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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第147話 悪役ムーブ

 頭痛も収まってなんとか学院の外に戻ってくることが出来た。

 それに丁度薫とメイファの二人が協力して作ってくれた魔道人形も壊れてしまったし、タイミング的には悪くないかな。


 見た感じすっごく疲れてる。

少し頑丈に結界を張るようにプログラムしたけど、壊すのに大分苦労したいみたいだね。


 それにしても、これからヨナ達が学院から出るのを待つまでの間僕が朱音達(勇者)の相手をするのかぁ。仕方ないとはいえ、嫌だなぁ。


 とはいえ、今の僕は学院を襲った敵なんだ。

僕だとバレるわけにはいかないし、しっかり悪役ムーブしておこう。

 っていうか、マイラ先生はバラしてないんだね。てっきりもう言ってるものかと。


 僕は地面に<土操作>の魔法陣で椅子を作り上げるとそこに座って声をかけた。


「人形破壊お疲れ様。なんとか破壊出来たって感じで疲れてるところ悪いんだけど、今学院の中に僕達の仲間がいるんだ。

 だから、出てくるまで待っててくれない?」


「なら、どういうことをしているか聞かせてもらえませんか?」


 朱音が妙な質問をしてくる。何その言葉、理由次第じゃ待っててくれるってこと?

 案の定、隣の拳矢からも「何甘いこと言ってんだ!?」と指摘されているが、朱音が頑とした様子で僕に視線を飛ばしてくる。


「そうだね。知っての通り大規模転移魔法陣が行われた時にこの学院の学院長が飛ばされなかったと思うんだけど、今はその人と仲間が交渉中なんだ」


「嘘ね。それはあまりにも言葉を濁し過ぎなんじゃないかしら」


 マイラ先生が割って入ってきた。くっ、その指摘は面倒だな。

 こうなれば、俺が取る選択肢は二つで正直に言うかごまかすか。


 しかし、ごまかせば再びマイラ先生が茶々入れてくるわけで、それを防ぐための処置をすればやましいことがあることの裏返しになってしまう。


 はぁ、どちらにせよ面倒事は避けなれないわけか。

 それにしても、そんなことをすれば僕と朱音達が戦う羽目になる。

 それは正直とても面倒だ。


「......わかった。正直に話そう、仲間は学院長と戦ってたんだ。

 どうやら因縁のある相手らしくてね。

 といっても、悪いのは全面的に学院長(あっち)の方だからね?」


「それじゃ、今学院長は......って待って、今戦ってたって言った?」


「言ったね」


「そして、さっきあなたは仲間が出てくるのを待ってるって言ってた。それじゃ、学院長は!?」


 僕はうんともすんとも言わなかった。

 しかし、無反応を貫いたところで今の流れは肯定してるも同じ。

 悪いね、僕達にも事情があるんだよ。

 そのためには避けられなかった。


「許さない......悪い人じゃないと思ってたのに! 学院長を殺すなんて!」


 真実を知らなければなんと盲目的な怒りに思えてしまうことか。

 仕方ないとはいえ、可哀そうになる。

 無知は罪というが、こういうことも当てはまるんだな。

 僕は手を向けると<魔力障壁>の魔法陣を横一列に設置していく。

 すると、魔法陣の上に半透明な壁が出来上がった。


「この壁を突破するならば、僕は君達を相手にしなければいけない。

 しかし、勇者の君なら知ってるはずだ。僕と君達の隔絶たる力の差を。

 それでも挑むというのなら死ぬ覚悟を持ってもらいたいね」


 もちろん、殺すつもりはない。

 力の差が大きすぎると手加減も難しいが、生殺与奪の権は確実にこちらが握ってるということだ。

 しかし、イレギュラー的要素も存在している―――マイラ先生だ。


 恐らく、魔道人形の時は不意打ちでマイラ先生に攻撃魔法の結界を纏わせることに成功したけど、魔法に精通しているあの人が二回目を警戒しないはずがない。


 今のところ、ずっと静観の姿勢だけどいつ攻撃に参加してくるかどうか。

 僕の知らない魔法を使われた時は厄介極まりないからな。

 できればそのままでいて欲しいが、さぁどうでる?


「皆、力を貸して。あの人は正直かなり強い。

 少なくとも、私の力ですらまともに通用しないくらいには。

 だけど、それはあくまで私だけの力。皆がいればきっと変わる!」


「あぁ、任せろ! 俺達ならやれる!」


「うん、わかった!」「やってやる!」「絶対に許さねぇぞ!」「任せて!」


 朱音の言葉に拳矢が呼応し、さらに周りの皆が呼応していく。

 少し見ないうちに朱音は大分勇者としての立場が板についてきたな。

 立場は人を変えると言うけど、どうにもそれは確かな言葉のようだ。


 朱音が「行くよ!」と言って走り出した。

 そして、進行上にある魔力障壁を壊しながらこっちに迫ってくる。

 意思決定からの行動に迷いがない。

 つまり、彼女達もそれなりの修羅場をくぐってきたみたいだ。


 なら、先んじて進んだ僕が教えてあげよう。

 君達が頑張ってるレベルは未だぬるま湯なんだってことを。

 これ以上、君達が僕のように失って傷ついて欲しくないから。


 僕は手を伸ばし、<火柱>の魔法陣を一斉に床に並べていく。

 縦横十メートル四方に並べられたそれは朱音達が通過した一秒後に発動するように設定した。

 つまり突撃した前衛全員が攻撃範囲に入るようにだ。


「全員、魔力障壁展開!」


 朱音の言葉で自身を覆うように魔力の膜を作り出し、それで真下から噴き上がる火柱を防いでいく。


 ふむ、火力はこれぐらいでいいか。

 ギリギリ魔力障壁で耐えれるということは、本体への攻撃はもう少し弱くていいな。


水銃(ウォーターガン)


