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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第121話 正体を知る冒険者

 前回のあらすじ。

 僕がリューズ先生とマイラ先生に会いに行くと言った途端に突然ヨナから不機嫌な顔をされたよ。

 それも仲間には二人っきりの状況にされて。どういうこと?


 目の前のヨナは依然笑みを浮かべているが、そこから放たれるプレッシャーはもの凄い。なんというかこう......とにかく凄い。自然と冷や汗が流れてくる。


「ここからは私が話すわ。ヨナだと話しづらそうだしね」


 ヨナが口を開いたかと思えばタメ口に代わっていた。どうやらヨナの方で人格交代が行われたらしい。


 セナの方はヨナより圧が無くて助かる。

 まだ半分も食べ終わっていない食事がさらに手につかなくなりそうだったよ。というか、お腹いっぱい。


「正直、私が口を出すもんじゃないんだろうけど、私も同じ体の宿主だしね。で、さっきからヨナの様子がおかしかったのはあんたも気づいてるでしょ?」


「あ、うん......」


 僕は頷いた。しかし、その反応から肝心の内容についてまでは把握していないことをセナに見抜かれたようでため息を吐かれる。え、僕、そんなとんでもないことやらかしました?


「ハッキリ言うとあんたは悪くないけど悪い」


「?」


「私は別に気にしてないけど、ヨナがあんたとあの冒険者のほらリューズ先生とマイラ先生に会いに行くってこと話してたでしょ? そのことにあの子が嫉妬してるのよ。私は気にしてないけど。

 入学式終わりの時もいきなり抱きつかれてたじゃん? それも随分好意的に。

 それが気になってあの子は不機嫌なのよ。私は全然気にしてないけど!」


 人差し指でテーブルをトントンと叩きながらそっぽ向いて言うセナ。

 あのね、そこまで「気にしてない」って言われるとそれはもう気にしてるのよ。

 指トンもイライラしてる印象しか伝わんないのよ。


 とはいえ、僕とリューズ先生及びマイラ先生との関係なんてぶっちゃけ何にもないんだけど。強いて言うなら、聖王国で軽く一戦交えたぐらい。


 その前はミラスって街で一方的に見かけたぐらいだけど。

 だから、正直にあの二人に僕がそんな興味持たれてるのは僕自身訳が分からない。


 二人が僕に接触してくる心当たりがあるとすれば、それは聖王国の襲撃犯が僕だとわかったから。

 でも、それもどうしてバレたのかさっぱし。それどころか仮にも敵にあんな好意を見せてくるなんてそれこそ余計に。


 それを正直に言って納得してくれるだろうか。まぁ、無理かもしれないな~。そんなわけあるかーって。

 でも、下手に嘘をつくよりかは早く事態は収拾できるかもしれない。


 僕は改めて聖王国で起きたこと、そして何が原因か分からないけど二人に僕が襲撃犯であるとバレていると伝えた。そんでもってなんで好意を持たれてるのかさっぱしと。


 ヨナはいぶかし気に僕を見ていたが僕が嘘をついてないことに気付いたのか黙って聞いてくれていた。

 終始目はキツく、不機嫌な態度は変わらなかったが。


「なるほど、それであなたは二人に会いに行くつもりなのね。でも、行ってどうするの? 口止め? とてもそれが通用する相手とは思えないんだけど」


「マイラさんの方はよく分からないけど、リューズさんの方なら適当な手合わせを確約すればどうにかなるかもしれない。

 あの人は正義の味方として僕をどうこうしたいというよりは単純に戦闘したいって感じの人だから」


「とはいえ、あくまでそれはあんたの受けた印象なのよね?」


「まぁね」


 そこを突かれると痛い。でも、仕方ないじゃないか。なんせ相手は聖王国で勇者達につきっきりで居たんだから。

 それに僕達も旅をしてたわけだし。接触する機会なんて聖王国がたまたまって感じで。


 セナは納得した様子で立ち上がるとトレイを持って動き始めた。

 「あんたが変なことに巻き込まれてなければいいわ」と捨て台詞を吐いて。


 僕はその姿を流し目で見ながら未だに消えぬ寮食に頑張って手を付けていくのであった。


****


 学院生活が始まってから数日後、ある程度学院生活が安定してきたところで僕はとある場所に向かっていた。

 そこは学院の資料室らしいが実質二人の教員のたまり場とも言える場所である。そして、その二人が―――


「おぉ、入ってよいぞ」


「失礼します」


 ドアをノックして入るやすぐに見える床に直座りしながら刀の手入れをしているリューズ()()と椅子に座り両端に山積みの本を並べながら本を読んでいるマイラ()()の二人の姿。

