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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第135話 尋問

「うぅ......あれ、僕は......」


「気分はどうですか?」


「大丈夫そう」


 僕が目を覚ますと正面にヨナの顔があった。

 この感じもしかして膝枕されてる感じ? なんとなくアングルがそのような気がする。

 いつもならもっと慌ててもおかしくないんだけど......なんだか妙に心が落ち着いてる。


 僕はゆっくり体を起こすとヨナに聞いた。


「どのくらい寝てた?」


「三十分ほどです。調子が悪くないようでしたらなによりです。

 とはいえ、突然倒れたことにはびっくりしました。何かありましたか?」


「何かっていうと何もないんだけど......強いて言うなら先ほどの話を聞いて急に頭痛が襲ってきたって感じなんだよな。ま、気にしなくて大丈夫だよ。なんかかえってスッキリしてるし」


「リツさんが元気なら私も嬉しいです」


 そう言いながらもヨナはふと何かを考えるように視線を落としていく。

 その様子を見ながら「とりあえず、もう帰るか」とヨナに一声かけて部屋を出た。


 ソラスさんや娼館の従業員の皆さんからはしゃべり足りない様子で文句たらされたけど、こっちにもやることがあるんでね。


 その後、僕とヨナは適当にぶらつきながら露店で何かを買ったりしているとその様子をデート中のミクモさんと薫に目撃された。


 ミクモさんから「おんなじデート中みたいね」と言われ、そのことにヨナが真っ赤にするということがありいい表情(もの)見たというホクホク顔でその日を終えた。


 数日後、僕はマイラ先生のいる資料室に突撃した。

 資料室に入ると相変わらず魔導書を読んでいるマイラ先生と武闘派の男性が修行でやっているイメージがある逆立ち腕立て伏せをしているリューズ先生を目撃。


 リューズ先生は筋トレ中なのか上半身は胸元にサラシを巻いただけの状態でとても目のやり場に困ったので一先ず<転移>魔法陣で修練場に飛ばしておいた。

 そんな光景を見たマイラ先生が思わず僕に言った。


「あなたも鬼畜なことするわね......」


「あの状態で毎度デザート感覚で模擬戦挑まれる僕の身にもなってくださいよ」


「いいじゃない。若い男の子からすれば比較的年齢の近い女の子が近づいて来てくれるだけでも嬉しいはずよ」


「人は選びます。リューズ先生は怪物なので人ではありませんので選びません」


 その回答に「なんだか悲しいこと聞いたわ。ごめんね、リューズ」とマイラ先生は今頃半裸で修練場に現れたことで騒ぎになっているであろうリューズ先生に想いを馳せた。


 しかし、僕は気づいている。

 一見悲しがっているようなその表情で僅かに口角が揺れていることを。実はツボってますね?


 僕は話題を変える前置きのようにコホンと一つ咳払いするとマイラ先生に本題を告げた。


「本題に入りますが、マイラ先生に見せておきたい......共有しておきたいことがあるんですよ」


「私に共有? あなたが私に教えることって嫌な予感しかしないわ。リューズもいた方が良かったのだけど」


「あの人はどうせ僕との再戦にしか興味ないので真面目な話の雰囲気をぶち壊されても困りますし」


「容易に想像できてしまうところが悲しい所よね......」


 マイラ先生はその時の光景を思い浮かべたのか思わず頭を抱えた。

 今更だけど、あの人仲間からもこんなぞんざいな扱われ方してるんだよな。


 マイラ先生が「わかったわ」と了承してくれたのでさっそく人気のない場所へ案内して貰った。

 そこは資料室の本棚をズラした場所にあるかくし階段でそこから地下へ潜っていく。


 しかし、こんな場所は学校から渡された地図からも校内を隅々まで調べたはずの蓮からも聞いていない場所だ。

 なので、「こんな場所あったんですね」と聞いてみればマイラ先生が作ったらしい。この人、なにしれっと地下作ってんの。


「ここが私の研究室よ」


 辿り着いた場所は作業台に乱雑に積まれた本や設計図、錬金台と棚に並べられた様々な素材や薬品。

 そして、極めつけは床中に散らばった丸まったいくつもの紙屑......なるほど。


「掃除が出来ないタイプですね」


「仲間以外ならお客第一号なのに最初のコメントがそれなのね」


 僕が「掃除できるタイプかと思ってました」と言ってみれば、マイラ先生から「掃除はいつもリューズがやってる」とのこと。

 あれ~? あの人、金龍乱舞のリーダーなんだよね? リーダーとは?


