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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第128話 忍び寄る影

「ネルドフ大迷宮......その迷宮はかつてこの世界で魔神を倒した勇者も通った道とされる神聖な場所で聖王国や帝国からも重要視されてる場所らしい」


 現在、僕、蓮、康太、薫の四人でパーティを組みながらネルドフ大迷宮に挑戦している最中だ。

 場所はまだ三層ぐらいで三か月ぐらいあるうちに目的の三十層に到達すればいいとのこと。

 今回はそのファーストアタック。ま、現状のレベルでいえばただの散歩かな。


 そんな感じで洞窟の中を話しながら進んでいる感じで、今は蓮が調べてきたこの迷宮についての話を聞いていた。

 僕は蓮の話に質問していく。


「ということは、随分な謎が隠されてるかもね。で、具体的なこの迷宮の構造は?」


「地下は百五十メートル以上。最深到達層が五十五層だそうだ。だが、それはあくまで勇者以外の最高記録だ。とある文献では勇者が到達したのは百層と言われてる」


 その言葉に薫が思わずうげぇとした顔で「ほぼ二倍の層じゃん」と言った。わかる、わかるよその気持ち。そこまでいくのがダルいって。

 すると、今度は康太が蓮に質問した。


「なんで勇者以外の人達は半分くらいしか行けなかったの?」


「これはあくまで記録を残した人の感想を言うだけなんだが、その記録者曰く、一番の敵は時間だと言っていた。それは単純にひたすら時間が無くなっていくからだろうな。

 どのくらいのペースで攻略するかにもよるが人間には限界がある。

 ずっと一定のペースで移動できるわけじゃないし、休みや睡眠も取らなきゃいけない」


「加えて、一番重要な食糧が減るもじゃない?」


 僕がそう聞くと蓮はコクリと頷いて話しを続けた。


人間(おれたち)は動いてる限りスタミナを使いお腹が減る。道中魔物も出るし戦闘も含めれば余計に。水は最悪魔法でどうにかなるが、食料はどうにもならん。

 世の中、うちの(リーダー)のように収納庫を持ってるわけじゃないからな。

 それに缶詰のような日持ちするものも少ない。そんな限られた環境だと半分まで行けたなら十分だろう」


「そう考えるとかつての勇者は律君と同じ感じだったのかな?」


「かもな。それにうちのリーダーは頭がイカれてるから転移魔法で移動もできるし」


「ちょっとやめてくれない? 人を人外みたいに言うの」


 そう蓮に言い返せば三人から一斉に「いや、お前は人外だろ」みたいな返しされた。

 非情に解せない。ただひたすら技術や修練でどうにかしてきただけなのに。


 そんなこんなで会話最中に邪魔してきた魔物を適当にあしらいつつ十層ぐらいまで来たところで切り上げた。その際、しっかりとその場所に転移魔法陣のマーキングを残して。


****


 学生寮のオープンスペースというべき食堂。そこで僕は拳矢と向かい合いながら彼から情報を探った。


「ファーストアタックどうだった?」


「ん? 俺達か? まぁ、序盤の層は楽に進めたかな。それもこれもリューズ先生達にシゴかれまくったおかげなんだけど」


 そんな風に言いながら拳矢は苦笑い。

 きっと彼は彼なりに苦労してきたのだろう。なんせ相手がリューズ先生(あの人)だからな~。俺が抱く印象が悪いだけで他の人には意外とまともなのかな。


「律の方はどうだったんだ?」


 そりゃ当然聞いて来るよな。ここは適当に流しておこう。


「僕達は十階層ぐらいかな。三分の一ぐらいまでは進んだけど」


 その言葉に拳矢は一瞬「え?」という表情をしてすくって口に運ぶ途中だったスプーンを止めた。


「俺達まだ七階層ぐらいなんだけど」


 その言葉に一瞬にして表情が強張るのがわかった。

 不味い、この流れは不味い。まさか初日で拳矢達がそこまで進んでないとは想定していなかった。

 なぜそこまで進むのが遅い? いや、今はその疑問を持つよりこの空気を変えることだ。


「え、待って、拳矢達はダンジョンというか......こう地下洞窟には行ったことないの?」


「無いな。もっぱら剣の修行だったり、周辺地域を荒らす魔物だったり、後は......だな」


 なるほど、拳矢達は洞窟に対する知識が圧倒的に少ないのか。それ故に、おおまかな地下構造を把握していない。ま、僕も<探知>の魔法陣によるものだけど。


 ともかく、この流れならいける。僕達の経歴は聖王国から逃げ出して身を隠しながら冒険者活動をしていただから。その経歴を使えばこの空気を誤魔化せる。


「なら、僕達はそこに関しちゃ先輩かな。冒険者として活動していた時にダンジョンに潜ったことあるし。大体どこらへんに下へと続く階段があるかわかるんだよ」


「そうなのか、どうりで......ん? だけど、冒険者やってた人達も白組には居たけど俺達より進んでなかったぞ?」


「拳矢、僕達は落ちこぼれだけど一応召喚された“勇者”だよ?」


 その疑問が湧いた時の返しは想定済み。僕達は自分達の能力がこの世界の人達よりも明らかに強い力を持っていることを自覚している。

 なら、そこを突いてやれば「勇者(チート)だからか」で納得できるはず。


 そんな僕の思考通りに拳矢は「そうか。確かにな」と呟いてその後すぐに「スゲーな」と返してきた。

 そういう思考が読みやすいのは申し訳なく思うほどにありがたい。


「な~に話してるの?」


 そんな話をしてると拳矢の隣に朱音がやってきた。そして、スッと隣に座ると会話に混ざりたそうにしていたので「初日の感想を話していた」と伝えると彼女は返答してくる。


「そうだね、ダンジョンという場所が初めての場所だったから最初は少し引け腰な気持ちになってたけど魔物のレベルも大したことないしまだ余裕って感じかな。それに初日だから味見程度で早めに切り上げたし」