 そう、この二人の教員のたまり場がここである。なぜかよく入り浸っているらしい。


 僕の姿を見るとリューズ先生が途端に目を輝かせて刀の柄を持ち立ち上がる。


「おぉ、ようやく来たか! 待ちくたびれたぞ! 全くそういう焦らしプレイかとも思ったぞ! ま、そんなことよりも早速試合じゃ! ほれ行く―――ん!?」


 一人で勝手に話しを進めて行くリューズ先生の足元から床の材質と同じ木のツタが生えてきて彼女に絡みつき拘束していく。しっかりと口も塞いであるようだ。


「ごめんね、うちのリーダーがやかましい女で」


「ん! んんん~~~~~~!?(なっ! 誰がやかましい女だって!?)」


 年上の余裕というべきか。お姉さんか人妻かのようなどこか柔らかい雰囲気を醸し出していくマイラ先生。少なくともリューズ先生とは話がしやすそうだ。


「それで? あなたがここに来たのは何の用件かしら? もしかして授業で詰まったところでもあった?」


「今のところ友人のおかげで何とかなってます。というより、僕が来た理由はもうすでにわかってるんでしょう? 隣のリューズ先生をよく見ればわかります」


「そうね、盛りきったメス猿みたいよね」


 仮にも自分の仲間に容赦ない言葉責め。

 この人、あらあらみたいな顔してえげつないこと言うじゃん。

 あー、怒らせるとめちゃくちゃ怖いタイプだ。


 仲間からのメス猿呼ばわりはさすがにショックを受けたのかリューズ先生は大人しくなった。

 なんか戦闘以外でのパワーバランスを垣間見た気がする。


 僕はごほんと一つ咳払いすると本題に入った。


「まず一つ質問なんですが、先生方は僕の正体を知っているということでよろしいんですね?」


「えぇ、そうね。聖王国から宝玉を盗んだ仮面ちゃん。

 あの時の声は女の子だったから私は気づくのに時間がかかったけど、うちには優秀なメス犬がいるからね」


「......」


 もう止めてあげて。敵ながらそう思うほどにはリューズ先生のメンタルはもうボロボロよ!

 今なんてもう拘束なしでもその場に崩れ落ちてショック受けてるじゃん。

 「メス猿」と「メス犬」の言葉を交互に繰り返す人型の機械になっちゃってるから。


「......どうやって気づいたんですか?」


 そう聞くと答えてくれたのはメンタルボロボロのリューズ先生であった。


「それはお主の魔力の質じゃ」


「魔力の質?」


「この世界の人間は誰しもが魔力を有しておる。それは召喚されし者であるお主も例外ではない。

 そして、魔力の制御は非常に困難を極めるのじゃ。どれだけ抑え込もうとしても体外からは一定の魔力が溢れ出る。

 しかし、お主の場合はそれがあまりにも波が立たな過ぎたのじゃ」


 リューズ先生が言うには魔力は感情に反応する側面があるらしい。

 つまりは人なら必ず一定量纏っている魔力が感情に触れた時大きく動く。

 分かりやすいのが怒った時でそれこそギザギザとした荒ぶった波のようにして現れるらしい。


 だけど、僕はそれが無かった。体から出る魔力量があまりにも少なかったのもそうだが、感情に即してその魔力の波が立たなさ過ぎたようだ。一定して凪って感じで。


 そこまで行けば相当な練度で豪魔......はリューズ先生達の呼び方だったな。錬魔が高いレベルで備わってることを暗に表してしまっているらしいのだ。


 なるほどね、リューズ先生がかなりの実力者だと感じた直感はここが理由として当たるわけか。

 というか、そうなるとこの人は街でたまたまあった僕の魔力を聖王国でたまたま接触するまでずっと覚えていたということだよね。え、それってなんか......。


「きもぉ」


「あぁ! 今言ったな! このワシに対して言ってはならないこと! 一番言われたくなかった言葉を言いおったな!」


「残念ながら普通に考えてもキモイわよ。

 例えを変えれば、すれ違っただけの気に入った香水のニオイを数か月と覚えていて、ふと別の場所ですれ違った女性が同じ匂いをつけてて『あの時の香水の人ですよね!?』って言ってるようなものだもの。一種のストーカー行為よ」


「うぅ......ワシは......ワシはそんなつもりじゃ......」


 なんかちょっとリューズ先生が可哀そうになってきた。

 だって、イジメてる張本人(マイラ先生)がそれはそれは楽しそうな顔してるもの。

 見てて敵でありながらいたたまれない。


 そんなことを想いながら見ていると「とはいえ」とマイラ先生が矛先を僕に向けてきた。


「冒険者が聖王国からお宝を略奪した犯人を捕まえるっていうのなら別にストーカー行為に当たらないわよね?」


 その言葉に泣きべそかいてたリューズ先生がガバッと顔をあげて途端に元気になって言ってくる。


「そうじゃ! だから、ワシの行動は全く持って悪くない!

 たまたま気になった魔力の持ち主が犯罪を起こしたから探していた! うむ、これじゃ!

 そして、逃げ出そうとする犯人を捕まえようと止む終えず戦闘になる!

 よし、続きはこれで行こう―――ん!?」


 また一人で暴走しかけたリューズ先生がマイラ先生にツタで拘束される。

 なんかさっきよりも屈辱的な格好で。絶妙に目のやり場に困るな~。

 一先ず無視してリューズ先生に話しかけよう。


「わざわざ僕に脅しをかけてくるなんて何か用があるんですか?」


「あら、用があるのはそっちじゃない? だから、こうしてここまで来た。違う?」


 この人はこの人で隣の暴走機関車(リューズ先生)とは別の意味でやりづらいな。

 ミクモさんを相手にしてる気分。基本こっちの行動を見透かしているような、そんな気分にしてくる。


「はぁ......そうですね。僕は口止めに来ました。僕達の正体をばらさないこと。場合によってはリューズ先生のような手段を取ることもあります」


「!?」


「もう、これ以上この子を刺激するのはやめて。わかってるわ、あなたが只者ではないことぐらい。だから、取引しましょう」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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