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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第132話 共闘契約

 僕と蓮が先に七十五階層に来たのはヨナを攫った魔神の使いを倒すため。

 結果的には倒せたけど、奴らが命がけでアスモデウスという巨大な魔法陣から上半身だけを出現させた二十メートル級の化け物を召喚した。


 ここまではまだ良かった。ヨナに関しては蓮の召喚した蜘蛛が別動隊として向かわせてるから。

 その蜘蛛ならこの階層にいる魔物じゃまず敵じゃない。


 そして、その蜘蛛がヨナに転移魔法陣の陣魔符を渡してくれれば、僕がヨナの陣魔符に対応する陣魔符を持っているからここまで転移させられる。


 だが、誤算は二つ。まず一つに敵の狙いが最初から勇者であったということ。

 だから、召喚したアスモデウスの狙いは召喚者の意思を反映して勇者を狙う。


 次に、ここに勇者が現れてしまったということ。

 ランドルが放った魔力波はこの広い空間である七十五階層から三十五階層ほどまでの地盤全てを破壊してしまった。


 勇者である朱音達の攻略スピードが想像以上に早すぎたせいで地盤崩落に巻き込まれてしまったようだ。


 念のために四十階層で蓮に召喚してもらった巨大蜘蛛もいただろうけど、今頃崩落で死んじゃってるだろうしな。


「ねぇ、ケンちゃん......あの二人ってあの時の」


「あぁ、覚えてる。リューズ先生の初見殺し攻撃を全て防ぎ切った相手だ。油断するな」


 朱音と拳矢が警戒するように武器を構えた。

 幸い、僕と蓮は仮面をつけていて服も変えているのでバレていないようだ。


「それにあの化け物はなんだ? 見てるだけでヤバイってわかるぞ!?」


「なんだかこう......体の震えが止まらないような悍ましさを感じます」


 あの二人は貝塚君と新田さんか。弓チートと回復チートの二人をパーティに入れる辺りは一応攻略ってことを考えて......ってそうじゃない! 今はこの状況を何とかしなきゃ。


『律、この状況はどうする? 俺達が代わりに悪役ムーブしてもいいが、後ろの化け物は明らかにアイツらだけで倒せる相手じゃない』


『わかってる。ここは僕の動きに合わせてくれ。だいぶ無理やりなアドリブになりそうだけど』


『わかった』


 <念話>での蓮との会話を終えると僕はすぐさま薫と連絡を取ってそのままアリバイを作り続けるよう指示を出した。


 後はヨナだけど、助けたら崩落に巻き込まれたってことにするか?

 いや、そもそもヨナと組んでいるミクモさんとメイファさんが今日はこのダンジョンの攻略をしないことでもう一人の仲間に話を通してるはずだし、それがバレるようなことは避けたい。

 はぁ、仕方ない。ヨナには少しの間我慢して貰うか。


 さて、どう騙すか。


*****

――――聖朱音 視点―――


 あの二人は危険だ。そう思うのは実際にリューズ先生相手に短い攻防ながらもしっかりと実力を見たから。

 あのリューズ先生が二人を危険視してた。特に狐のお面の方。


 もちろん、蜘蛛の顔のようなお面をつけてる方も魔法が分からないから侮らない方けど、聖王国に侵入してきた時にリューズ先生の攻撃に対して明らかに反応できたのがあっちの方だから。


 それに加えて、見てるだけでヤバイとわかるお面の二人の背後にいる巨大な化け物。

 今はなぜか沈黙を保ってるけど二人が召喚したものだろうか。

 でも、その化け物にもっと近い距離で干からびた二人が倒れている。


 単純な状況だけで理解しようとするとあの二人は仲間内で裏切り合ったか、もしくは私の知らない全く別の勢力同士のぶつかり合いかのどちらか。


 私がその二つの考えのうちどちらかを信じるとしたら......それは恐らく後者かな。

 お面の二人は危険な気がするけど、それでもまだ対話は可能な気がする。

 まともに戦り合えば負ける。それだけは確実だ。


「聖王国以来かな。こんな場面で言うのもなんだが」


「っ!」


 狐のお面の方がしゃべってきた。あれ? 前は女性のような声だった気がしたけど気のせいだっけ?

 しかし、わざわざ話しかけてきたということは対話が通じる。


「そうだね。それであなた達は敵?」


 おかしな質問だと思う。明らかに敵である相手に対してそう聞くなんて。

 しかし、危険な相手なのにどことなく懐かしい感じがするのが私の意思をおかしくさせる。


 ケンちゃん、貝塚君、アサヒちゃんも驚いた様子で私を見た。

 疑う余地もないでしょ!? と言いたげな目だ。だけど、落ち着いて。戦いは是が非でも避けなければいけない。


 私の質問に対して狐のお面男は答える。


「敵じゃない......といったら信じてくれるかい? どちらにせよ、今の状況を説明しよう。僕達は魔神の使いと呼ばれる男達と戦っていた」


 魔神の使い? え、どういうこと? 魔神という存在ははるか昔に存在した魔族の神のような存在で、その存在は勇者によって倒されたはず。


 もし相手の言葉を信じるなら魔神を復活でもさせようとしている人達がいるってこと? ってことは魔神は魔族の神だし魔族がこんな仕業を!?


