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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第127話 次なる展開

「あなたが言った通り、私は魔法マニアなの。だから、あの禁書エリアの奥に何があるのかとても気になってしかないのよ」


 僕に考えを見透かされたマイラ先生は正直に白状し始めた。

 その様子は「一筋縄ではいかないわね」とでも言いたげな顔で僕を利用しようとしていたことがわかる。


「好奇心が無ければ人は動きませんからね。そこはわかりますよ。

 それよりも僕的には前に『何言わず実は利用してました』と先生が言った言葉に対して今ここで尋ねたいんですが」


 そう聞くとマイラ先生は途端に劣勢になったようにバツの悪い顔をする。まぁ、当然かな。

 以前、マイラ先生は僕に対して「黙って利用するような真似はしない」といったことを言っていた。

 黙っていれば殺される可能性があるから。


 しかし、先ほどその言葉を自ら破ってきた。

 この言葉に対して別に取引で何か決めてるわけではないけど、言質がこちらにある以上ここを問い詰めれば僕が優位に立てる。そうすれば、今度はこちらが利用できるかもしれない。


 マイラ先生はゆっくりと重たいため息を吐きだすと口にしたのは謝罪だった。


「それに関してはごめんなさい。一度見逃してくれないかしら?」


「その言葉は言い換えれば“貸し”になるんですけどいいですか?」


「忠告してくれるとは嬉しいじゃない。でも、すでにあなたの行動を黙認している以上、あなたの行動をさらに自由化するようなことは出来ない。だから、これが最善よ」


「言葉が違うんじゃないですか? 行動の自由化の拡大は出来る。例えば先ほどの図書館のカギの複製をつくって渡すとか。

 しかし、先の行動で僕が先生の行動を警戒するようになってしまったからその路線での貸し条件では納得してもらえないという理由では無くて?」


 そう聞くとマイラ先生は疲れたようにため息を吐いた。


「はぁ......可愛げがないわね、全く。まるで色々な物事を見てきた遥か年上の人と話してるみたいだわ。

 いちいち言動に気をつけなきゃならなくてこっちの気が休まらない」


「ですが、その原因を作ったのは先生ですからご愁傷様ですとしか言いようがないですね」


「その言葉をあなた本人から言われるととても複雑な気分になるわ。

 とはいえ、あなたのことを見誤っていたのは確かだからこの後始末はつけなくてはね。

 それで? あなたは私にどんなことで貸しを返すのかしら? もしかしてエッチなのこと?」


 マイラ先生は両腕を抱えて僅かに体をくねらせる。その言葉に僕は思わずため息を吐いた。

 この人、そうじゃないとわかってて言ってるよ。あれか? この重苦しい空気を変えるためか?


「仮に僕が『そうです』とでも言ったらどうするつもりだったんですか?」


「まぁ、受けてもいいかもしれないわね。そんなことでこの危機的状況を打破できるのなら」


「ただの貸しに体を差し出すって相当だと思いますけど」


「場合いよってはその方がよっぽど軽いのよ。例えば、あなたが魔法に関して私が言えないことがあるとしてそれに貸しを行使されたらそっちの方が危険だもの。

 あなたの戦力の手助けは出来ることなら是が非でも避けたいから」


 その言葉に「魔法に関して言えないことがあるんですね?」とカマをかけてみたが「例えばの話よ」と特に表情の変化もなく流されてしまった。

 ま、さすがに精神的劣勢の立場であってもそこは年期の違いが出るか。


 僕からも「ま、今の時点で貸しを行使するつもりはないですね」とだけ言っておいた。

 この貸しは本当に大きい。使いどころを慎重に見極めなければ。


―――ガチャン!


「お主、やってくれたな!?」


 僕とマイラ先生の間である程度の話がついた所でリューズ先生が勢いよく扉を開けて入るとすぐに扉を閉めてそのまま扉に寄りかかっていく。


 そして、最初に言ってきた言葉がその言葉であった。

 顔はだいぶお疲れのようで。どうやら随分と生徒のおもちゃになったみたいだね。


「どうしたんですか?」


「どうしたも何もないわ。お主が修練場に飛ばしおったおかげで、それも生徒同士の対決で木剣同士が交わる直前の場所に転移させられたせいで危うく直撃するところだったぞ!」


「でも、当たってないみたいですしいいじゃないですか」


「それだけじゃないわ! 突然現れたことによる転移魔法の説明やらほぼゼロ距離からの回避の技術やら生徒達からの溢れんばかりの説明追及。

 お主、前にワシと立ち会った時にこっそりと仕掛けておったな?」


「......」


 僕はリューズ先生から睨まれながら席を立ちあがると適当な広さの場所に立った。そして、足元に転移魔法陣を作り出していく。


「それじゃ、マイラ先生、今日は有意義な話をありがとうございました。これで僕は失礼します」


「あちょ、待たんか!」


 リューズ先生の言葉を聞きながら僕は移動した。

 同時にマイラ先生が小声で「普段使いで転移魔法ってのもどうなのよ」と言いながらため息を吐いていたのも見えた。


****


「ダンジョンアタック?」


「そ、それが近々あるらしいんだよ」


 マイラ先生との一悶着があってから数日後、僕の部屋ではどっかで買ってきたであろうパン菓子を食べながら拳矢がそんなことを言ってきた。


 名前からするにここに来るまでに僕達がやって来たような遺跡攻略みたいなものだろうけど、黒服(ぼくたち)にはそんな話はまだされてないぞ?


