが確定しました。

 嫌な気配がしないので、敵ではないと思うのですが......。

 とはいえ、そうなるとこの意思はセナちゃんの仕業になってしまいます。


「セナちゃんは私に近づいて来て欲しくないのでしょうか?」


 それがどうかはわかりませんが、それを確かめるためにも近づかなければなりません。

 ひとまず、直観で左に進んでみて、それから考えてみましょう。


 そして、私は左の方へ進んでいきました。

 ちなみに、その際後ろ向きで進んでみましたが、特にふすまが開いた音はしませんでした。


「今度は長い通路......」


 ふすまが見えた先には、畳が敷かれた一直線の通路。

 念のため背後を見てみれば、案の定退路は断たれていました。

 視線を畳の方へ戻せば、両脇にはたくさんの障子が。

 そして、その障子の何か所かには複数の穴がありました。


 障子に貼られている紙が内側に向かって破れてる辺り、外側から何かが飛び出したと考えるべきでしょうか。

 となると、私がこの道を移動中に槍や針らしきものが飛んでくる可能性があるんですね。

 ちなみに、上と下には......無いようですね。


「まぁなんであれ、私にはここを進むしか選択肢がないわけですが」


 私は再び深呼吸すると、勢いよく走り出します。

 すると、私が通る直前に、先ほどの穴の開いた障子から槍が飛び出してきました。

 その槍は右側から飛び出してきたので、左側に距離を取りつつ、槍が迫る前に通り過ぎます。


「真ん中より先に来ない......?」


 槍を避けると、通路を横切るほどには槍は届きませんでした。

 つまりは、道を三列に分けたとすると、右側から飛んできた槍は右側と中央にしか届かなかったということです。


 先程は運よく槍が通り過ぎる前に抜けられましたが、私か槍のタイミングが少しでも狂えば当たることもあり得たので、この情報は嬉しい誤算と言えますね。

 私はその情報を元に、左右から来る槍を躱しつつ、ずんずんと通路の先を目指していきます。


「......にしても、なんというか長いですね。

 先程見た時は、目測で三十メートルぐらいで、もうその距離はとっくに過ぎてるのに」


 先程から景色が変わらないというか、進んでいる感覚はあるのに、前に進めてない気がすると言いますか。

 床は動いてる感じはしないので、単純に通路の距離が伸びてる......うん、背後を見てもそのような感じですね。


「となれば、このまま走り続けるしか......っ!」


 その時、前方数メートル先の障子に穴がありました。それも両脇。

 これって......どう考えても詰んでますよね。

 いや、そう決めつけるのはまだ早い。

 ここまでの道中、理不尽な要素は何もありませんでした。

 つまり、この状況も何か仕掛けがあるはず......っ!?


 その時、私の数メートル前で槍が飛び出しました。

 その槍は棒の部分がトゲ付きであり、当たれば危なそうです。

 ですが、その槍には少しだけ差異がありました。


 左側の槍はいつも通りの高さですが、右側の槍はいつもよりやや高い位置にあります。

 そう、下をかがめばそのまま通り抜けられそうな丁度いい感じの。

 また、変化はそれだけではありません。


 背後からもガタンと音がして、チラッと確認してみれば、天井から板が下りてました。

 その板には凶悪な剣山となっており、一定のスピードで追いかけてきます。

 どうやらここからはゆっくりとしている暇はなさそうです。


「となれば、ここは勢いよくくぐるしかなさそうですね。となれば!」


 私は右側の槍の直前で思いっきりスライディングしました。

 そして、すぐさま立ち上がって背後の剣山に追いつかれないように走り出します。

 すると、再び数メートル先に両脇から槍が。


 今度の槍は右側が通常の高さで、左側が極端に低いです。

 まるで足元を狙ったかのような位置。

 なるほど、今度はジャンプして飛び越えろってことですね。


「せい!」


 私は左側の槍を思いっきり飛び越え、転ばないように注意しながら着地し走り続けます。

 その後も同じように槍の回避を繰り返していくと、次第に正面のふすまが近づいてきました。

 どうやらゴールが見えてきたようですね。


「っ!?」


 そして、後十メートルでゴールと思ったその時、両脇の穴の開いていない障子から槍が飛び出してきました。それも高さもすべて埋まるように。


 スライディングでくぐれそうな場所も、ジャンプして飛び越えらせそうな場所もありません。

 ここに来て避ける場所も無い。これはどうすれば!?


 両脇の障子を壊せばいけるでしょうか?

 いえ、先ほどの鉄球を投げつけたふすまと同じように破壊不可の可能性があります。

 となれば、逃げ道は無し。背後からは剣山が迫って.......!

 私は、私は.......。


「私は信じます!」


 これは恐らく何かの試練のはず。

 恐らくセナちゃんが私を試しているんだと思われます。

 それがどうしてかはわかりませんが、そうとしか思えない。


 ならば、セナちゃんはずっと私を守って来た。

 魔物と戦えない私を、心の弱い私を、助けてきた。

 そんなセナちゃんが私を傷つけることは絶対にない!


「進めぇぇぇぇ!」


 今にも止まりそうな足を無理やり動かし、直前にある槍に突っ込んでいきます。

 瞬間、槍は凄い速さで引っ込み、正面のふすまが開きました。


「やった......あ!」


 それが分かった瞬間、私の足はもつれ、そのまま転がりながらふすまを抜けました。

 そして、そのふすまには追いかけて来た剣山がぶつかり、針先はあと数センチで私の体を刺すところでした。


「た、助かった......」


 安堵とともに、大きなため息は出ました。

 少しここで休憩することにしましょう。

 にしても、どうしてセナちゃんはこんなことを?

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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