 僕は指鉄砲を向けると同時に空中に前衛の人数分だけの水球を作り出す。

 そして、それを放つような手の動きと同時に発射。

 細い水の砲撃が火柱に耐える魔力障壁に穴をあけようと迫っていく。


 しかし、それは別の何重にも重ねられた魔力障壁によって防がれてしまった。

 後衛の魔法部隊のものだろう。そして、すかさずカウンターとばかりに矢が飛んでくる。

 それを魔力障壁で防いでいると前衛がここぞとばかりに距離を詰めてきた。


 勇者達の攻撃を椅子に座りながら対処するのはさすがに舐めプ過ぎるか。

 仕方ない、動くとする―――っ! いつの間に地面の魔法陣から鉄の鎖を!?

 くっ、マイラ先生か。あ、不味い。普通に動けない。


「光滅剣!」「火拳鉄槌!」

水の刃(ウォーターカッター)

刺突の風(スピアエア)

砕かれた岩弾(ロックブラスト)


 朱音と拳矢の攻撃を始め、様々な魔法が一斉が放たれる。

 それは見事に僕に直撃し、その場には盛大な爆発が起きた。

 爆心地は黒煙に包まれ、周囲よりも高い熱がその場を満たす。


 攻撃後に距離を取った朱音達は警戒するように爆発した場所を見つめていた。

 きっとそれぐらいで倒せはしないと思ってるのだろう。

 しかし、煙が晴れて見えてきたのは煤にまみれた僕ってわけ。


「え、倒せたの......?」


「わかんない。前に律にやらせてもらったRPGだと普通に立ち上がったりしたからな」


 拳矢は一体何の警戒をしてるのさ。まぁ、油断しないのは大事だけど。

 確かに倒したよ、君達は。僕の土人形相手にだけど。


「マイラ先生! 私達倒せ.....!?」


 朱音達が嬉しそうにマイラ先生に報告しようと振り向けばそこには両手を上げる先生と彼女の背中に触れる僕がいる。

 そのことに椅子に座る僕ばかり注視していた彼女達にとってあまりにも衝撃的な展開だろう。


「ごめんね、まともに相手にしなくて。

 遠隔操作してる土人形ばかりに気を取られてるようだから面倒な人を捕えちゃった。

 っていうか、あなたほどの人が騙されるってどうなのよ?」


「あなたの内在魔力量そっくりな人形を作られて本体は気配を消してしまえば、私の魔力探知とて見つけ出すのは困難なのよ。

 それにあなたの魔力が多すぎて私の探知もあまり意味ないしね。

 鎖で捕まえた時に違和感を感じたからすぐに周囲を警戒したのだけど......あなた相手だとその時点で既に後手なのよね。全く困っちゃうわ」


「つまり、僕の方が一枚上手だったわけだ」


「あなた相手にリューズではなく私が担当になった時点で運のツキだわ」


 リューズ先生の相手は本気でやめて欲しい。

 あの人、手加減ってもんを知らないし、戦うたびに目をランランとさせるから怖くて仕方ないんだよ。

 正直、今だって相手がマイラ先生で良かったと心底思ってる。


 僕はマイラ先生から手を離すとそのままスタスタと定位置に戻っていく。

 その時、僕に恐れを抱いたような顔で集団が割れて道を作った時はモーゼの海割りみたいで面白かったけど、同時にショックも受けた。仕方ないんだけどね。


「さて、これで一番厄介な人は片付けた。

 ここからは君達の実力が試される番だ。

 言っておくが、今の君達はとても弱い。

 この世界に来てこの世界の住人が持ちえないような圧倒的な力を手に入れたとしても、この世界に満ちる本当の理不尽に対しては無力だ」


 今のところ魔人の使途は僕達が狙いだ。いや、厳密に言えば僕か。

 しかし、何をトチ狂って勇者達を狙うかわからない。

 そのための自衛能力を君達はまだ持って内に等しい。

 だから、ここで君達に理不尽を教え込む。


「今から僕は君達相手に魔法を縛って素手で戦うことを宣言する。

 ただし、時折マイラ先生に仕掛けた<転移魔法陣>と<傀儡糸>を使って召喚獣のように援護してもらうけど」


「俺達相手に素手だけだと? 舐めやがって!」


「実際、事実だろう? 今の君達には僕が本物であるかどうかも確かめる術がなかった。

 僕が入れ替わってたのは登場した君達が魔道人形を倒したあの時からだ。

 そして、今も本物の僕を認識できていない君達は本物であるかどうか確認できない」


 拳矢が苦虫を嚙み潰したような顔をした。

 反論できなくて悔しいんだろう。

 それは力が足りないからさ。


「確かめる術を持つ君達の先生は僕の支配下にある。

 つまり、本物であることがわからなければ、君達は無駄な労力を払い続け、いざ本物が現れた時に戦う力が残っていない......なんて事態に陥るかもしれない」


「......っ」


 朱音も何か言いたげな様子だけど反論の言葉が思いつかないって感じだな。


「これも立派な戦いさ。戦いでは何が起きてもおかしくない。

 その時に言い訳したところで失ったものは戻らない。だから、力が必要なんだ。

 それにあって困るものじゃないだろ?」


 僕は構えると続けて言った。


「話すのもここまでに使用。悪の僕が言ったところで耳に入らないと思うしね。

 ちなみに、今の僕は正真正銘本物だ。だから、全力でかかってこい」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)

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