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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第6章 記憶の継承

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第179話 いざ出発、海底神殿

「にしても、そう考えると彼奴が随分と可哀そうじゃな」


「ん? 誰のことです?」


「お主のパーティに唯一独身のケンヤのことじゃ」


 その言葉に僕はヨナと顔を見合わせた。

 唯一独身が拳矢というのはどういうことなのか。

 もしかして、僕はヨナと恋人同士だと思われてる?


「僕とヨナは別に付き合ってるわけじゃないよ?

 まぁ、薫とミクモさんは自他ともに公認のカップルだけど」


「それからレンさんとウェンリも.......実質、はい」


「........ん?」


 そんなことを僕達が言うと王女様は「何言ってんだコイツら?」とでも顔をして見てきた。

 なんだその顔は? 確かに普通の男女よりは距離が近いと思うが、それはアレだ。組織で行動してきた故の距離感だ。


「いやいやいや、先ほどのあの光景を見せられて『はい、そうですか』となるわけないじゃろ。

 それにそちはそのような関係性でよいのか?」


「そ、そうですね......あはは......」


 ヨナが乾いた笑いを浮かべた。まぁ、こんな答えずらい事聞かれて、しかも僕がいる近くで答えられるわけないよな。そんなことしたらびっくりだよ。


「そ、それよりも、あちらの方で大勢の人が集まっていますが何か催しが?」


 ヨナは今の話題から逃げるように話題を変えた。

 そのことに不満そうな王女様であったが、そこから何も聞かず「行ってみるか?」とだけ言って案内してくれた。

 移動すること数分、砂浜には大きなシートが広げられており、そこには見覚えのある魔物が横たわっていた。


「アレって.......シーサークラーケンか?」


 シーサークラーケン......ここに来る道中で戦った海の大型魔物である。

 タコの胴体を持ちながら、足先にはシーサーペントという魔物でできた混合獣(キメラ)

 あの時はロゼッタと一緒に消し飛ばしたはずだが.......これは一体?


「アレはシーサークラーケンの幼体じゃ。ま、幼体といっても他の魔物の数倍はあるけどな。

 本来はああやって定期的に仕留めては数を減らして居る。

 なんせ繁殖力が高いからな。加えて、美味い。

 じゃから、わらわ達海の民以外にも魔物によって多く狙われるこの魔物じゃが、稀にああいう歴戦個体が生まれる。

 その時がまぁ命がけじゃな。彼奴らからの積年の恨みともいえる」


「私達は丁度そのタイミングでここにやってきたわけですね......」


「稀にあるタイミングを引くというはツイてるようで、あれと戦わされると思うとツイてないよな」


「まぁそう言うな。わらわ達はお主達に非常に感謝している。

 今わらわ達がこうして元気を振舞えているのがいい証拠じゃ。

 というわけで、これでわらわからの案内はしまいじゃ。後は存分に楽しむがよい」


 その言葉で王女様からの祭りの案内は終わった。

 とはいえ、終わったところで王女様をこのまま一人にしておくのもどうかと思ったので、結局三人で回ることに。

 宴では時間経過で楽しい催しが開催されており、それは見るだけでも面白かった(途中、薫が参加していたものもあった)。


 そして何より、やっぱり海鮮料理が本当美味い。なんかもうね、言語化できないぐらい美味い。

 そんな時間はあっという間に過ぎていき、いつの間にか夜になっていた。

 夜の海を眺めていると、後ろからヨナが話しかけてきた。


「リツさん、今時間ありますか?」


「あるけど......どうしたの?」


「いえ、大したことではなくてですね.......その.......す、少しお話がしたくてと思いまして.......」


 暗くて判別しにくいけど、なんだかヨナの頬が赤い気がする。

 そういや、色々なものを見てる時に王女様に色々耳打ちされてたな。

 あの時も顔を赤くしていたけど、一体何を吹き込まれたのやら。


「王女様はもうすでに城に戻った感じ?」


「そうですね、今頃お仕事で泣き事を......はっ! だ、ダメですよ! 女性の前で別の女性の話をしては!」


「え......あ、ごめん.......」


 指摘されて思わず謝ってしまったけど、今のヨナらしくなかったよな?

 あんなギャルゲーに出てくる女子のようなハッキリとした嫉妬をするタイプじゃないし。

 急にどうしたんだ? やはりあの王女様に何か吹き込まれたのか?


「あ、その、別に怒ってるわけじゃなくてですね――」


「大丈夫、わかってるから。それよりも何を話したいんだ?」


 そう聞くとヨナは「そうですね」と呟きながら、そっと砂浜に座る。

 そして、僕を誘うように隣の砂地を叩いた。

 その行動に誘われるように僕は座った。


「私は少しこの旅の終わりを考えていました」


「旅の終わり?」


「早計すぎる話だとは思うんですが......三つ目の神殿を見つけ、これが終われば守護神の数的に残りは一つ。

 そうなるとこの旅もついに終わりを迎えるんだなぁって思うとなんだか急にこれまでの旅が遠い過去のように感じてきまして.......おかしいでしょうか?」


「別におかしくないよ。言われて初めてもう旅が後半に来てるような気がしてきた。

 そう考えると確かに......なんだか寂しくなってくるなぁ」


「リツさんはもし旅の終わりを考えた時、何がしたいですか?