「俺達も今日言われたばかりだからあれだけど。この街の近くにネルドフ迷宮という大規模な地下迷宮が広がってる場所があるらしくて、そこにパーティを組んで期間内に指定層まで到達する試験なんだと」


 なんというか、如何にもな迷宮試験だな。

 数々の学園ファンタジーラノベを読んできたが当たり前のように絡んできたな。

 まさか、あのファンタジー系の作品って異世界帰りの作者の実体験だったりしないよね?


 そんなバカなことを考えつつ、一番気になったのはその迷宮の「指定層」という所だ。


「なんで指定層なんだ?」


 その質問に拳矢は菓子パンを押し込んで少ない咀嚼回数で飲み込むと答えた。


「その層から下は危険だからだそうだよ。ま、当たり前の話だがな。そのネルドフ迷宮ってのは()()()()()()()()()五十層ぐらいあるらしくて、俺達の指定層は四十層まで」


「なるほどね」


 それはなんとも魅力的な回答だね。つまりそれよりも下には何かがある可能性がある。

 それは意図的に隠されているのか、はたまた未だに探索されていないのかは定かじゃないけど、ガレオスさんが行くように勧めてきたこの学院の近くにあるというだけでも十分なほどに調べる価値がある。


 とはいえ、その真意を拳矢に悟られてはいけない。なら、話を逸らすか。

 彼がわざわざそのような提案をして来たという点に関して突いて。


「で、拳矢はどうしてそんなことを? 多分だけど単純にそのことを聞いてるかっていう確認じゃないよね?」


 そう聞くと拳矢は「あぁ」と言って真剣な目で僕を見てきた。そして、言う。


「なぁ、律。俺達と一緒にパーティ組まないか?」


 俺達、か。となると、もしかしたらこの提案を出したのは拳矢じゃなくて朱音の方かもな。

 朱音は僕達が逃げ出した状況に対して未だに負い目を追ってるのか?


 まぁ、しっかりと説明してないから不良グループに追い出された的な勘違いを未だに続けてるのかもしれない。


「パーティか、それに関してはまだ答えられない」


「どうしてだ?」


「条件がまだわかってないから。僕達の制服が白と黒に分かれてる意味合いは一言で言えば実力の差だ。

 となれば、生徒を成長させるのが目的のこの学院側に立ってみれば能力の高い生徒を育てるにはその能力の高さに見合った試練を与えることだから」


 僕が拳矢に「何か具体的なパーティ条件を聞いた?」と問いてみれば「確かに、四人編成としか聞いてない」と答えてくれた。四人編成、か。ふむ。


「となれば、現時点で明確な答えは出せないね。例えば、拳矢達白服の指定層が四十層に対し、僕達は三十層かもしれないし、他にも白服と黒服の混合でパーティを作っていいかも疑問だし」


「......そうだな。確かに色々な前提条件を聞き逃してた。それを知ってからじゃないと答えられないな」


 拳矢は納得したように頷くとすぐにじーっと僕を見てきた。え、なにその視線......怖いんだけど。


「律......お前、なんか変わったな」


「変わったって?」


 思わず声が上ずってしまった。何か変な行動したか? これまでの流れで怪しまれる行動は何もなかったはず。


「なんつーかさ、スゲー考えるようになったっていうか、高校生やってた時よりも大人びたっていうか」


「......」


「別に悪い意味じゃないんだけど、どこか昔の頃のような面影が薄れてるような感じがしてな」


 拳矢は寂しそうな顔でそう言った。それは......仕方ないことなんだ。

 僕のこれまでは色々考えて力をつけて強大な相手と戦ってと明らかにこれまでの平凡で平穏な人生を送るはずだったルートから外れてしまったのだから。


 それに僕はゾルさんに誓ったんだ。

 この世界を色んな種族が共存できる世界にするって。そのためなら僕が悪になろうとも構わないって。


「ま、楽な旅じゃ無かったからさ」


「......そうみたいだな」


 それから、僕達は別に話題で他愛のない会話をしていった。


******


―――学院長室


 書斎の背後には大きな窓があり、その窓から街の風景を見下ろす学院長アルドーク=グランフィスは何かを考えるように遠くを見ていた。


 その時、書斎の前の空間が歪んで黒い穴から三人の男女が現れた。

 その三人はそれぞれ白い修道服のようなものを着ていて、さらにそれぞれ特異的な仮面をつけている。


 背後に人の気配を感じ取ったアルドークは振り向かずに言った。


「来たか、ランドル、リレーネ、ザンザ」


 その言葉に雄々しい声をしたランドルが答える。


「随分と上からだな。何をしたかわからんが俺がお前に下ったことは一度も無い」


「そうよ。あたし達もあんたと同じ義天兵だから。舐めないでくれる?」


「さっさと用件を済ませよう。呼んだのはなぜだ?」


 ランドルの言葉にリレーネが続いていく。

 その一方で、この状況が長引きそうだと感じたザンザが落ち着いた声色で本題へと話題を変えた。

 その質問にアルドークは淡々と答えた。


「この世界に不要な存在を排除するためだ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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