 思わずリーダーという言葉に対する哲学の域に至りそうだったので頬を叩いてその思考を強制排除するとマイラ先生に広い場所は無いか聞いた。


 すると、実験で使うための広い場所があるとのことなので早速移動。

 その場所を来てみれば十畳ほどの広さはある。うん、十分かな。


 僕は<土操作>の魔法陣で部屋の中央に椅子を作るとさらに<空間収納>の魔法陣で前に捕らえたリレーネを取り出して座らせていく。もちろん、拘束済みだ。


 突然人を取り出したことにマイラ先生はまたもやため息を吐く。

 そして、「あなたのせいでため息が増えて余計に老けてる気がするわ」と言われたが、全くもって酷い言われようだな。


「で? 彼女は誰なの?」


「魔神の使途さ」


「へぇ~、魔神の使途......ん? 魔神の使途!?」


 そのリアクションを待ってましたとばかりの表情をすると背後に般若が見える笑みを向けられた。さすがに調子の乗り過ぎました。


「これを知ってるのは?」


「ネルドフ大迷宮で表彰された勇者パーティだけ。もちろん、口外されないように保険は打ってある。といっても、ハッタリだけど」


「......そう。ま、確かに疑問ではあったのよね。

 あの子達が第七十五階層に落ちたとはいえ、そこから戻って来れるなんて」


「随分と評価が低いですね」


「全うな評価よ。あの子達は未だに追い込まれたら自分の持っているチート能力(才覚)だけでどうにかしようとするもの。

 でも、それは本当の強者からすれば隙でしかない。

 それにあの子達はあなたより修羅場はくぐってないだろうしね」


 マイラ先生が僕を見ながらそう言った。ま、僕の場合修羅場というより強くなる理由があっただけだ。

 きっと今の勇者達は未だどこかに使命感があってやってるだけだろう。言葉を変えれば、仕事だから。


「で、魔神の使途ってのはどういうこと? 当然、詳しく説明してくれるのよね?」


 僕はガレオスさんのことは伏せて帝国、ドワーフの国の道中でのこと、エルフの森でのこと、そしてネルドフ大迷宮でのことを簡単に説明した。


 その事実はマイラ先生からすればどれも寝耳に水の話だった様子で、終始疑うような眼差しで僕の話を聞いていた。ま、逆の立場だったら同じような感じになってただろうしね。


「それじゃ、あなたの話からすれば魔神は生きていて今もどこかにいるってこ?」


「そうなりますね。問題はどこにいるか、ですが。それに魔神の幹部的な連中は今の僕でも勝てません」


「断言するのね」


「現に一度殺されかけましたし、二度目は意図的に見逃されましたから。

 僕という存在は魔神の使途からすれば邪魔でしかないはずなのに見逃された......つまりは僕がこれから強くなっても殺せる自信があるからです。

 僕なんかで引き分けに持ち込んでいるリューズ先生では確実に勝ちえません」


「あなたがそこまで言うってことはそれほどの事態なのよね......それじゃ、これからどうするの? ここにわざわざ連れてきたってことは―――」


「はい、尋問します」


 僕は終始無言でじっとしていたリレーネに手をかざす。

 それは彼女の口と耳にかけていた<消音>の魔法陣、目にかけていた<暗闇>の魔法陣を解除するからだ。

 故に、今の彼女は何も聞こえなければ何も発言することも出来ない。


 僕が魔法陣の効果を解除すると僕を見たリレーネはすぐさま噛みつくように言葉を発した。


「このクソ野郎! ここはどこよ!? 何をしたの!? 私を放せ!」


「威勢がいいね。だけど、冷静に考えれば今の状況がわかるはずだよ」


「くっ......ランドルとザンザはどうしたの?」


「死んだよ。悪趣味な怪物を召喚する引き換えに」


 そう言うと素直に信じたのか苦虫を嚙み潰したような表情をするリレーネ。

 すると、今度はマイラ先生が彼女に声をかけた。


「初めまして、私はマイラっていうの。よろしくね。

 それで早速だけどあなたが魔神の使途と聞いたのだけどそれは本当なのかしら?」


 その質問にリレーネは睨むように目を合わせると答えた。


「えぇ、そうよ。至高なる我が主によって遣わされた終末の使者よ」


「終末の使者、ね。随分と物騒な表現をするじゃない。

 あなた達の狙いは何? 言葉通りにこの世界の終末?」


「ふん、知らないわよ。今回の私達は単に雑用を押し付けられただけだからね。

 まさかこんな連中を相手にさせられるとは思っていなかったけど」


「あなた達の狙いは誰なの?」


「勇者だ」


 その言葉にマイラ先生は表情一つ変えない。

 先程の僕の話で先に聞いていたこととはいえ、実際に魔神の使途本人からその事実を肯定されたなら驚いてもおかしくないだろうに。


「随分と素直に話してくれるのね。私、嬉しいわ。どうも近頃話のレベルは合うのだけどひねくれ者としか話してなくて」


 今、僕のことディスりませんでした? しましたよね? 僕の事。

 そんなマイラ先生の言葉に対し、リレーネはそっぽ向いて答えた。


「私からすればもうどうでもいいのよ。私はランドルとザンザがいたからこそ生きていられた。

 今の私にはもう何もない。だから、話したところで問題ない」


「そう......なら、あなたの依頼者について教えてくれる?」


「いいわよ、そいつは―――うっ!?」


 リレーネが言いかけた所で突然彼女の様子が急変した。

 彼女の顔がみるみるうちに青ざめていく。

 それはまるで死よりも怖い体験をしているように。

 しかし、目の前で見ている僕達からすれば何も変化はない。

 すぐさま<探知>の魔法陣を部屋中に広げたが、魔力の痕跡もない。


「が.......がっ!」


「「!?」」


 リレーネは苦しみ出すと血涙しだし、さらに鼻や口、耳から大量の血を流し始めてやがて絶命した。

 それはまるで呪いによって殺されたような光景であった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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