 考えられる範囲で構いません。良かったら聞かせてくれませんか?」


「そうだね......今の考える範囲だと――皆の未来が見たいかな」


 僕はこの世界に召喚されてやってきた。

 最初は無力だと思ったこの力も誘ってくれた友達のおかげでここまでこれた。

 もちろん、そこからの旅も辛く苦しいものはあった。

 だけど、今こうしてここにいられる。それだけで僕は満足だ。


 どうしてそうも達観してるのかはわからない。

 だけど、学院街で聞こえたあの声の時から僕の中で何かが変わった気がする。

 本質的には僕なんだけど、どうしてかその先に僕がいることが想像できない。

 つまり、どこかでいずれ死ぬんじゃないかと思っているということだ。


 おかしな話だ。特に絶望したわけではないのに自分の死がそう遠くない未来にある感じがする。

 皆と同じペースで生きていけるような気が僕にはあまりしないのだ。

 だから、僕にできることはせめてあと少し皆のが楽しく過ごしている未来が見たい。

 とはいえ、さすがにこの回答はヨナには出来ないよな。


「ごめん、漠然とした答えで。今がこんなんだから僕はそうした未来が見たいんだと思う」


「そうですね、今の私達は大きく言えば世界の敵みたいな立ち位置ですものね」


「逆にヨナはどう思うんだ? この先何したいとか思うことある?」


「そうですね。私はもっといろんな場所に行ってみたいです。

 この世界はもっと広くてまだまだ見たことないものがたくさんあって、その世界を隅々まで見たいと思っています」


「いいね。それは凄く楽しそうだ。その時は一人で行くのか?」


「いいえ、よろしければ皆で行きたいです。この皆で色んな感動を共有したいです。

 けど、そ、そうですね......り、リツさんが望まれるのであれば別に二人っきりでも.....」


「それも楽しそうだね。やること全部終わったら考えようか」


「っ! はい!」


 ヨナは嬉しそうに笑った。僕と一緒に旅ができることが余程嬉しいみたいだ。

 そういう未来が来るならそれが一番。この死ぬことを認めているような思想が消えるなら。


「そろそろ戻ろうか」


「そうですね。あんまり長居していると皆に心配されてしまいますし。

 なによりアイちゃんに『独占しすぎ』って言われちゃいますし」


「その場合、あの子の怒りを被るのは僕だけどね」


 そして、僕達は雑談しながら城へと戻った。


*****


 それから数日後、僕達は着々と海底神殿へと挑む準備を着々と済ませ、ついに行く日がやってきた。

 案内人としてついていく王女様がリーダーのように僕達に声をかけた。


「お主達、準備は済ませたか? これから向かう場所は神の御所。

 本来であれば王族の中でも神の巫女たるわらわとわらわが信用のおける相手しか入れない場所じゃ。

 そこによそ者であるお主達を入れるというのはまずありえんことじゃ」


 王女様は僕に近づくと胸にノックするように拳を当てた。


「だがまぁ、事情が事情じゃ。それに関してお主達が心配することは何もない。

 ただ神殿に入った後のことに注意を向けていればそれでいい。

 とはいえ、先も言ったように神殿は神の御所。あまり壊してくれるなよ」


 王女様はチラッと僕とロゼッタを交互に見た。どうやらだいぶ警戒されてるらしい。

 まぁ、災害とされたシーサークラーケンを倒したから当然か。

 とはいえ、ロゼッタと同じに思われるのはだいぶ心外だけど。


「大丈夫だって王女様。アタシは良識はないが手加減はできる。

 問題はこっちだ。良識はあるが手加減は出来ないし、何だったら容赦がない」


「おい、僕は良識も手加減もあるぞ。容赦は相手次第だ」


「わらわから見ればお主達二人とも十分に脅威じゃ。

 とはいえ、無力なわらわに止めることは不可能。なんとか自制してくれ」


 王女様は呆れたような表情でため息を吐いた。やはり同類扱いされてる。

 そして、手を二回叩くと複数のメイドを呼び出し、彼女達は僕達全員にとある草を渡した。


「それは呼吸藻と呼ばれる特別な藻じゃ。

 それを飲めば数時間、わらわ達魚人族のように水中で呼吸をすることができる。

 安心せい、地上に出たとしても普段通り呼吸できる」


 つまり、メリットしかないアイテムというわけか。

 なにこれ、あるだけ全部欲しい。


「ちなみに、水中で効果が切れた場合でこの藻を口に含んだらどうなる?」


「そうじゃな。その藻の効果を試してもらった機会が少ないから詳しいことは言えぬが、恐らく問題なく機能するとは思う。

 しかし、藻を含むために口に含んだ水をどうするかとか、水中で藻を飲んだ場合の呼吸の変化がどうなるかとかは全然わからん。そこだけは留意しておいてくれ」


 王女様からそう注意喚起された後、僕達は手にした藻を口に含む。

 水分を含んだ藻はヌメヌメとしており、葉についていた小さな実がプチプチと爆ぜた。

 触感としては悪くないが、このヌメヌメとした感じは苦手だな。


 藻を飲んで呼吸をしてみる。言っていた通り特に変化はない。

 うん、地上での呼吸は普段通りだあ。後は水中での効果だけど――


「では行くぞ、お主達。海底神殿へと案内してやろう」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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