「ってことは、あの時朱音が言った『今日はここで十分』ってのは俺達の実力的にそこが厳しいからじゃなくてそんな理由からか?」


「そうだよ。じゃなきゃ、あんな早く切り上げたりしないよ」


 ま、そんな感じだとは頭の片隅では思ってたけど。それにしても、拳矢が自分に対する自己評価が低いのはメンタル的な要因か? そうとは考えづらいけど。


「なんだ、それじゃ本当は僕達よりもよっぽど先に下の階層にいけてたじゃないか。思わず自慢しちゃった僕がバカみたいじゃないか」


「いや、そんなことねぇって。そこは素直にスゲーと思ってるよ」


 僕が場を盛り上げるためにそう言えば当然食いついた朱音に拳矢が事情を説明していく。

 そんでもって少し不貞腐れた態度を演じてみれば少しおかずを分けてくれた。ラッキー。


 それにラッキーなのはこの状況でもある。ここに朱音が来てくれたので彼女から直接この学院のことやダンジョンに関して詳しい話が聞ける。

 もちろん、知りたいのは彼女が勇者故にって感じで教えてくれた情報だけど。


 僕が内心でこの状況に若干浮かれているとそんな僅かな隙をつくように僕の背後からスッと一人の人物が話しかけてきた。


「随分と楽しそうにお話しされてますね」


 その声にビクっと反応して振り返ればそこにはヨナがニコニコした笑みを浮かべて立っていた。

 表情から怒気は感じない。怒ってるわけじゃないのか、良かった。


 そんなヨナの登場に拳矢は「ヨナさんか」と朱音に至っては「ヨナちゃん」と明らかに親しい距離感になっていた。僕が単独で動いている間にいつの間に。


 ヨナは「お隣失礼します」と僕の返答も待たずに座るとテーブルと下でそっと僕の手に握った拳を重ねてきた。


 一瞬ドキッとしたが、僕が手のひらを向けるとそこに一枚の小さく折られた紙を渡してくるではないか。


『念話で良くない?』


『やってみたかったんですよ。ふふっ、ドキッとしました?』


 僕が<念話>で話しかけながらチラッとヨナを見ると彼女はパチッとウインクしてきた。

 うっ、可愛い。というか、どうした? なんかいつの間にかキャラ変してない?


 僕が渡された紙を開き内容を見てみればその紙にはこう書かれていた。


『最近何者かの視線を感じます。しかし、上手く正体を掴めていません』


「っ!」


 僕はそっと手のひらで紙を燃やすと何事も無かったように拳矢と朱音と話しているヨナを見た。

 まさかあの学院長がヨナを消しに来た? だが、どういう理由で?


 とはいえ、ヨナが誰かに見られていると理解している以上彼女も出来る限りミクモさんやメイファと行動するはず。その間は彼女も無事だろう。しかし、絶対ではない。


 どうやっても一人になる時間はどこかしらにはある。

 僕が監視することも出来るけど出来る限りプライバシーは尊重したいしな。


 わかってるのは相手が手練れということ。

 ヨナが気づけば当然ミクモさんやメイファも気づいてるはず。それでも正体が掴めてないんだからこの学院の生徒じゃありえない。


 学院長か先生かはたまた全く別の第三者の介入か。

 そもそもヨナを狙うのは本命か罠かという判断も必要だ。この読みを外せば後手に回るは必須。

 これは僕一人で考えるべきではないな。


 僕はすぐさま<念話>のチャンネルを蓮、康太、薫の三人に回してヨナから得た情報を共有した。

 一応、この周囲を探ってみたが怪しい魔力はないな。さすがにここだと人目につきすぎか。


「―――い。おーい、りっちゃん、聞こえてる?」


「え?」


「さっきからボーっとしてたけどどうしたの?」


 朱音が怪訝な顔で僕の様子を伺ってきた。おっと、思わず考えすぎてしまった。


「ごめん、二人がいつの間にヨナと仲良くなっていたのかなと思ってなんかぼーっと見てた」


 その反応に朱音は「何それ?」と返していくとそのまま言葉を続けた。


「学生寮に住むようになって少ししたらね。ヨナちゃんの方から話しかけてきたんだよ。

 私もりっちゃん達と一緒に旅してたってことで気になって話したらそのまま意気投合しちゃってって感じで」


「へぇ、そうなんだ。ヨナが話しかけに......」


「はい、ですから―――()()()()()()()()()()()()()


「っ!」


 その言葉にゾッと僕の中から得体の知れない殺意が湧いた。おい、ヨナ、お前は誰なんだ? と。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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