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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第6章 記憶の継承

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第163話 やってきたは海

「さて、そろそろ次の行動を移そうと思う」


 僕がそう言えば、皆は一斉に耳を傾けた。

 現在、円卓会議もとい仲間の皆が大きなテーブルについている。

 そして、今回は特別ゲストといえる拳矢の姿もある。


「どこに行くつもりだ?」


 蓮が率直に聞いてきた。

 なんだかんだで副リーダー的なポジションに落ち着いてきたな。

 まぁ、僕が個人的に頼みやすい相手が蓮というだけなんだけど。

 大体こうして聞き返してくるのが彼だ。


「次は魚人島に行こうと思う」


「「「「「魚人島?」」」」」


 全員して同じ言葉を繰り返し、頭を傾げる。

 僕がその言葉を言うのがそんなにおかしいか。


「魚人島っていうとアレですよね? 私の故郷と同じ島国があり、獣人族の魚介版みたいな人達が住む島」


「アタシも聞いたことあるわ。前に色んな場所を旅したっていうエルフから話を聞いたことがある。

 海に面してるだけあって漁業が盛んで、魚介系の料理が有名な場所」


「そんでもってあそこからしか輸入出来ないハードシェルって貝が、色んな武器を研磨するのにとてもいいんだよ。

 けど、あんまし取れないってことで毎回買うのに高騰すんだよな~。

 かといって、わざわざ島国まで行くのは遠いし、めんどくさいし」


「そやけど、あそこって有名なビーチがあったはずやで。

 それにあそこは基本温暖な気候やさかいか、あそこで自生するコータルオイルでのマッサージ有名で、前にいっぺん言うて以来もういっぺん行ってみたかったのよね」


 ヨナ、ウェンリ、メイファ、ミクモさんが急に元気にしゃべり始める。

 聞いていれば完全にこれから観光に行くって雰囲気。

 まぁ、別にいいんだけど、やることさえやってくれれば。


 僕は一つ咳払いして、空気を戻す。

 ともあれ、僕が説明しようとしていた魚人島の話はそんな感じだ。

 さすがに現地民の情報網には劣るか。


「それで、そこではどんなものを取りに行くの?」


 薫が話の腰を戻してくれた。サンキュー。


「学院の禁書庫で知ったんだけど、あそこには遺跡がある。

 長い事放置だったけど、あそこには前に行った森の中にある遺跡にいたフェニックスみたいなやつと、砂漠での山のようなデカい亀みたいに守護者がいるみたいなんだ」


 そういうと拳矢以外の皆して「そんなこともあったな~」と言葉を零していく。

 どうやら皆してあの激務の中で忘れていたようだ。

 まぁ、色々あったしな。仕方ないっちゃ仕方ない。


「というわけで、これから向かう先は魚人島。出発までにあまり時間かけても仕方ないし、三日後にここを離れる。それでいいかな?」


 多くの人達が異議なしといった感じで頷く中、珍しく康太とメイファが手を挙げた。

 ん? ここで意見を出してくるなんて珍しい二人だ。


「どうした?」


 僕がそう聞けば、康太とメイファが一度顔を見合わせて頷き合い、言った。


「おいら達は残るよ。この街を誰も守る人がいないってのはダメだと思うしね」


「そういうこった。アタイだったら防御能力を上げれる魔道具を作れる。

 防衛機能を作るには時間がかかるんだ。ってことで、残させてもらう」


 確かに、今や僕のいるこの拠点は小さな街ぐらいの人数規模はいると思う。

 そんな中をいくら僕の結界があるとはいえ、それを突破してこない奴がいないとも限らない。


 そんな相手に康太達が勝てるのかと疑問に思うが、それは口に出さないことにしよう。

 それは相手への信頼が揺らいでる証拠だし、僕は一人だ。頼ることも考えないといけない。


「わかった。それならそっちのことは二人に任せようかな。

 それじゃ、他の皆は僕と一緒に魚人島に向かうって感じでいいかな?」


 皆が頷いたのを確認すると、僕はこの会議を解散させた。


 皆が会議室から出ていく中、一人拳矢だけが残っている。

 全く動く気配もなく、腕を組んだまま。

 その様子を怪訝に思いながらも、通り過ぎ去ろうとした。

 すると、拳矢の方から話しかけてきた。


「なぁ、守護神ってなんの話だ?」


「ん? あぁ、そっか」


 拳矢はそこら辺の話は知らなかったな。

 そこで俺はこれまでの旅の中で遺跡に関する話を拳矢にした。


「なるほどな、それでお前はそんなこと話してたわけか」


「悪いな、事前に言っておかなくて」


「気にすんな。お前らの事情に俺が勝手に横から割り込んできただけだ。

 にしても、魔神を相手にする以外にも色々やってたんだな。

 いや、違うか。それも魔神に関係するってことか」


「たぶんね。正直確証はない。けど、そっちもなんだか色々気になることがあるからね。

 それにたぶん、これからどんなことしても邪魔されるだろうし、だったら気になることはやろうかなって」


「そっか」


 拳矢は何かの決意を決めた表情をした。

 瞬間、僕に視線を向けて来る。


「それ俺もついていっていいか!?」


「はなからそのつもりだけど」


「え?」


 キョトンとした顔をしてるけど、さっきの話の流れ的にどう見てもそうじゃんか。


「さっきの話の中で、一言も拳矢を除外したような発言してないと思うけど」


「それは......そうだけど、だが俺は部外者だろ!?」


「僕が何をしてるか知りたくて来たんでしょ?