「そして、こいつらの狙いは勇者であるお前達を殺すことだ。

 こっちにも事情があってこいつらと戦ったわけだ。すると、最後に命を代償にこんな化け物を召喚しやがった。

 ちなみに、お前らが地盤崩落で落ちてきたのは魔神の使いの一人が賭けでお前達を殺そうとしたからだ」


 あのレーザーは私達を狙ったものだったの!? 確かにもしあの辺りで安全だと思って休息していたら今頃塵一つすら残ってないだろうけど。


 狐のお面男は「以上が今までの経緯だけど信用してくれる?」と聞いてきた。

 話してる感じは嘘をつくような感じは無かったけど、お面で顔が見えないし嘘がスラスラ言えるタイプなら話が別になってくる。


 チラッと横を見たけどケンちゃんは臨戦態勢だ。

 相手がどのくらいの実力であるか知っているだろうけど、ここで放っておけば別で被害が出る可能性があると正義感故の構えなんだろう。


 そしてあの時、別の場所で訓練していた貝塚君とアサヒちゃんは二人のことは噂程度でしか知らない。

 だから、若干臆してるように見えても実際は自分達がチート能力持ちだからどうにかなるかもという楽観的姿勢でいるかもしれない。


 三人はきっと相手の言葉なんてこれっぽっちも信じていない。

 だから、正面に見える化け物も術者であろう二人を倒せばどうにかなると思ってる。


 でも、それじゃダメだ。それが分かってるのは一番の力を持っている私。私が冷静でなければいけない。


「......わかった。信じるよ」


「朱音!?」「聖さん!?」「朱音ちゃん!?」


 私の言葉にケンちゃん、貝塚君、アサヒちゃんが揃って声をあげた。

 勇者である私の言葉が自分達の想定していたものとは大きく違ったからなんだろう。でも、この選択で正しい。


「正気か、朱音!?」


「うん、正気も正気だよ。現状で一番私達が生存できる最適解がこれしかなかったとも言うべきなんだけど」


 そう言うとアサヒちゃんが「生存できる最適解?」と聞いてきたので簡単に説明した。


「私達の現状の戦力ではまず間違いなくあの二人に負ける。

 殺し合いになれば相手もきっと容赦はしなくなる。

 それにあの二人だけでも厄介なのにあの悍ましい気配を漂わせる化け物に対しても私達はきっと勝てない」


 私は巨大な化け物をチラッと見た。


「加えて、あの化け物は暴力性の何かが見え隠れしている。

 きっと対話なんて通じない。倒すしかなくなる。

 なら、あの二人を味方だと思って化け物を倒した方が私達の生存確率は格段に上がるってこと」


「そのためにはあの二人を信用しなきゃいけないってことか.......」


 ケンちゃんは睨むような目で愛てを見る。

 脳内で信じる信じないを葛藤させているであろうことが手に取るように伝わってくる。

 ケンちゃんは顔に出やすいから。


 ケンちゃんは「あー!」と言って頭をワシャワシャとかくと狐のお面男に向かって指さした。


「裏切ったらただじゃおかねぇぞ!」


「信用してくれるってことだね。なら、約束しよう。君達に危害を加えないし、生存させることを」


 ケンちゃんの言葉によって迷っていた貝塚君もアサヒちゃんも渋々ながらも私達の意見に従ってくれた。

 そのことが伝わったのか二人はサッと私達の近くに移動すると一緒に化け物を見る。


「あの化け物を召喚者である魔神の使いはアスモデウスと呼んでいた。

 とはいえ、きっと悪魔のアスモデウスとは全然異なってくるだろう」


「っ!?」


 え? 今、「悪魔のアスモデウス」って言った!?

 私はふと仲間の三人の様子を見てみるけど、目の前の敵に集中している様子で今の明らかにおかしい発言に気付いていない。


 この世界の常識に関しては聖王国で色々教えてもらった。

 この世界でも神話のような話はあったけど、その中にただの一つも「悪魔」という単語は出てこなかった。代わりに使われていたのが魔神。


 つまり「悪魔」という言葉は私達がいた世界でしか存在せず、加えてその悪魔に関して詳しいことを知っているであろう言い方も鑑みるとこの狐のお面男は私達と同じ世界から来た可能性がある。それも高い確率で。


 最後に勇者召喚が行われたのはその遥か昔に魔神が倒されたという時代。私達の召喚はその次だ。

 ってことは......まさか?


「どうかしたか?」


「あ、いや、何でもない......」


 ヤバッ、思わずじっと見ちゃった。いや、それは流石にあり得ないよね。

 だって、もしりっちゃん達だったらこんな風にする必要ないもん。

 仲間だから絶対にちゃんと言ってくれるはず。それにこんなしゃべり方じゃない。


 私は大きく息を吸って吐いていく。

 余計な思考は頭の片隅にでも置いておいて今は目の前の敵に集中しなければ。

 相変わらず動く気配はないけど。


「準備はいいか?」


「うん、大丈夫。いつでも行ける」


「なら、始めるぞ。化け物狩りだ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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