 今更遠慮するような覚悟でここにいないはずだし、だったら最初っからついていく形で話をした方が早かっただけ。

 もちろん、今ここで拳矢が降りるならそれでもいいけど......どうする?」


 その質問に対して、拳矢は素早く答えた。


「行くに決まってるだろ!」


「なら、決まりだね。拳矢の荷物は適当に見繕っておくから、自分が必要だと思うものは自分でも集めておきなよ」


 僕はそれだけ伝えて会議を室を出た。

 さて、僕も準備しなきゃな。さーて、何を持っていこうか。


―――二週間後


「着いたぞ、ここが魚人島の最寄りの港町アクアスだ」


 ウェンリの声を聞いて、改造した大型馬車の窓から外を眺めると、太陽に煌めくオーシャンが確認できた。


 丘の上から確認できる幻想的な港町。

 オレンジ色の屋根に白い民家。

 大きな灯台があり、いくつもの小さな木製の船があり、クルーザーくらいの船もある。

 さすがに豪華客船ほどの大きい船はなさそうだ。


 おぉ~っと思わず感嘆の声が漏れてしまう。

 なぜこうも人は久々に海を見るとテンションが上がってしまうものなのか。

 これはいずれ解明しなければいけない生命の秘密だと思う。


 港町の中心に向かって行く度に磯の香りというのがしてきて、増々気分を盛り上げていく。

 このまま海に向かって飛び込みたい気分だ。

 宿取ったら早速行っちゃおうかな、海。

 やっぱ、我慢できない! 今すぐ行く。


「僕は窓を開けて、そこから風魔法で作り出しら鳥を飛ばしていく」


 皆が僕の行動を不思議そうに眺めるので、一言だけ。


「お先、海失礼します」


「「「「「え、ずるっ!」」」」」


 皆の反感の声を背に、<転移>で一気に風の鳥を飛ばした位置までジャンプ。

 真下には白く輝くビーチが見える。さっすが僕、精度が高い!


「にしても、腰回りが何やら重い気がする。

 一体何が――ってアイ!?」


 僕の腰にしがみつくアイの姿があった。

 一気に急降下していくのが怖いのかギュッと目を瞑っている。

 その行動に比例するように、腰に抱きつく腕も力強い。


 僕は<風纏い>で速度減速しながら、やがて自分が立てるほどの出力を維持すると、空中を立った。


「アイ、何してるの? 危ないよ!」


「アイはお兄ちゃんのそばにいるの。お兄ちゃんは目を離せば何をするかわからないから」


 まるで年下の子供に言うようなセリフをかけられる年上。

 なんとも信用がないのはこれまでの行動のせいか。


 まぁ、現に海にはしゃいで飛び出しちゃってるしね。

 今更アイを皆の所へ戻すのも申し訳ないし、このまま一緒にビーチまで下りるか。


 僕はアイの肩を抱いて一緒にゆっくり降下していく。

 ビーチにいた皆様が驚いたような顔をしていたが気にしないでください。

 ただの海にはしゃいだ若者の図です。


 ビーチまで辿り着けば、アイは僕からパッと手を離し、海へと近づいた。


「わぁ......!」


 瞳をキラキラさせて海を眺めている。

 揺れる尻尾は激しく、如何にもテンションが上がってるのが手に取るようにわかる。


「アイ、海に来たの初めてなの。こんなに奇麗だとは思わなかったの」


 そういえば、そっか。アイはずっとあの村で過ごしていた。

 となれば、他の世界を知らないのは当然で、そんな世界を教えてあげるのも僕の役目か。


 アイは僕を家族と認識している。

 なら、僕は家族としてアイが幸せになることを考えるべきか。


 腕を組み、新たなる決意をしていたところで、突然目の前のアイが脱ぎ始めた。

 シャツ一枚になり、それすらも脱ごうとしている。

 ちょっと待たれよ、我が妹よ。


「アイ、落ち着いて。なんで脱いでるの?」


「ん? 水浴びするには服は脱ぐのは決まってるなの」


「そりゃ水浴びはそうだけど......」


 これは僕とアイの考え方の違いか?

 僕は海は水着とか着て入るものだと思ってるけど、アイは海と言えど水浴びの延長戦と。

 やばい、周りから白い目で見られ始めた。

 これは早急に対処せねば。


 僕は一先ずアイに服を着るよう指示するが、アイはその言葉にずっと首を傾げてる。


「ほら、周りを見てみ。海に入るのには水着って格好じゃなきゃいけないんだ」


 別にそういうわけじゃないけど、そう言うことにしておこう。

 アイが素っ裸で海に入るのは避けなければいけない。

 どこぞのロリコンが舌なめずりをしてないとも限らないからな。


 アイは周りを見ると、増々首の角度を鋭くした。


「皆が間違ってるの。汗を流すには全部脱がなきゃダメなの」


「そうだけど、そうじゃないんだ」


 なぜこんなにも頑ななのか。一体誰に似たのだか。

 それからもなんとか試行錯誤して言葉を並べるが、あんまりアイには響かない。

 その時、救世主の声が聞こえた。


「何をしてるんですか?」


 ヨナの声だ。振り返れば、他の皆もいる。

 僕は早速ヨナに頼った。どうにもこうにもいかないと。


 すると、ヨナは何かをひらめいたようにアイに耳打ちしていく。

 瞬間、アイは目の色を変えたように「それは確かになの」と頷いた。


「アイ、着替えてくるの!」


 そう言って一人飛び出したところをミクモさんに連行され、二人はどこかへ歩いていく。

 まぁ、十中八九水着が売ってる服屋だと思うけど。


「何言ったんだ?」


 ヨナに聞いてみれば、彼女は口に人差し指を当てて返してきた。


「乙女の秘密です」

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